獣人の少女
草木をかき分け現れたのは、獣人の少女だった。少女はソーマの前に倒れこむ。
?
いきなりのことにソーマの頭に疑問符が浮かぶ。
「どーしたんだ?」
ソーマが少女を介抱しようとしたその時。
「こんな所にいたのか」
そこには獣人の少女のパーティーの四人の男たちがいた。
「ん?なんだお前たちは?」
リーダー格の男がソーマたちを見て問いただす。
「この子に助けを求められたんでね」
ソーマは答えた。
「悪な坊主、そいつは俺のパーティーのメンバーなんだ。迷子になっちまったようでな。渡してもらえるかい」
「おじさんたちのメンバーなんだ。だったら一緒にいたほうが安心だね」
ソーマが少女を男たちに引き渡す。少女の顔が絶望で染まった。
「ありがとう坊主。助かったよ」
そういって踵を返した。
「馬鹿な野郎で助かりましたね」
部下の男が言う。
「リーダー、あの男と一緒にいた女、なかなかの上玉でしたぜ」
「ああ、分かってる、あいつらが油断したところで襲うぞ」
リーダーはこれからしようとすることを想像してニヤニヤと気色の悪い笑みを浮かべた。そして今度は怒りの表情を獣人の少女に向ける。
「よくも逃げ出しやがったな。お前は精一杯かわいがってやるよ」
獣人の少女が恐怖で目をつむったその時であった。
どさっ!!
急に何かの倒れる音がした。
リーダーの男はそちらを確認する。すると、部下の男の一人が倒れていた。
「なんだ?これは」
そして周りを警戒する。そこにはスライムがいた。
「なんだこのスライム?」
部下の男が近づく。次の瞬間、スライムが何かの液体を放出した。部下の男に直撃する
「あっ…熱いぃぃぃぃぃぃ」
その液体は強力な酸だった。もろに喰らった男は悶えながら動かなくなった。
「くそ!やっちまえ」
もう一人の部下の男に命令する。
男はスライムに向かって剣を振り下ろす。
捉えた
スライムは真っ二つになった。
部下の男が安堵する。
真っ二つになったスライムはそのままの勢いで飛んでいき…
部下の顔を覆った。
「何!?」
リーダーの男が驚きの表情を見せる。スライムが切られてなお動くなど聞いたことがない。それどころかあのスライムは何事もなかったかのように一つに戻っていた。
そのまま呼吸を封じられた部下の男の意識は遠のいた。
残りはリーダーの男のみとなった。
「くそっ!スライムごときに!許さんぞ!」
そういってスライムに対峙した時である。
級に襲い来る眠気。そのまま男は意識を失った。
気が付くと男は何もない真っ暗な空間にいた。そして謎の浮遊感に襲われる。落ちているのかも進んでいるのかもわからない真っ暗な空間。ただ意識だけははっきりしているのだ。その状況に耐えられるはずもない。男は精神を崩壊させた。
「闇魔法の一種かな」
ソーマは獣人の少女に説明する。どうやら、リーダーの男が、いきなり倒れたように見えたようだ。今頃悪夢にうなされているだろう。と付け加える。
「すぐに助けられなくてごめん。君のおびえ方から、こいつらが原因なのは分かったけど、なんせ数が多かったからね。不意打ちするにはこれしかなかったんだ」
ソーマは腰を抜かした少女を立ち上がらせながら言う。
少女は状況をなかなか飲み込めず、ぼーっとしていたが、はっと我に返った。
「あっ、あのっ!ありがとうございます!」
少女は礼を述べた。
「大丈夫。気にしないで」
ソーマが返す。
「何かお礼をさせてください!何でもします!」
「気持ちは嬉しいんだけど、今は一刻も早く治療所に連れて行かなければならないから」
そういってソーマはアリサのほうに目をやる。
「マンドラゴラの呪いですか?」
「ああ、このパーティーにはヒーラーがいないから」
獣人の少女がグイっと近づいてきた。
「それなら、私にお任せください!!」
「よかったー!!あの男たちに連れてかれるときの君の表情を見てめちゃくちゃ心配だったんだよー」
元気を取り戻したアリサが獣人の少女に抱き着く
「くっくるしいです…」
獣人の少女はヒーラーだった。解呪にもたけており、アリサの呪いを一瞬で解いてしまった。
「本当にありがとう!君の名前は?あの男たちは何なの?」
アリサが立て続けに質問する。
「えーっと、私の名前はキサラギ・カグラって言います。それで…」
カグラの話をまとめるとこうである。獣人は人間からはあまりよく思われていないため、カグラは普段、個人行動をしているようだ。今回は昇格のために討伐が必要だったため即席のパーティー募集に応募した。それがあの男たちのパーティーである。しかし、男たちはカグラを性処理のためとしか思っておらず、襲われそうになった。その先にソーマたちがいたのである。
「怖かったね」
アリサがそういってカグラを抱きしめた。カグラは安心したのか泣き出してしまう。
「ねえ、カグラ、これからどうするの?」
カグラが落ち着いたところでアリサが聞いた。
「もう冒険者はやめようと思います。一人じゃ何もできないし、パーティーを組むとこんな目に合うし…」
「パーティーを組んでもこんな目に合わなければいいのよね。じゃあさ、私たちのパーティーに入らない?」
「え?」
「そんな悲しい理由で冒険者辞めちゃうのは悔しいでしょ?」
「で…でも、獣人なんかがパーティーに居たら変な目で見られますよ」
「大丈夫!そんな奴らやっつけちゃえばいいんだから!ねソーマ」
アリサはソーマに同意を求めた。
「ああ、それに今回の件もあって丁度ヒーラーがいてくれたらいいなと思ってたんだ。カグラのような優秀なヒーラーが仲間になってくれたら助かるよ」
カグラが二人の顔を見る。
「それに」
ソーマが付け加える。
「俺はその耳いいと思うぞ」
一瞬何のことかカグラは理解できなかったが理解すると、カグラが顔を赤くなっていく。
「そそそそんなことありませんよ!お目汚しになるだけです。でもこんな私でも仲間になってよろしいですか」
カグラが俯く。
アリサとソーマは顔を見合わせ、そしてカグラの前に手を出した
「「カグラ、よろしく」」
こうして二人+一匹のパーティーに新たな仲間が加わったのだ。
アリサ 「ケモミミもアリね」メモメモ
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