第4話 help!!ヘェェェェェェェルプ!!!
もう少し書きたかったのですが、キリがいいのでここで。
タイトル変更しています。
旧 お金で買うスキルは成長型でした。
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新 お金で買うスキルは育成型でした。
最初に感じたのは異臭だった。
酸っぱいような鉄臭いような。
次に冷たさ。
その次はどろりとした感触。
目覚めの状態としてはかなり悪い。
折角気持ち良く寝ていたというのに。
(それになんか焦げ臭いような…)
家の近くで何か燃やしてでもいるのだろうか。
パチパチと火花が散っている音さえ聞こえてくる。
誰だよこんな朝っぱらから…こちとら休日なんだから、オフトゥンから出ずに2度寝をキメていたいんだよ。
「ん?休日だっけ??そもそもいつ寝たっ……て…ぎゃああああああ!!!!」
目を擦りながら上体を起こし周囲を確認しようとしたところ、目の前に血だらけの顔が!!?
てか重っ!!動けないんですけど!
「って!1人だけじゃないし!しかも燃えてる!燃えてるぅ!!」
よく見ると複数の人間が僕の上に積み重なっているようだ。
角度的に全員の顔は見えないが、見える範囲の顔は全て青白く生気を感じない。
多分、死んでいる。
「さ、さ、SAN値が…SAN値ががが。しかも火まで!あっち!アチャチャチャチャ!へ、へ、help!!ヘェェェェェェェルプ!!!誰か助けてぇぇぇ!!」
「嘘っ!?生きてる人いたの!!?どこ!!」
!!近くに人が!?しかも生きてる!
「こ、ここです!ここ!!とりあえず火を消してぇェェ!!!」
「そこね!わかったわ!『スプラッシュ』!」
良かった!これでなんとか助かっ…。
ドドドドドドドドドッ!
頭上から地鳴りのような音が聞こえた矢先、全身に大量の水が叩きつけられた。
「ゴボボボボボボボボボッ!」
み、水がっ!てか今度は溺れる!!また溺死するっっ!!!
火を消してくれたのはいいのだが、水の勢いが強く押し流される。
しかも死んでいた人達も流されているため水中でぶつかり、その度に息を吐き出してしまう。
(あ…これあかんやつや…。)
そう思ったのも束の間、僕はそのまま意識を手放した。
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あれからどれほど経ったのだろうか。
ふわふわと揺蕩う感覚。
先程までの息苦しさはもうない。
ただそこにあるのは、まるで凍えるような寒さだけ。
あぁ…死んだのか。(デジャヴ)
言葉にすると自然と納得出来た。
最後に見た血だらけの顔。
予想外のことでも起きたのだろう。
驚いたようなk……バチン!!
(痛いッ!?)
「死んじゃだめよ!目を覚まして!!!」バチン!!
「へぶっ!」
なんだ?何が起きてる!?
茶色い外装を纏った金髪美少女が僕の上に跨がり、泣きながら往復ビンタを繰り出していた。
端から見たら何かのプレイにも見えなくもないが、ビンタされてる僕からすればそれどころではない。
しかも泣きたいのはこっちだ。
というより、喋れないから胸ぐら掴んで頭を揺らさないで!
脳味噌シェイク出来ちゃうから!
「生きてっ…生きてるから!1回止めてぇ!」
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「本当にごめんなさい。」
そこには土下座をした少女がいた。
(この世界にも土下座ってあるんだなぁ。)
臨死体験をしたことにより、転生前の事を全て思いだした僕は彼女の用意してくれた焚き火にあたりながらどうでもいいことを考えていた。
ここは洞窟…だろうか。
外ほどではないが、壁自体が発光しているためか洞窟の中にしては明るい。
そして先ほどの人達の物だろうか、剣や弓が落ちている。
彼女は返事をしない僕を怒っているとでも思ったのか、頭を上げ説明し始めた。
「グール化したら大変だと思って焼却しようと思ったの。でもまさか、生きてる人がいるとは思わなくて…。本当にごめんなさい。」
「いや、僕の方こそ紛らわしくてごめん。それよりここはどこ?」
彼女は悲痛な面持ちでまた土下座をしようとするので慌てて止める。
このまま謝られ続けると僕も悪い気がしてくるため、話を逸らすことにした。
「?どこって首都近くのダンジョンよ?あなたも素材を集めるため、もしくはレベルアップのためにここに来たのでしょ?」
「あー…うん…まあ…。(しまったな…ここは正直に答えていいものか…。)」
地球で読んでいた小説では、転生したことを話すものと話さないものがあり、場合によっては事件に巻き込まれるパターンがある。
このフィリアではどうだか分からないが、まだ来たばかりだし下手な行動は慎んだ方がいいだろう。
「どうしたの?」
「いや、まあ、なんというか…何にも憶えてないんです。なんでここにいるのか、僕は誰なのか…。」
「嘘…。」
彼女には悪いがここは正直には答えないでおこう。
「もしかして、私のせい…?」
青紫色の瞳が涙で揺れる。
うぐっ…そんな目で見ないでくれ良心か痛む…。
「いやっ、さっき熱くて目が覚めた時から分からなかったんだ!だから君のせいじゃないと思う。」
「そうかな…。」
どうしよう、余計に凹ませてしまった。
彼女は、10代後半辺りだろう…この年代の子は繊細だからな…どう扱えばいいか悩む…。
すると何かに気付いたのかバッと顔を上げこちらを見つめる。
「そうだ!ステータスは?それなら名前を見れるし、もしかしたら思い出すかも!」
「ステータス?」
「あ、それもか…えっとステータスって念じると自分の名前と年齢、スキルが出てくるの。それでなにか思い出せないかなって思って。」
「ほー、そんなものが。えっとステータスと。」
そう念じると目の前にスキル選択時と同じ画面が表示された。
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タダシ・ミナミヤマ
年齢16
level1
○スキル
・言語共通化
・鑑定
・ストレージ
オリジナルスキル
・可能性の種
○加護
・失われし神の加護
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「どうかな?」
「うーん。なんというか…うん。」
「ダメそうね…。」
いや、ダメな訳じゃないんだけど…気になるのがいくつもあって。
とりあえず年齢は16かー。
一回りも若返ってる。
これに関しては、話してたしそこまで気になるものでもないんだけど一応ね。
レベルは1と…まあ、ある意味生まれたばかりだからね、仕方ないね。
あとはあの男娘神が言ってたスキル3つに、オリジナルスキルと加護だけど…これはどうなんだろうか?
OSは神引きしたの?爆死なの?名前だけ見ると結構良さそうにも見えるけど…それと失われし神ねぇ。
今は地球にいるからあながち間違ってもいないのか?
あ、そういや神様の名前聞いてなかったじゃん!
まあ、聞ける精神状態でもなかったけどさ。
「あの…。」
「え?あ、ごめん。ちょっと考え事してて…。」
「いいの。そうよね。記憶がないんだもの、私だったらどうしていいか分からなくて泣いちゃうかも。」
今にも泣き出しそうな顔になる彼女。
うん。この子に嘘をつくのはこれっきりにしよう。
それともし話しても大丈夫だと思えたら謝って正直に答えよう。
僕の良心が耐えられない。
「タダシ。」
「え?」
「僕の名前はタダシ。君は?」
「!わ、私はエレナ!」
「そうか、よろしくねエレナさん。」
「よろしく!タダシくん!」
これが僕とエレナの出会いだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます