2話 異世界へ
「トラックに引かれて死んだのは⋯⋯僕⋯⋯」
黒い着物に身を包む少女シャルによって告げられた自身の死
小学生がごっこ遊びの為に新聞を偽装
大人⋯⋯親が手伝ったのか?
この部屋と言い、財閥クラスの金持ちの可能性は高い
アニメでありそうな非現実
はぁ⋯⋯めんどくさっ
「そう、ですか⋯⋯」
受け止めがたい現実を真に受けた高校生
名俳優顔負けの演技では?
「そろそろ話を戻すぞ、小僧」
「小僧ではなく三田です」
「はぁ、妾は人間の名など覚える気はない」
「⋯⋯」
設定面倒くさ
「早速だが時間が無いのでな
小僧、お主行く異世界について話そう」
はいはいと帰る為に付き合う僕
話を一応聞いてやったが⋯⋯長かったので要所要所を少し整理する
〜シャルの異世界についての話〜
・異世界には今7種の種族と、モンスターが生息している
・異世界では、1日は24時間、1週間は6日間、1ヶ月は60日間、1年が360日間とのことだ、元の世界と同様に閏年的なものがある(6年に1度半月分増える)
・異世界は、魔法というものがある
・貨幣は小銅貨、大銅貨、銀貨、金貨、白金貨、王金貨の六種類
とこの4つだろうか
補足としては、元の世界の物を大量に創ることを禁止されたこと、
(世界のバランス、などの色々な問題が起こるから)神様は何か特別なことがない限り世界に干渉することは出来ない事の2つ
〜
とまぁ、こんなものだろう
これだけ覚えていれば何か突っ込まれてもある程度応えられるな
「さてと、ではお主⋯⋯脱げ」
「へ?」
「だから、脱げ」
神様(設定の小学生)の口から飛び出した言葉に驚き思わず変な声が出てしまった
僕は不審がられないように回避するために続ける
「なっ、なんで!?」
「それはじゃな、今から行く世界にはそのようなものがないからじゃ」
「え゛?服ないの!?」
「違う!服はある!」
「なら脱ぐ必要はないのでは?」
「まっったく単調な思考回路はこれだから困る
ファスナーや、その生地が異世界にはない!」
僕は神(小学生)に身ぐるみ剥がされた
さすがにパンツだけは見逃された
まぁ、そこまでしたらごっこ遊びにしてもアウトだしな
神様(小学生)はパンイチ姿の僕を注視し、はっとなると顔を袖で隠し恥ずかしげに──
「かわいい妾に、発情してしまったのか?」
と言った
どこぞで見ているであろう、こいつの親もしくは世話係に勘違いされるのはごめんだし何より癪なので喉元まででかかった言葉を飲み込み、作った笑顔で返す
「シャルだっけ?僕はロリコンではな──」
「お主が毎晩見ていたネットとかいうものでは、妾のようなか弱き少女が白色に染められておったのぅ」
こいつ⋯⋯俺の履歴まで⋯⋯ストーカーかよ
ピクピク動く口の端を押さえ込み困ったような顔をする
「どうして、それを⋯⋯」
くそ、コイツどこまで知ってんだ?
てか、コイツが知ってるって事は親や世話係⋯⋯その他大人にも知られているかもしれない⋯⋯
チッ⋯⋯
いや、よく考えてみればそれならなぜ娘、令嬢と部屋に2人っきりする?
コイツの身を危険にさらすようなことを⋯⋯
って事は──
黙って頭を回す僕に、耳の痛い言葉が聞こえてきた
「あぁ、もしかしてお主、違うということはおなごの方ではなくあのジャンルが好きなのか?
そうかそうか、確か──」
「それ以上は勘弁してください」
続きを言おうとする少女の前で、床にパンイチでひれ伏す男
シャルは、その光景を嬉しそう眺める
屈辱的ではあるが、仕方がない
土下座の一つや二つ、プライドの一つや二つ安いものだ
数秒後──、満足したのか
シャルは、僕の目の前に黒色のコート、布の服、ズボンを置いき偉そうに言った
「一応言っておくが、妾はお主よりも年上で、神様なのだ、もう少し敬意を払っても良いのだぞ」
「──(ただの偉そう小学生だろが)」
「確かタイトルは鬼──」
「すみませんでした」
僕は目の前の黒髪、Sロリに頭が上がらなかった
〜
村人の服とでも命名されていそうな布の服に、黒色のフード付きのコートを着る
コートと、村人の服は相性が悪そうだ⋯⋯
シャルは僕が着替えているあいだ、奪ったスマホをいじっていた
ここまで知っておいて、そこから何を得ようとしているのだろうか⋯⋯
というか得られる物があるのか?
疑問ではあるが好きにさせておく
スマホなんて僕にはもう、必要無いのだから
自分に言い聞かせ、奥歯をギリッと鳴らす
僕が着替え終わると、かわいそうな目で僕を見て、スマホを投げ渡す
センスが悪いとでも言いたげだ
ため息と一緒に服への未練を吐き捨て、スマホを開く
アプリは、カメラ、写真、設定、電話、メッセージ、マップの六つ
ほかのゲームアプリなどは消されていた
電話帳には元々入っていた連絡先は全て消され、新たにシャルと書かれたものがあった
「神様、スマホは持っていっていいんですか?」
説明された内容的に、スマホはアウトではないのかという率直な疑問
ここに来て設定崩壊
これはチャンスだ
どこまで行けるか次第で変わる
「いいぞ、好きに使え、異世界でもネットに繋がるし、充電する場合は魔力を⋯⋯、まぁお主が持っておけば充電が貯まると思っておればよい」
「わかった、異世界から元の世界へは通信できないんだろ」
俺強系異世界転生でのありきたりな設定
「その通りじゃ、あと、マップというアプリも使えるが通った道、手に入れた地図をカメラで撮るという行為をしないと表示されなくしておいた、どうじゃ、嬉しいじゃろ」
「⋯⋯」
「なんじゃ、嬉しくて言葉も出ないか」
嬉しそうに言うシャル、苛立ちを通り越し無へと到達した僕にはもうどうでもよかった
〜
「準備が出来たな、鬼畜野郎」
「そのあだ名は辞めてくれません」
悲しげに笑う小学生
なぜか、胸が締め付けられる⋯⋯
そして、より一層悲しげな顔で名を読んできた
「シュウ⋯⋯」
「ん?」
「いや、そのあれだ
第2の人生は楽しんでくるのじゃぞ」
「おう!」
既視感のある笑みに僕は、素直に返事をした
僕は紫色に光る魔法陣の中心に立ち、紫色の光に包まれる
すごい技術だ
今はもう、ここまで進んでいるのか
僕はこの状況に感心しつつ異世界へと旅立った
最後に目にした少女の首にぶらさがっている、透明のガラス玉に少し懐かしさを感じながら⋯⋯
読んでいただきありがとうございます
次からは異世界での新しい生活が始まります
新しいことをするのって、楽しみではありますが少し不安になりますよね・・・
ではでは、この辺で、