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【第4章 新しい歴史の始まり ~新女王の即位~】

【第4章 新しい歴史の始まり ~新女王の即位~】


魔法国家アルムルド、そしてその城下町は非常に賑やかに、活気に溢れかえっていた。来週に控えた新たな女王陛下の即位に際して、街ではお披露目のパレードやら、それを当て込んで商店街で行われているそれぞれの行事など、街が即位の喜び一色に染まっていた。

新たな国王、それも国家初まって以来の女王陛下がこの国の王となる。先の内乱から半年の間、王宮ではそれぞれの派閥が暗躍し、そして多くの血が流れていた。

特に前国王が要していた『暗黒魔法団』の力は絶大で、前々国王が重用していた『王宮魔法騎士団』とは熾烈な内紛があり、その結果、王宮はこの半年で急速に弱体化していた。


そんな街の喧騒を、一人の少年、16歳のナグルは分厚い本を片手に散策しながら、楽しんでいた。

ナグルの隣には、仕事場の棟梁であるトビが居る。今日は安息日で仕事は休みだ。トビがナグルに話しかける。


「なぁなぁ!ナグ。今日は折角だしよ、可愛いあの子を誘いに酒場にいかねぇか?なぁ良いだろ?」


「トビ、何を言っているんですか。僕はこの前の給金でこの本を買ったらお金がなくなったんですよ?

酒場に行って可愛いあの子を誘うにも、飲み食いはこちらで支払うんでしょう?僕にはそんなお金ありませんから。」

冷たくあしらわれたが、トビは更にナグルに縋り付く。


「もうこんなおっさんになると、可愛いあの子たちは振り向いてくれねぇんだよ。なぁ、いいだろう!?上手く行ったら俺が全部奢るからさっ!!なっ!なっ!!」


おっさん。もう30歳過ぎてるだろ。子供ほど年が離れている僕をダシに使って女の子と仲良くなろうなんて、酷い企みだ。ナグルは呆れ返りながら、悪戯っぽい笑みを浮かべて返事をする。


「トビ、貴方が可愛いあの子と仲良くできなくても、テーブルまで連れて来たら奢って貰いますからね。」

ナグルはそういうと、トビと肩を組んで酒場へと歩き始めた。


街の中心にあるこの酒場は、昼間は若い女性が多く、にぎわっている。夜になると『夜の蝶』が一夜の出会いを求める大人の空間になるのだが、昼間はどちらかというと健全な出会いのスポットとして有名だった。


「トビ、先ずは隅に席を取って、全体を見てから作戦を始めよう。」


「おぅ。…って言うか、ナグ、お前何でそんなに慣れてるんだ?」


-僕には自慢の兄が二人も居るからです- とは言えなかった。


長男は非常に整った顔立ちで、清潔感があった。次男は少し強面であったが、反面性格は至ってお茶目で、話術にも富んでいたし、内容も非常にウィットに富んでいた。

そして三男であるナグルは、整った顔立ちと、痩身且つ、人より頭一つ高い位の身長があり、話術も決して苦手ではない。つまり、長男と次男のハイブリッド-良いとこ取り- 的な立ち位置で、学生の頃から長男と次男からも『ダシ』として使われていた。


ナグルは先日化け物が初めて仕事場に押しかけて来た時に皆から、特に棟梁のトビから弄られた事を根深く覚えていた。


いつもは3人なので、相手の女性陣も3人組を見つけるのだが、今回は2人組なので、敷居は相当に低い。ナグルはとある『作戦』を使う事にしていた。

入口に不慣れな感じの女性が二人いる。ナグルは早速移動し、そして素早く行動を開始する。


「姫、お待ち申し上げておりました。こちらになります。」

膝を折り、頭を下げる。


「えぇ?あ、あの人違いでは??」

一人の女性が素っ頓狂な声を上げる。


ナグルはその女性に、体ごと近付き、前髪が触れるのではないかと言う距離まで顔を近づける。

「あぁ…これは失礼しました。しかし人違いではありません。貴女を一目見た瞬間、心が雷に打たれた様に痺れてしまいました。貴女の可憐な美しさに。」

ニコリと笑い、そして右手を差し出す。

「突然のご無礼を許してください。もしよろしければ、あちらのテーブルでお話をしませんか。勿論、そちらのお連れ様と一緒に。」


二人の女性を巧みにエスコートすると、おっさんが一人ポツンと待っているテーブルに案内する。


「あぁ…申し訳ありません。こちらは私の伯父にあたります。入口で貴女方の様な美しい女性を見つけ、私としたことが身内と一緒だった事すら忘れてしまっておりました。」


「初めまして。私はナグルと言います。」


-こうしてナグルはただ酒にありついた。-


なんだかんだと言って、四人の宴席は盛り上がった。ナグルが伯父のトビをいじり倒し、トビが追加で笑いを取るという連携までとれている。


そろそろ陽も暮れようかという時、ナグルはそろそろこの場を納めて家に帰ろうとする。二人の女性が心なしか後ろ髪を引かれているようには見えるが、酒場の時間は所詮泡沫のもの。トビは久しぶりに可愛いあの子たちと話が出来て満足だったのか、随分と酔っ払っている。


「今日は楽しい時間をありがとうございました。 …あの…またお会い出来ますでしょうか?」


ナグルは長いワンピースドレスを着て、青い髪を二つに分けて結んだ女性-メグ- の手の甲に唇で触れる。真っ赤な顔をしてるメグに向かい、

「そうですね。二人の運命が繋がっているのなら、いつか必ずお逢い出来るでしょう。」

と、別れの定番の挨拶を口にする。この酒場では後腐れは不要なのだ。


「では、また。」

酔っ払ったトビを肩に担ぎ、街の喧騒に埋もれていく。


トビの自宅方面の馬車に、酔っ払ったオッサンを放り込むと、ふぅとため息をついて夜空を見上げる。


『自分の女を…磨くか…』

自身の容姿から、女性と話をする事が特に難しい訳ではなかった。しかし、自分の外見だけを見てすり寄ってくる女性に、正直興味が湧かなかった。


あの美しい美貌と最高の権力を兼ね備えている未亡人、シスカ女王に言い寄られても、恐らく自分の心は動かないだろう。そんな風に冷めた自分を鼻で笑い、ナグルは自宅へと向かった。



次の日、明らかに酒を飲み過ぎて白い魂の様な物が口から放出されている棟梁をしり目に、ナグルは化け物とせっせと労働の汗を流していた。今日からは城下町の北側にある荒地を開墾し、耕していく仕事だ。城下町の西側と南側には、肥沃な土地があり、野菜や果物が栽培されているが、北側はまだまだ開拓が進んでおらず、魔法国家アルムルドから、正確には王宮魔法騎士からの勅令によりトビがこの仕事を請け負った。

化け物は土を掘ると言う能力に掛けては天才的で、4~5人分の仕事をこなしている。化け物の周りだけ、固い土が豆腐で出来ているかのように、サクサクと掘り続けているのだ。


「さぁ。そろそろ昼御飯にしようか。」

ナグルが化け物に声を掛けると、嬉しそうにガウっと返事をして、そのまま定位置であるナグルの真横にピッタリとくっ付く。


「ガウガ!ガウガ!ガウガっ!!」

きっと、ナグル、早く、早くと言っているに違いない。もはやどんな言葉を発しているのか分からないのだ。自分で想像して、勝手に解釈するしかない。


「そう慌てないんだよ、スピカ。ちょっと待ってて。」

ナグルはそういうと、いつもより大きい包みを広げる。


今日の御飯は何しろナグル特製だ。

鳥の肉をネバネバ系野菜と混ぜ、甘辛いタレで味付けをした肉団子と、野菜を塩水に付け、そのまま天日干ししたものを粉々に砕いて、それをおにぎりに混ぜたもの。そしてほのかに甘い香りが漂う野の花を加えたお茶だ。肉は自宅から失敬したが、その他はナグル自身が郊外で集めて、加工したものだ。


「ガウガウガーウ!」

化け物はもう待ちきれないと言わんばかりに、口を大きく開けてシューシューと異音を出している。


「さぁ、スピカ。沢山召し上がれ。」

ナグルも自分の分を手に取り、昼食を食べ始める。うむ…中々の出来栄えだ。自画自賛しながら、ふと化け物を見る。


「ガウーン!ガウーン!!ガウウウーーン!」 - シューシューシュー -

こちらは興奮しすぎてカオスになっている。化け物とは言え、王女ではある。見ない方が彼女の為であろう。


「ガウッ!? ウウウウウウウウ…」

突然化け物が苦しみ始める。


「はい。スピカ。お茶だよ。ははは、そんなにあわてなくても、昼食はどっかに行ったりしないよ。」

ナグルは笑いながらお茶の入った筒を手渡す。


ゴキュゴキュゴキュ!と一気にお茶を飲み干し、

「ガウー-----…」

何とも行儀の悪い事である。


「こらっ!スピカ!!ご飯はもっと味わってゆっくり食べなさい!作った人の愛情まで味わうんです!」

いつもと変わらない説教を化け物にして、自分の分も化け物に差し出す。


「美味しそうに食べてくれてありがとう。どうだった?僕が作った昼御飯は?」

ナグルが化け物に聞くと、化け物は明らかに挙動不審になっている。


「ガウガ!?ガウガガウガウガ?? …ゥガウゥガガゥガゥ…アーガウガ。」


「ははは…僕が作ったんだよ。どういたしまして。」

本当にこの答えが適当なのかは分からないが、恐らく御礼は言ってくれているのだろう。そう思うと、ニコニコと笑いながらナグルは布袋の中から本を取り出し、読み始めた。


「ガウガ、ガゥ?」

化け物が本を覗き込みながらナグルに話しかける。


「あぁ…これはね、他国の法律について書かれた本なんだ。僕は将来この国の為に、あるべき

決まりの姿を考えて行きたいと思っていてね…」


「この国の、今の決まりでは僕は法律家になる事が出来ない。だから、将来、僕の子供でも、孫でも、

誰でも良いから僕の意思を受け継いで、この国のあるべき決まりの姿にしていってほしいと思ってる。」


「ガウー…」

化け物には少し難しかったのだろうか。それでも腕を前で組みながら、何か考えている様子だ。


「ガウガ!ガウガウガウガッガガウ、ガウガウガガウガ?」


「ははは…ごめんねスピカ。流石に今のはさっぱりわからないよ…あっ、そろそろ仕事を始めないとだね。

よしっ!昼からも頑張ろうスピカ! ご安全に!」


☆☆


週末になった。明日はいよいよ新女王の即位である。

街では昼夜問わず、完全にお祭り騒ぎになっており、安息日の前日ながら、労働は行われず、皆がそれぞれ思い思いの形で即位のその瞬間を待っていた。

ナグルは自室で本を読んでいた所、慌てふためいた母親に呼ばれて下の居間で思わぬ訪問者を迎えた。


腕に魔法使いの杖をモチーフにした紋章を付け、銀色の鎧に身を包んだ王宮魔法騎士が2名。中流家庭の、普通の居間に何と似つかない威圧的な格好をした男が、ナグルを迎えに来ていた。それも、自宅前には王宮馬車までつけている。


「ははは…これは一体何事ですか。」

ナグルは笑うしかなかった。誰の差し金か分からないが、庶民の家にこんな出迎えをよこせば、近所は勿論、町中の噂になる事は間違いない。


しかし、来てしまったものは仕方がない

「母さん。ちょっと王宮に出かけてきます。」


「な、ナグ!あ、あんた何かやらかしたのかいっ!!?」

母親は当然勘違いする。自分だって、突然こんな迎えがくれば、『やらかしたのかも。』と思う。それでも、今日のこの来客の理由は何となく判ったし、母親に必要非常に心配を掛ける事もない。


「仕事でお付き合いのある人がちょっとした伝手を持っているからね。別に牢獄に入れられる様な事はないよ。この出迎えも、今日は特別だよ。」


「夜にはちゃんと帰ってくるから、心配しないで。母さん。」

いってきますと家を出て、直ぐに王宮馬車に乗りこむ。この特権階級自体がナグルは気に入らない。

しかし、恐らく新女王陛下が差し向けたこの一行は、向こうにしてみればもてなしなのだ。


「どうか、ゆっくり走ってください。」

極僅かに、棘のある口調で御者に依頼をすると、王宮馬車はゆっくりと進み始めた。



王宮に着き、馬車を降りると待ってましたと言わんばかりに化け物が飛び掛ってきた。ナグルはほんの少しだけ虫の居所が悪かった。いつもなら、両手を広げて化け物の突進を受け止めるのだが、今日は何となくイジワルをしてしまった。

『スッ』と化け物の飛び掛りをかわす。化け物は両足で着地する。


「ガウウ?」

化け物が少し離れた所から、ナグルへと首を斜めに傾げて伺い見る。


「スピカ。飛び掛ってきてはいけないよ。」

ナグルはそう言いながら、心の奥にチクっと棘が刺さった様な気持ちになっていた。両手を広げて、少しずつ化け物との間合いを詰めていく。


化け物はいきなりトップスピードでナグルとの間合いをゼロにする。

『ドスンっ!』と地鳴りのような音がなり、ナグルの胸の中に化け物が収まる。


良く見ると、化け物はいつもより、更に着飾っていて、赤い長い髪の毛には、金銀が散りばめられた

髪飾りを着けていた。


「スピカ、今日はご招待ありがとう。そのドレスと髪飾り、とても素敵だよ。」

化け物はもはやお約束ともいうべく、シューシューと異音を発している。


そんなやり取りをしていると、奥からマームさんが女中を引き連れて歩いてくる。


「マームさん、本日はシスカ新女王陛下からのお招きに預かりました事、大変光栄に存じます。」

仰々しく貴族式の挨拶をする。正直な所、半分は嫌味だ。


「本日はようこそ。招待を受け入れて頂き、こちらこそありがとうございます。さぁ、シスカ女王陛下がお待ちになられております故、失礼ながらそのままご案内申し上げます。」

マームも、流石に女王陛下の招待客とあって、礼儀正しく対応する。


てっきり謁見の間に連れていかれるのかと思っていたら、シスカの私室の様だ。広大な王宮の廊下には色々な彫刻や、絵画、そして庭には花々が咲き乱れている。


静々と歩いて行くマーム、そしてナグル。流石に女王直々の招聘とあって、娘の化け物ですら同行を許されなかった。当の化け物はガウガウと唸っていたが。


やがてやや控えめな趣きの扉の前で、マームがノックをする。

「ナグル様、御面会の為ご来場です。」奥から篭った声が聞こえる。


マームが横に移動し、頭を下げて言う。

「女王陛下が中でお待ちです。くれぐれも粗相の無きように。」

ここに来て、ナグルは何の罪もないこの女中にすら小さな怒りを覚えていた。王宮のやり方で、中流庶民の家庭に迷惑を掛けた上に、粗相の無いようにとは何事だ。


いつもであれば、こんなことを気にするナグルでは無い。しかし、自分の家族に不安を与えてまで、王宮と関わり合いを持つことは望んでいなかった。そう、今は人間として意思疎通が出来ない化け物の姫を除いて。


ナグルは扉を開け、中に入ると挨拶をせず、そのまま扉を閉める。

閉められた扉から、ベッドの横にある長椅子に腰掛けている女性、シスカ新女王に向かって歩みを進める。


パァッと顔を明るくして、立ち上がろうとする新女王に、ナグルは礼をする訳でもなく、挨拶をする訳でもなく、いきなり話しかけた。


「シスカさん。敢えてそう呼ばせて頂きます。今日は一体何用で私の自宅に使いを向けたのですか。」

ナグルは正直に自分の胸の中にある黒い部分を吐き出す。


「ナグル様…如何なされたのでしょうか? 使いの者が何か非礼でも…」

シスカは一転強張り、何かに怯えた様な顔になる。


「シスカさん。貴女は王宮の人間が一般の家に使いを出す事や、そこに王宮魔法騎士を派遣する事を、

どのようにお考えなのですか?」


ナグルは一気に捲し立てる。

「貴女やスピカが私に会いたいのであれば、手紙や使いの者を一人寄越せばいい。それも普通の使いで十分です。わざわざ王宮馬車と騎士を仕立てれば、私の家庭はあの町でさらし者になってしまう。私は貴女やスピカと親交があるから、矢面に立ちましょう。しかし、私の家族が好奇の目に晒される事は我慢が出来ません。」


「勿論、シスカさんがそんなつもりが無い事は分かっています。でも、僕は貴女には前時代的な慣習や過去の前例を盲信するような、愚かな女王陛下になって頂きたくない。貴女は人の苦しみや悲しみが分かるお方です。広く様々な人々の気持ちを理解し、一人一人が輝ける人生をこの国で過ごしたいと思える。そんな国を、そんな新しい時代を築き上げる、聡く美しい女王陛下であって欲しいと願っています。」


ここまで一気に捲し立て、ナグルは改めてシスカ新女王の前にひざまづくと、深く頭を下げる。


「暴言をお許しください。シスカ女王陛下。」

「女王陛下の即位、王国の長と成られる良き日に、このナグルめを御招聘賜り、至極光栄に存じます。」

ナグルは言いたい事を全て言った後に、うやうやしく祝辞を述べる。


シスカは言葉が出て来なかった。自分の価値観で相手をもてなせば、相手は必ず喜び、ひれ伏すと思っていた。ナグルをひれ伏させるつもりはなかったが、それでも自分は女王になるのだと、命の恩人に祝福の言葉とお礼を言って貰いたかった。その為に最大のもてなしをしたつもりだった。


「ナグル様…私は…」

「シスカ陛下、どうか陛下が治めるアルムルドが正しく、より良き道を、そして更なる発展をする事を私はいつも祈っています。」


「今日の事は、僕の非礼と合わせて、水に流して下さい。 シスカさん。本当におめでとうございます。なんか、僕からすると遥か遠い所に行ってしまう感じがしますね。寂しいです。」

ナグルはちょっと悪戯っぽい笑い顔で、友人の門出を祝う。


「ナグル様っ!! 遠い所なんて…私はいつも、いつでもあなた様にお逢いしたいと…」

シスカは頬を赤らめてモジモジしている。


ナグルはシスカの両肩に自分の両手を掛け、顔を耳元に近付けて小声で囁く。

「シスカさん。せめて、二人でいる時は、これからもそう呼ばせて貰っても良いですか?」


「は、はい!喜んで…」

シスカは耳まで真っ赤になっていた。


「あ、あのっ…ナグル様…これからも王宮に来て私とスピカの相談相手などをして頂きたいのですが…」

まだ耳が真っ赤なままになっているシスカは今日、ここにナグルを呼んだ本当の理由を切り出した。


ナグルは小さく首を縦に振ると、

「勿論ですよ。でも、私がちゃんと王宮に伺いますから、くれぐれも王宮馬車などを差し向けぬ様、お願いしますよ。シスカさん。」


ニコリと笑うと、シスカは少しむくれた様に返す。

「もうっ! ナグル様のイジワル!」



翌朝、魔法国家 アルムルド 第21代国王に、シスカ女王が正式に即位した。

周辺国から、そして国民から絶大な支持と祝福を受けた新たな歴史の始まりだった。


- 魔王国家アルムルドは第21代国王 シスカ女王を最後に、その歴史に幕を下ろす事になるが、

 それはまだ先の話である。 -


今はまだ中流家庭の労働者であるナグル、化け物に姿を変えている王女スピカ、そしてシスカ女王の三人の運命が動き始める。


『民主法治国家 アルムルド』の礎を作り、後に建国の祖、当世随一の法律家と呼ばれるようになるナグルの運命が、激動の運命が動き始めた。


【第5章に続く】

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