1話 裏切り
ノリで3年振りに書いてます。
不定期更新なると思います。
僕は今、胡座をかきながら非常に頭を悩ませている。
それはなぜか。
「ねー…まだぁ?どれでもいいからさー早く選んでよぉ。暇なんだよぉ。早く遊びに行きたいんだよぉ~。」
全てはこの人物…いや、カワイイ見た目の神様のせいだ。
「ちょっと!何もかも僕のせいみたくナレーションしないでくれるかな!寧ろ君を助けてあげようとした慈愛溢れる神様じゃないか!あ、でもかわいいって思ってくれたのはありがと///もっと言葉に出して言って良いんだよ?」
あの…当たり前のように思考を読まないで貰えますか?
え?ダメ?聞こえちゃうものは仕方ない?…はい。
ごほん、訂正しよう。確かに元凶はこの僕っ子神様ではない。
「はい!かわいいかわいい僕かわいい♪ほらほら君も、ぷりーずりぴーとあふたーみー♪」
人のナレーション裏で喧しいがここから回想入りまーす!!(怒
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「見間違いじゃない……間違いなく当たってる!!!!うぉぉぉおぉぉぉぉ!?」
清々しいまでに晴れ渡った青空を背景に、休日の朝っぱらから自宅のワンルームマンションで野太い雄叫びを上げてしまったが、こればかりは仕方がないと思う。
高校卒業してから10年…今の職場に来てから3年程だろうか。
南山 禎。
彼女無しの28歳…あ、DTではないよ?本当だよ?
それはともかく…何のために毎日飽きもせず、朝から晩まで…はたまた晩から朝まで働かなければならないのかと幾度も思いながら過ごした去年の12月の明け方。
そろそろ夜勤も精神的に辛くなってきたなと愚痴をこぼしながら通知の入っていたLI○Eを開く。
「お?悠太から連絡とは珍しい。」
海原 悠太
そこには幼稚園から中学まで、ずっと一緒に育った幼馴染みの名前が1番上に表示されていた。
中学卒業後、別々の高校に進学したがお互いに地元からそんなに離れていない高校に行った為か新規オープンしたばかりのバイト先で再会。
元気でやれよ…とお互いに別れの挨拶を交わしてから1ヶ月も経たないうちのことである。
まあ、それからというものちょくちょく遊んだり就職してからも連絡取っていたのだが、僕の転職のごたごた以来連絡出来ていなかった為約3年振りだ。
「えーっと、なになに…。」
『よ、久しぶり!元気してるか?』
「おー久しぶりだなー。おはよう。なんとかなー。それよかどうした??」
何気ない会話でリプを送ったところ、通知が届いたのか既読が付く。
『おはよ。いやな、久々に地元に帰ったんだけど、そういや連絡してなかったなーって思ってさ。』
「あー確かに。別に忘れてたわけではないんだけどなんとなくな…。」
『なー。こうやって友達減ってくのも慣れたけどなー。』
「だなー。」
久しぶりの会話だが、そこは幼馴染み。
昔のように話が出来るってのはやっぱりいいね。
しかし要領を得ない会話になり始めてしまったな。
まあ、アラサー近くなるとこんな会話にもなってしまうんだよ。
ちかたないね。
『って違う違う!こんな話するためにLI○Eしたんじゃねーんだよ!そろそろ時期的に仕事納めだろ?忘年会しようぜ忘年会!』
「おっ!いいねー!昔みたく行くか!で、他には誰か誘ってあるん?」
『いや、他の連中は家族や彼女と過ごすとか、自分の会社の忘年会だとかで来れないんだと。だから最悪2人だけだな。』
「あー…まあ、そうだよな。なんだかんだ皆結婚したし、忙しいからな…。」
昔は俺は結婚なんかしねぇ!とかほざいてたくせに真っ先に結婚しやがったからなあいつとか…しかもデキ婚だとか!ちゃんと避妊しなさいよ!!
『じゃあ、OKってことでいいな?詳しいことはまた後日連絡するわ。』
「うーい。じゃーな。」
そして仕事納めが過ぎ当日。
他にメンバーは集まらず2人だけの忘年会が僕の自宅近くの店で始まった。
2人だけだと忘年会というよりも只の飲みだが、それも悪くはないだろう。
再会した後は時間が過ぎるのが早かった。
お互いに老けただの、最近の仕事のことやプライベートのこと、昔のことなど話す内容は尽きないからな。
結局朝まで飲み、語り尽くした。
そして翌朝。
駅前にはだいぶ人が増えて来ていた。
「あ"ー飲み過ぎた…気持ち悪っ。」
「俺も俺も。最近腹がヤバいってのにだいぶ食っちまったよ。」
「それは悠太が飲みながら食うからだろ。僕はそこまで酷くねーよ。」
「まじかよ…。」
僕の言葉がショックだったのか悠太は1人遠くを見つめる。
「あっ!なあ、あれ買おうぜあれ!」
「あれ?」
「あれだよあれ!宝くじ!今開いたみたいだぞ!」
話を変えたかったのかわからないが、とりあえず悠太の指さす方を見ると、確かに今からなのかシャッターを開けてるおばち…お姉さんが目に入った。
なんで言い直したかって?睨まれたんだよ…何でわかったんだ…こわっ。
「別に良いけどさー当たらないだろあれ。」
「そうだけど何かの縁とかあるだろ?まだ年末ジャンボ残ってるみたいだしほらほら。」
「おいっ押すなって!出ちゃうから!出ちゃうから!アーッ!!」
以下略。
そして年が明けて元旦。
明けましておめでとうございます。
皆様いかがお過ごしでしょうか?
いやぁ…世界ってこんなにも美しいものなのですね。
雲一つない青空のためか輝いて見えます。
僕はといえば1等前後賞合わせて7億円当選していることを確認した後、落ち着くために淹れたコーヒーを飲み一息ついたところです。
「ンー…インスタントだけど、老舗喫茶店でお爺ちゃんマスターが淹れてくれたお高いコーヒーのようだな。」
喫茶店なんてまず行かないので、なんとなーくそんな気がするだけだけど。
「そうだ!折角だし悠太誘ってまた飲みに行くか!!前回は割り勘だったし、今回は完全に奢りにしてやろう!」
そして急遽、仕事始め前に地元で会う約束をし楽しみにその日を終えた。
当日夕方、悠太は去年も地元に帰ってたらしいが僕はかなり久々の帰省だ。
所々変わっているところがあり、地元に帰って来た懐かしい感じとなんだか新しい所に来たという新鮮な感じがした。
「あの店潰れちゃったのか…。ショックだなー。」
「そりゃそうだろ。俺らが出てってから10年も経ってんだからよ。勝手なこと言うなって怒られるって。」
「そういや、昔聴いてた曲にそんな歌詞あったな。」
「あったあった。それ意識して言ったんだよ。」
前飲んだ時も思ったけどやっぱり悠太といると楽しいな。
昔一緒に過ごしたから思考が似てんのかもな。
そんなことを考えながら僕らが学生の頃からやっている小さな居酒屋で飲んだ。
田舎の小さな店なので流石に朝まで飲むことは出来ず、続きは悠太の実家で二次会となった。
「本当に奢りでいいのか?」
「いいんだって。前回ちょっと多めに出してくれてただろ?そのお返しだよお返し。いいことあったしな。」
「そうか。じゃあ、ごちでーす!」
「うむ。くるしゅうない。」
「なんだよそれ!」
バカな話をしつつコンビニで酒類とツマミを買い家に向かった。
そして深夜、家飲みだったこともあってかいつもよりも酔っぱらっていた僕はついポロッと口をこぼしてしまった。
「そういや、いいことあったって言ってたけど何だ?ギャンブルにでも勝ったか?」
「ん?違うよ。そもそもギャンブルやらねーって。」
「そうなん?」
「そうだよ。じゃなくて宝くじだよ宝くじ!年末に一緒に買ったべ。」
「まじで!あのジャンボ!?幾ら!?」
「お、おう。前後賞込みで7億…。」
「すげぇ…。なに?もう受け取ったん?」
「いや、まだ。てか、受け取るにも銀行行って暫くしてからじゃないと受け取れないんだって。だからまだ家に保管してる。」
「…。」
あ、言っちゃった。まあ、悠太だし大丈夫だろ。
それこそ家族付き合いしてるからな。
何も心配ないない。
「まじかー。俺は掠りもしなかったのになー。おめでとう!ほら、もっと飲め飲め!」
「もういつもより飲んでるよ!」
それから何時間経過しただろうか…いつの間にか寝ていたらしく、息苦しさで目を覚ました。
(くるしっ…今何時だ?…!?息が出来ない!水中!?いや悠太ん家で飲んでたのになんで…手足も縛られて…!?ここ風呂場か!)
視界に入っている浴槽の底を見ながら這い上がろうとするも、誰かに頭を押さえられているのか後ろを振り返ることも出来ずもがき苦しむ。
こんなことされる覚えはないし、もし泥棒とかなら悠太も危ないと考えなんとか暴れて抵抗を試みるも手足の拘束も相まって上手くいかない。
それからどれほど経っただろうか。
次第に息が続かなくなってきて抵抗することもままならなくなってきた。
浴槽の水もあまり揺れなくなり、気泡もなくなりよく見えるようになった。
(…ゴホッ!!……せ、せめて誰がやったのかだけは見て悠太に伝えないと…!!)
ダイイングメッセージなど残せるか分からないが、このまま殺されてなるものかと最後の力を振り絞り振り返る。
犯人ももう死んだか?と油断していたのか僕の抵抗に疲れ、そこまで力が入ってなかったのか簡単に振り向けた。
しかし今思えば、振り向かないでそのまま溺死していれば良かったとさえ思う。
(え…悠太?…なんで…?)
そこには今まで見たこともないくらい酷く歪んだ幼馴染みの顔があった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。