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1話 プロローグ


──人は皆、常に服を着ている生き物だ


何時いかなる時も嘘で彩られた服を好み、無意識に着て生きる


──人は皆、自分勝手な生き物だ


人は他者のためと言葉を並べておきながら結局は自身の為にと動く


──人は⋯⋯人は⋯⋯


⋯⋯


なぁ、人は何故生まれてくる?


⋯⋯


愛する為、愛される為、死ぬ為⋯⋯、色々なやつが色々な解を出す

どうもしっくり来ない解を⋯⋯

俺は知りたい、俺が産まれた意味を⋯⋯

さぁ、答えろ、俺に与えた役割とやらがあるのなら答えてみやがれ!



窪んだ地面の中心で、膝をつき虚空を睨見つける一つの影


「ふざけるな!

てめぇの好き勝手して⋯⋯言い訳がねぇだろ!」


男はかすれた声で力いっぱい叫んだ

だがその声は、響き広がることなく虚空へ消えてゆく

地形は歪み、表面がひび割れた地面

消滅してしまった生き物達と土地

その上で男の体を徐々に紫色のガラスのようなものが覆う

右の拳を地面に叩きつけた


「──っ」


痛みすら感じない──

既にガラスで覆われた右拳にはもう痛覚すら⋯⋯なかった

かわいた風が吹く

視界の端で寂しげに光るペンダント

男は左手で優しく握り


「すまない⋯⋯」


小さな小さな言葉を、1つ零した

透明な雫が頬をつたい、左手の薬指にはめた指輪に落ちると、雫はそのまま指輪を伝い⋯⋯地面へと落ちていった

渇き切った地面は全てを受け入れ雫を飲み干す


「すまん、みんな⋯⋯」


紫色のガラスは嘲笑うかのごとく、男の体を覆って行く

抗うことすらやめ男は何かを伝えようと悲しげな笑顔で呟く

しかし、ガラスは無情にも男が言葉を発する前に全身を覆った

この日、世界は終焉を迎え、新たに始動し始めた



目が覚めると、殺風景な場所にぽつんと座っていた


「ここは⋯⋯」


キョロキョロと辺りを見渡し自分がいる場所を確認する

何も無い真っ暗な空間──

否、真っ黒な空間──


「えぇ⋯⋯誘拐?男の僕を?そんなはずは⋯⋯」


──記憶を辿る

いつものように制服に着替え、家を出て信号で捕まって──


「⋯⋯」


そこまでしか思い出せない


「おやおや、これはまた随分と若いのが来たのぅ」


後方から突然、年寄り臭い口調の幼げな声

僕は声のするほうを向く

視線の先には、黒い着物を着た黒髪の少女が椅子に座りこちらを見ていた


「君はだ──」


「君は誰だ、君は何者だなどと、つまらぬ質問はするなよ小僧」


明らかに自分より歳下の女の子に小僧呼ばわり⋯⋯

椅子に座り、足を組み、僕を見下す少女は面倒くさそうに話し始めた


「はぁ⋯⋯、全くこれだから下界の人間どもは⋯⋯」


「下界⋯⋯?」


「はぁ⋯⋯妾が、説明してやるから終わるまで黙って聞いておれ、よいな!」


肯定以外は受け付けないとを少女の言葉に今は頷くしか無かった

しかし⋯⋯今の小学生はどうなっているのやら、こんな平日の朝っぱらにごっこ遊びなんて⋯⋯


「まず、妾は上級神、名はシャル

妾は貴様のいた世界ともう1つ別の世界の監視をしておる神

今回貴様はそのもうひとつの世界⋯⋯、異世界へと行ってもらう」


ピクリと眉が動き、こころを沈める

そんなわけが無いと⋯⋯


「すみません⋯⋯あの⋯⋯学校あるので返して貰えませんか?」


突然の展開を理解出来ず、いや理解しようとせず早く授業を受けるため目と頭を回す

返答する僕を見て少女はため息をつくと、面倒くさそうに立ち上がると僕の顔に1枚の紙を、押し付けた

紙を受け取り読む

『トラックから、小学生をかばい高校生死亡!?』

デカデカと書かれた見出し⋯⋯

恐らく新聞に掲載されていた小さな記事を拡大したのだろう

文字のバランスが物語っている⋯⋯

小さな記事に一体何が?

そんなことを思いつつ目を通す

なんでも、僕の通学路の途中にある信号で小学生の女の子が信号無視をし、飛び出した所を近くにいた男子高校生がかばい死んだとの事

小学生の方は足や腕を擦りむいただけ⋯⋯

トラックの運転手には怪我ひとつなかったとか

原因は信号無視であるが、運転手の方もながらスマホをしていたらしくそれも原因のひとつとして見られているみたいだ

ながらスマホのせいで信号が変わったことにも、小学生や高校生にも、気づかずブレーキを踏むのが遅かったと書かれている

亡くなった高校生は僕と同じ学校でしかも同い歳らしい

クラスメイトだろうか⋯⋯


「これが何?」


僕は自称神に、新聞を見せた糸を聞く

すると、自称神は呆れ新聞のある場所を、亡くなった高校生の名前の部分を指さし言った


この事故で死んだ者の名は三田 柊


お前だ、と──

読んで下さりありがとうございました

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