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静まり①

それからと言うもの自宅にいても成瀬くんの事が気になり落ち着かずソワソワする私を見かねた母と、

私の様子を見に来ていくれていた井上先生が成瀬くんのお見舞いに行けるよう病院に相談してくれた。



事情を把握していた医師たちからも有栖さんならと了承が降りた。



私がここに越してきてから何かとお世話になっている神社にお守りを頂こうと向かう。



鳥居をくぐり本殿で成瀬くんが早く意識を戻し元気になってくれるように手を合わせた。

お守りを頂こうと振り返ると手水舎にいた、スラリと背が高くダンディーなここの神主の光明さんが居た。



「こんにちは光明さん」



「咲桜ちゃん久しぶりだね?元気かい?」



光明さんはホウキを片手に近くまで来てくれて笑う



「はい!元気ですよ。」



「ん?元気?どうしたんだい!その手は!」



首を傾げじっと私の手をこれは何かと見つめていた光明さんが怪我だと分かったようで声を張り上げて手に持っていたホウキを落とした。


私は傷が手のひらと複数にあったので包帯の上から白い手袋をしていたのでパッと見た限りでは普通の時期外れの手袋に見える



「咲桜ちゃん!全然大丈夫じゃないじゃないか…」



「平気ですよ光明さん!

あの、それよりお守り頂けますか?」



「えぇ、ホントかい。えっとお守りかい?」



「はい、友人に渡そうと」



「そうかいそうかい。はい」



「ありがとうございます!」



「ようこそお参り下さいました」



光明さんとは別れを告げて



病院の近くのお花屋さんでオレンジと白のガーベラを基調とした小さい花束を作ってもらい病院へと向かった。



成瀬くんの病室は3階の廊下のちょうど真ん中あたりにある。


病室に向かおうと曲がり角を曲がった時ちょうど成瀬くんの病室から栗色のブロンドヘアの女性が出てきて、私とすれ違いざまに少し微笑みスタスタと廊下を曲がっていく女性



「あれ?私知り合いだったかな…?」



疑問に思ったものの見間違いだと思い私は成瀬くんの病室の前まで来た



「すごく緊張する…」



扉の前で深呼吸をしてコンコンコンとノックを3回する。



扉を開くと部屋はシーンとしていて人工呼吸器をつけ横になっている成瀬くん。

ベッドサイドモニターの音が部屋に響かせていた。



ベッドの横のパイプ椅子に腰掛けて顔を見る。

メガネを外している成瀬くんのことを初めて見た。


1度深く深呼吸をしてから、




「こんにちは。成瀬くん、こうやって話すの初めてだね。」



「あの時はすぐに助けてあげられなくてごめんなさい。」




眠っている成瀬くんの冷たく冷えた右手に傷だらけで痛む自分の右手を乗せた



そのまま動くことも話すことも無い静かに眠っている彼とピッピッと一定に鳴るベッドサイドモニターの心電図をただただ眺めていた。あれからどれくらい経っただろうか



「あ、そうだ。ねぇ成瀬くんオレンジと白のガーベラの花束持ってきたの。花瓶に飾っとくね」


そう言いパイプ椅子から立ち上がり成瀬くんの左側にある小さな白い棚の上の花瓶にガーベラの花束を飾る。


「後これ成瀬くんが早く元気になってくれるようにお守り。ここに着けとくね」



ベッドの頭上のネームプレートの横のパイプに付けた。



「じゃあ今日は帰るね。早く元気になってお話しようね」




ばいばいと小さく手を振り病室を出て静かな病院を後にした。




それから意識はまだ戻らなく3日間毎日神社にお参りをしてお見舞いに通った。あれから初めての日にあったブロンド髪の女性は1度も見かけることは無かった。



4日目の朝、いつもより早く成瀬くんのお見舞いに行こうと準備をしていた時に電話が鳴る。



こんな朝早くから誰だろうと電話を手に取ると電話先の相手は井上先生だった




「もしもし?有栖さん」



「はい、おはようございます井上先生。

朝早くからどうされたんですか?」



「実は成瀬くんが意識を戻したと先程病院から連絡がありました。なので早く有栖に伝えようと思い」



「先生本当ですか!良かった!!!」



まだご近所さんは寝ているところもあるであろう時間に大きな声を上げてしまった



「本当によかったですね有栖さん!ですがまだ本回復では無いのでこれから色々な検査をされるそうなので本日の面会は出来ないとの事でしたよ」



「そうですか、ありがとうございます!」



「ではまた何かあれば連絡します。」



「はい。お願いします。」



電話を切りリビングにいた母の元に走って行き伝えると



「よかったわね!!」



母も私と同じように大きな声で喜んだ





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