怪奇現象と驚愕②
夏休みが入ってからは3日に1回は家に来るようになった。
私は凌から暴力を受けるようになりお金も毎回のように請求される様に。でもこの事を大好きな母には話せなかった。
私の母、そして凌のお母さんは昔からの大親友で休みが合えばいつもお買い物に行ったり、
凌を我が子のように、また凌のお母さんは私を我が子のように可愛がってくれていた。
最近ではそんな凌のお母さんと連絡が取れないと落ち込んでいたのを影から見ていたこともあり、
更に私の傷を疑問に思い始め心配そうに私の体を見て何か聞きたそうにする母にはこれ以上心配と迷惑はかけたくない気持ちと母達の関係を崩してはダメだとあの時の私は無理をしてまで絶対に話さなかった。
凌に取られていたお金は、母が読書が大好きな私のために読みたい本は読めるようにとお小遣いは5千円程毎月くれていた。
図書館に通うことの多かった私はそれをほとんど使わないことが多く、欲しい小説がでた時にでもと思い何年も貯めていたのでお金が減っていることは母にはバレてはいなかったのだ。
これもまた母の前では優しい凌くんを演じきり私の部屋に行けば無言で殴りそして蹴る。
声を出して抵抗しよう物なら私の大切な家族との思い出のものや友人から貰ったものを次々と壊してゆく。
彼からの暴力からは逃れられない日々が1年程続いたそんなある時彼から逃れる為、
“私は”大好きだった友人にもなにも告げることなく遠くのこの町まで家族と共に引っ越してきた。
なのに…何故?黒木凌は目の前に居るの…私はあなたから逃れられないの……
「………ス…………ね…………」
「ねぇ!アリス!!!」
「……え?なに?」
凛の大きな声で呼ばれ咄嗟に凛の顔を見上げた。
「どうしたのさっきからずっとあの集団みたまんま固まっちゃってさ」
「いや、ちょっと考え事…」
そう返した後凛からの返事はなかった
なにかを察したのか。
それとも触れない方がいいと思った結果の無言だったのだろうか。
そんな私と凛のやり取りを不思議そうに見ていたエミは私達から目線を外し彼らの方を向いた。
「でもさすがにやり過ぎじゃない?
先生たちも来ないし…」
今も成瀬くんを怒鳴りつけ首襟を持ち壁に頭を叩きつける黒木凌とその友人であろう男子生徒と女子生徒。
黒木凌が声を荒らげて成瀬くんを首襟を持ちドアに再度叩きつけた
「おい!成瀬お前が犯人なんだろ!なんとか言えよ!」
「………俺じゃない。」
「は?嘘つくなよ!お前が俺の女に手出したんたまろうが!」
「凌、私ホントに成瀬に襲われたの!嫌だって言ってるのに無理やり図書室で…」
「おい!いい加減認めろよ!」
黒木凌を囲む男子生徒も成瀬に怒鳴る
「どうして俺が君の彼女を奪う必要があるの?何を目的に彼女を?」
「は?ふざけんなよ。そんなのお前が襲いたかったからだろ!」
その瞬間黒木が大きく腕を振り上げ成瀬くんを叩きつけた
見ていられなかった。
昔の私を見ているようであの恐怖を思い出す。
でも黒木凌から彼を救い出そうとするの物は誰一人と居ない。教師が来て喧嘩を止めれば余計腹が立ち成瀬くんに黒木凌達は当たるようになる。昔の私にしたように。
笑ってみていたり動画を回したり恐怖で泣いている子もちらほら居る。話を聞いていれば黒木凌の彼女に手を出した、出していないで揉めているようで、冷静に話している成瀬くんに比黒木凌は感情をぶつけるだけでこれから話し続けても彼が怪我をするだけで何の解決にもならない。
「私が止めてくる」
そう自分で言っておきながら足は小刻みにゆれて顔から血の気が引いていくのがわかる。
「やめなよアリス!あんたが止める必要ないでしょ!」
「そうだよ!怪我でもしたらどうするの?先生来るの待ってようよ」
必死に私の両腕を掴み説得をする2人
「ごめん離して。」
2人はゆっくりと私の腕から手を退けた
「先生来ないし、暴力を振るわれて見世物のようにされてる彼を見てられない。」
人混みを通り教室から出て彼らに段々と近づいて行くと少しの血の臭いだが敏感な私は顔をムッとした
そのまま彼らに近づき
「いい加減やめなよ」
私の一言で周りにいた生徒も成瀬くんを囲んでいた生徒も一斉に私を見て静まり返った
「は?お前関係ねぇだろ」
「私は関係ないけれど、彼に血を出るまでをこんなに怪我さしてまでまだ問い詰めなければいけないの?」
「こいつが俺の女に手出したのが問題だろ。大体元から嫌いだったんだよ。陰キャで暗いくせに俺らを見下したようにしやがってその結果これだ!許せるわけねーだろ!」
成瀬くんの首襟を掴んだまま私と彼を交互に見ながら話をしていた。段々と自分の気持ちを口に出す事によって更に怒りが収まらなくなった黒木凌は成瀬くんを私へ突き飛ばしてきた
「うわ…!」
「きゃっ……!」
私達は冷たいガラスの破片が散らばった廊下に突き飛ばされ成瀬くんは私を庇おうとしてにかなりの勢いで頭をぶつけた。私は庇ってくれたおかげで尻もちをつき腰をぶつけただけで済んだ。床に手をついた拍子に私も彼も手をガラスで切り血が垂れていた
「「アリス!」」
教室から見ていた凛とエミは人混みにぶつかりながら駆け寄って来てくれた
「ごめん…。それより成瀬くん!」
頭をぶつけ、うずくまったまま一向に動く気配のない成瀬くんに私は慌てて四つん這いで駆け寄ると何度もドアで殴られ出来た傷が床でぶつけた拍子に傷口が開いた様で顔に血が垂れていた。
呼吸も浅い。
「エミ!救急車読んで!急いで!」
周りに居た生徒達も今更やばいと気づいたのかその場から逃げ出すものも余計面白がり動画を回し続けるものも沢山いた。
成瀬くんの手首に右手の指を置き左手に着けている腕時計で脈をはかる。段々と出血量も増え脈が弱る彼。救急車はまだかと外を見渡せる窓を様子を見ようと目線をあげると先程までいた黒木達は既に居なくなっていた。