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別働隊との合流





先を行くアーブラハムとカールに続いて廊下を進む中で、今尚花びらに弄ばれる兵士達の姿が複数見受けられた。


……あの光って、こんなに長いこと出てたっけ?


先程まで地下を進んだりしていたせいか、いささか時間の感覚が鈍くなっているような気がする。……いや、それにしたって長い、ような。


「ああ、カール殿!」

「お助けください、人手が足りんのです!」


曲がり角で花びらと格闘している(傍目には遊んでいるように見える)兵士が、カールの姿を認めるなり情けない声を上げた。


「すまない。私は此度の騒動の件で王に取り合うつもりなのだ。」


言いつつ兵士の視線から私達の姿を隠すように、カールとアーブラハムが立ち止まった。


「左様でしたか!」

「し、しかし今王は……」

「!王がどうかしたのか」


やけに歯切れの悪い兵士へカールが問えば、問われた兵士達が気まずそうに顔を見合わせた。


「隣国の姫様御一行を王の間に迎え入れて、お楽しみの真っ最中かと」

「人払いも告げられたしなあ、」

「我々はこの光の原因の元へ行けと命じられたのですが、何分、上手く、進めず!」


言いながら自分達を囲んでいる花びらを振り払うが、花びらはそれをくるりくるりと容易に躱して再び兵士達を囲んでしまう。


「この、有様でして。無理に進もうとすればする程、視界を遮られてしまうのです」


がくりと項垂れた兵士を見ながら、私はふと始めに乗った小舟の動きを思い出していた。確かあの舟も私が降りようとすればする程激しく揺れてたっけ。……なんでだろう?


「……なるほどな。王であれば何かわかるかも知れん。やはり私は王の元へ行ってこよう。お前達はもう少し頑張ってくれ」


敢えて深刻そうな声を出したカールが続け様にそう言えば、兵士達は何度も頷いて送り出した。


「……ん?カール殿の後ろに居る方々は誰、うおお!?」


静々と通り過ぎる私達を見ながら、ふと訝しんだ様子で何かを告げようとした兵士が途端に勢いを増した花びらに捕らえられた。


……やっぱり、あの動きと似てるなあ。


そうしみじみ思いつつ、チャンスとばかりに足早に歩みを進める一行へ慌てて続く。


やがて、豪奢な彫りの施された大きな扉へたどり着いた。人払いをされているという話通り、辺りには人気がない。


カールが扉を叩こうとしたところで、扉の奥からドスの効いた男性の叫び声が上がった。


ーーそれはまるで、断末魔のような。


私達はハッと顔を見合わせて、すぐさま大きな扉を押し開けた。

重たい木の音が響き渡って、絨毯の敷かれた中央でこちらを見る複数の目と目が合う。


「おお、おお、カール……余を、助け」


そこには杖の先が剣になったような武器を絨毯に突き立てて膝をつく老爺と、落ち着いた構えで老爺に剣を突き付けるアルヴェツィオの姿があった。


「……!」


少し離れた玉座近くには胸を抑えたジャンと、それを抱き留めるエミリアの姿もある。更にその二人を庇うようにして目を開けたフィルも立っていた。……一体、何が起きたと言うんだろう。


「ろ……うぐ、」

「残念であったな、ヴァルデマールよ。もう助けなどは無い」


身動いだヴァルデマールへ一層剣を突き付けて、アルヴェツィオが冷たい視線を送る。

掠れた声で呼びかけられたカールが静かに扉を閉めて、膝を付くヴァルデマールの元へ歩み出した。


「はは。どう、だかな。おい、カール何をしている!早く……」


沈黙したカールがヴァルデマールを見下ろして、すっと瞼を持ち上げた。その金色の瞳で、静かにヴァルデマールを見る。


「!お、おおお前、その目は……」

「…………」

「ば、馬鹿な。私を謀っていたというのか!?」


わなわなと震える手が杖を取り落として、突き付けられた剣にも構わずヴァルデマールが力無く項垂れる。そうして低く、呻くような声が響く中でカールが至って冷静に口を開いた。


「お前に聞きたいことがある。……私の父と母をどこへやった、ヴァルデマール」

「……なに?」


カールの言葉に剣を握るアルヴェツィオの腕が揺れて、その顔が怪訝に歪められた。


「アルヴェツィオ王よ、……この城に捕らえられている筈の精霊達が居ないのです」

「……どういうことだ?」


静かにそう述べたカールを見て、アルヴェツィオがヴァルデマールを睨む。


「ーーふ、」


項垂れたヴァルデマールの肩が震えて、次第に低く響くような笑い声が上がった。


「ふはははは!」

「……何が可笑しい」

「カールよ。お前が言うのは一丁前に子を想う心なぞを持った家畜のことであろう?」

「ーー!」

「奴等ならば今頃海の上だ!穢れた血を継ぐ同胞同士で殺し合うが良いわ!!」

「なんだと、」


ヴァルデマールが狂ったように笑いながら宣言をすると、同時に玉座近くの扉が勢いよく開かれた。


「ーー来たな、アドリエンヌ」



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