表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編、静かめ

君に宛てる最後の手紙

作者: すもも

これは君にあてる最後の手紙です

君と出会ったのはとても寒い日のことですね。大雪に見舞われ電車が全面運行禁止になり何人もが立ち往生をしてしまった、そのなかにわたしと君が居た。手を擦り合わせてどうしたものかと困っているわたしに君は「東京もこんな大雪が降るんですね」と話しかけてくれたね、わたしはその時どう返事をしたのか覚えていないけれど、君がとても綺麗な人だと思ったことは覚えている。


君は大学の進学を機に東京へ出てきたばかりの初々しい女の子だった。一方わたしは荒波に揉まれ、疲弊したただのサラリーマン。未来に向けてきらきらしている君はとても眩しかった。

それから何度も会ったね。公園から喫茶店、初めて君の家に行った時には緊張でどうにかなりそうだったよ。手土産に持って行ったスイーツを長い行列に並んで君のために買ったことも今ではいい思い出だ。


毎日、今君は何をしているんだろうと考えては浮かれている私が居た。君のおかげでどん底だった人生が変わったんだ。そして、どん底に落とすのも君だった。君が同級生の男の子と歩いているのを見たときにどれだけ私がショックだったか。君は友達だよ!と言った言葉をわたしは君を信じることにしたんだ。でも、それは嘘だったんだと気付いた、今もこの手紙を一緒に読んでいるんだろう。出会った当初はあんなにも綺麗だったのに、その男が隣に現れてから君は変わってしまった。

でもわたしは分かっている、君がわたしを裏切るようなことをする女の子じゃないって。だって私達はあんなにもお互いを思い合っていたんだから。


君が風邪をひいた時に差し入れたおかゆを手づかずに棄てたのだって、食欲がなかったからだってちゃんと分かっているし、何度も電話をしても出てくれないのも恥ずかしがり屋だからって分かってる。わたしも自身シャイだから電話にでてもらっても無言が続いたけれど言いたいことはお互い分かっていたよ。

きっとその男に強要されているんだよね。大丈夫わたしがその男から君を守ってあげる。


これは君に送る最後の手紙になる、これからわたしは君のために刑務所に入ることになるだろう。それでもわたしは君を愛している。刑務所から出たら君を迎えに行くよ。


2人が手紙を読み終えたと同時にインターフォンの音が部屋に響いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 最後、ゾックっとしました!。 短い話ですが、うまいですねー。 思い込みの激しいストーカーですか……。 いや、初めの頃は愛があったのでしょう、が心の行き違いか、男の呪縛から逃げたのか……。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ