卒業試験
「…お…!…おい、ソーマってば!」
「ああ、悪いレオン考え事してて」
「確かに今日は大事な卒業試験だがそこまで緊張することないんじゃないか?」
「何をおっしゃる。レオン君、今日の卒業試験の結果次第で今後のキャリアが決まるんだぞ」
「お前みたいな上位層のやつは気にするかもしれないけど、俺みたいな中の下くらいの成績のやつはキャリアとか気にならないんだよな~」
「レオンはどんな使い魔を召喚したいんだ?」
「そりゃもちろん…巨乳のサキュバスちゃんにきまってんだるぉぉぉぉぉ」
「お…おう」
ここはシャングリラ魔法学園。魔法学校としては世界でトップの実績と歴史を持つ。
もちろんこの学園に通う生徒も、世界中から集められた秀才たちである。
今日この学園の3年生は卒業試験がある。
今までの魔法教育の総まとめ、魔法使いとしての自身のサポーター、使い魔の召喚である。
召喚される使い魔はランダムであるが概ね自身の魔力に比例して召喚される。
この使い魔のレベルは、就活の際の評価に大きく関わってくる。
一歩間違えればどこにも就職できないなんてことが起こりうる。
ソーマ・ディアスはこの学園の2トップと呼ばれる成績優秀者であった。
親友のレオン・ブラウンと共に試験に向かっている。
彼には目標があった。宮廷魔術師になってお金を稼ぐこと。
彼には双子の妹がいた。
幼くして親を亡くし極貧の中、双子の妹を養ってきた。
この学園に入るためにも、独学で脇目も振らず勉強し、入学後も成績優秀者の学費免除のために血のにじむような勉強もしてきた。
元々彼は、才能に恵まれていたわけではなく、努力で上位者を勝ち取ったのである。
今日ですべてが決まる。失敗するわけにはいかない。そんな緊張感の中で、いつも通り接することのできる友人の存在はありがたかった。
その時
『うぉぉぉぉぉ!!すっげーー!!』
試験会場である中庭で歓声が上がった。
「何があったんだ?」
レオンが近くにいた生徒に聞いた。
「成績2トップのうちの一人、リヒト・タッカーが上級悪魔を召喚したんだってよ」
上級悪魔は本来、代償を捧げて儀式によって契約により顕現される。
その立場は悪魔>人である。
しかし、今回、リヒトは使い魔として上級悪魔を召喚した。
シャングリラ魔法学園のトップを誇る実力者だからこそ成せたことである。
『こりゃ宮廷魔術師は確実だな』
『さすが500年に一度の逸材だ』
人々が口々に話始め周りがどよめく。中には黄色いどよめきもあるのだが…
そんな中、リヒトは取り巻きと共に、ソーマのほうへ、悠然と歩いてきた。
「やあ、ソーマ・ディアス。見たかい?これが僕の使い魔さ。」
上級悪魔を見ながらいう。
「君はどんな使い魔を召喚するのかな?まあ、僕以上の召喚は無理だろうけどね。精々、僕と並べて『500年に一度の逸材』なんて言われてるんだから、その名に傷をつけないでくれよ」
そういってリヒトは去っていった。
彼は、ソーマと共にシャングリラ魔法学園の成績トップに座っている。
二人はこれまでのシャングリラ魔法学園の歴史においても類を見ない実力を身に着けていた。
共に『500年に一人の逸材』と言われ、すでに魔法を極めた教師のレベルに到達している。
そんな彼は、ソーマのことが目障りなのか、ソーマを毛嫌いしているのである。
「なんだよあいつ。嫌味しか言えないのか。しかも相変わらずイケメンなのがむかつくなぁ。ソーマ、お前がすんごいのを召喚して見返してやろうぜ」
「別に競うほどでもないだろ」
「いーや、あのキザ野郎のプライドをへし折ってやらないと気がすまないね」
ソーマとしては、正直、リヒトと競う気などなかったが、レオンは相当悔しいらしい。
「そんなこと言ってないで、ほら、レオンの番だぞ」
「おお、ついにこの時が来たか。サキュバスちゃんカモン!!」
そういってレオンは召喚に向かう
ソーマは、4年間の学園生活について思い出していた。
最初はそんなに成績もよくなかったが、学費免除のための努力で500年に一人の逸材とまで言われるようになった。
今日、今までの努力が実を結ぶ。絶対に失敗はできない。
そうこうしていると、レオンが帰ってきた。しかし、その顔は浮かない。
「どうしたんだ?」
「召喚したらミニドラゴンだったんだよ…」
ミニドラゴンは小さいながらも、ドラゴンの名を冠するだけあってその評価は高い。
「いいじゃないか」
ソーマは率直な感想を述べる。
「どこがいいんだよぅ!!ドラゴンにはおっぱいがないんだぞぉぉぉぉ!!くそぅ!俺のサキュバスの姉ちゃんとの夢の生活がぁぁぁ!!」
ソーマは何も言わず、何も見なかったかのように自らの番となった召喚に向かった。
召喚はシンプルである。魔法の杖で召喚陣を描き、呪文を唱える。
後はその魔力を欲する召喚獣が、召喚主から魔力を報酬として受け取る代わりに、主従の関係を結ぶ。
召喚獣にとって、人間の一生の間の種々の関係など一瞬に等しい。そんなわけで、互いに
Win win な関係なのである。
ソーマが呪文を唱えると魔法陣が光りだす、ソーマの魔力を欲する者に魔力を渡し、契約は終了する。
ソーマはどっと疲れを感じた。魔力量は知識量に比例する。
彼は深く勉強に打ち込んだため魔力量には自信があった。
しかし、その魔力がほとんどの魔力が持っていかれたようだ。
光が収まり召喚された者が姿を現す。
ソーマはそれが何か分かったとき、逆に何が起こっているのか分からなくなってしまった。
そこには、丸みを帯びたボディ。ぷよぷよとした見た目。
そう、スライムがいたのである。
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