静まり
その後、エミが呼んでくれた救急車と共にやっとこの騒ぎに駆けつけた先生達が意識が朦朧としている成瀬くんと共に救急車で近くの市民病院へ。
私はというとエミが私の事も病院へ伝えてくれた様で遅れてきた救急車で成瀬くんと同じ市民病院へと運ばれた。
成瀬くんは呼吸も浅く、意識も朦朧として頭からの出血が多かったので緊急手術室へ。
私は頭を強く打ち付けていたのでMRI検査をしたが1度ぶつけただけで脳になんの以上もなく、ガラスで切った手の方が大事だった様で左手に5針と右手に2針縫ってもらった。
「本当に心配したよ…」
「やめてよアリス心臓に悪いって。」
心配して一緒救急車で来てくれたエミと凛。
「ホントにゴメン。まさか私がこんな大事になるとは思わなくって…でも脳に以上も無かったし!」
「何言ってんのよ、一日検査入院のくせに!」
「そうだよ!てか手合計7針も縫ってるのに…」
「うっ…痛い所つかないで…」
病室のベッドで横になっている私の隣でパイプ椅子に座り溜息をつきながら頭を抱える2人
「それにしても、成瀬くん大丈夫なのかな」
ボソッと小声で呟いた私の発言に対し2人の動きが止まった
「緊急手術って……」
凛がそう口を開いた瞬間病室の扉からコンコンとノックの音が響いた。ガラガラと音を立ててゆっくり開く
「あ、井上先生」
井上先生とは少し前にもエミ達が名前を出していた学校でモテモテの理科の先生だ。
「やぁ、有栖さん。先生から事情は聞いたよ、手は大丈夫かい?」
「ええ、今は麻酔が効いてるので痛みは無いです。麻酔がきれた時が怖いですけど」
苦笑いして両手を見ながら答えた。
「それは恐ろしい程痛いだろうね」
なんていたずらっ子のように口元を手で抑えてふふっと笑う先生。こりゃ生徒からモテますよ…
「そうだ、千葉さん白石さん申し訳ないんだが彼女から事情を聞かなくてはならなくてね。なので2人は1階の受付の所に居る吉岡先生の所に。そして先生に事情を説明して欲しいんだ。」
エミと凛は顔をお互い見合ってから
「「わかりました〜」」
とゆるい返事をしながらドアに手をかけてこちらを振り返る
「そうだったお母さんに連絡しといたから!これから向かうって。無理しないでよ!」
「ばいばい!アリス!お大事に!」
そう言って扉から2人は出ていった
………
騒がしかった1人用の病室も2人が出ていった途端シーンと機械音と廊下の話し声が微かに聞こえるだけ。
先に口を開いたのは井上先生だった。
「有栖さん。学校では黒木との騒ぎの時すぐに駆けつけられなくて申し訳なった。早く駆けつていれば…」
「いえ、そんな。」
何と返していいのか分からず口を閉じる
「あ、あの。それより成瀬くんは大丈夫なんですか!」
その途端先生は私から目線を落としてズボンをギュッと握り、ゆっくりと話し始めた
「彼はまだ手術室に入っている。
お医者さんからはまだ何とも言えないと。」
「………そう、ですか。」
私があの時戸惑わずにすぐに止めに入れば、エミと凛に先生達を呼びに行ってもらえばよかった。そんな後悔だけが頭の中をグルグル駆け巡る。
「こんな時に申し訳ないんだが、何があったか詳しく教えてくれないかい?」
私は大きな窓ガラスが割れる音、床のあちこちに散らばっている血痕、黒木を率いる男子生徒と女子生徒の話を順を追って説明した。
2時間ほど井上先生との話し合いが終わり、先生は私の母に事情を話しまた明日来ると伝えて学校へと戻って行った。
……………
「いや〜、病院のベッドって意外と寝心地良いんだね」
「バカなと言ってないで!忘れ物はない?」
次の朝検査の結果やはり異常はなく、荷物が持てなくと着替えもできないので検査を聞いた後私の世話を母がしてくれた
「うん。大丈夫。多分忘れのもはない」
「わかったわ。病院の先生に挨拶してくるからちょっと待ってて」
そう言って慌ただしく病室から出ていく母。
その後すぐにノックと共に井上先生の姿が。
「おはようございます。有栖さん結果はどうでした?」
心配そうな顔をしながら入ってきた井上先生はどこか顔色が悪い
「はい。やはり異常はなく大丈夫でした。」
「そうですか!あぁ、良かったです。」
パァっと表示が明るくなる先生。
余計目の下のクマが気になる。
「先生?」
「はい。どうしましたか有栖さん?」
「あの、先生顔色悪いですが体調大丈夫ですか?」
そう言った途端クールな見た目とは全く違い、目が泳ぎソワソワする井上先生
「実は恥ずかしい話だが、有栖さんと成瀬くんの事が心配で寝れなくてね…。でも大丈夫です。有栖さんの状態が大丈夫だったと聞けて安心しました。」
「すみません。ありがとうございます。」
「そうだ。成瀬くんですが、意識はまだ戻ってはいませんが手術も無事に終わったのでこれから意識も戻ってくるでしょうと先程担当の先生が仰っていました。」
「本当ですか!良かった!一刻も早く成瀬くんに意識が戻って欲しいですね」
それから母と共に家に戻った。
学校からはゆっくり手が治るまで安静にして欲しいと欠席扱いにせず休みを貰えたので手は痛いけどあの騒ぎの後学校に行くのは気まずかったから良かったとしみじみ思う。
良ければ評価等よろしくお願いします! by綺月蒼