人族の反逆者2
随分とお待たせしました。
久々に更新したいと思います。
忘れられていないことを祈ってw
こんな闘技場のど真ん中にいきなり現れるとは……てか無駄に後光を背負って登場すんなよ。
というかそもそもお前は身分を隠すはずだったろう?
何でまた『人の諍い』ごときにアルカナまで出てくるんだ。
そんな様々な疑問が俺の中で渦巻いているが、相手が誰であれやることには代わりない。
「これは人の世における最終決定だ。お前の意見は尊重してやりたいが、この件について議論の余地はない」
「我が名案をくれてやろうというのに、頭から否定するとは随分と狭量だな勇者」
「勇者である俺が揺らぐのはまずいからな」
「正当な理由さえあれば良いのだろう? でなくては、ただの思い込みで突き進むだけの阿呆ではないか」
ふむ、論破されたほどじゃないが……この衆人環視の中で凄惨な光景を演じる俺の主張を突き通すには分が悪い。
この場には『勇者の立場』で話している以上、一定の理解が得られなければ、今度は俺が資質を疑われる。
それも何人もが手を変えて疑問が差し挟まった状況では心象は最悪だ。
こんなことで勇者同士が潰し合うなんて未来は本当に勘弁してもらいたい。
「良いだろう。半端な答えじゃ勇者の結論は変えられないぞ」
「ふふん、問題ない。では前提から確かめよう。教皇の要望は『凹ませろ』だったはずだ」
「そうだな。さっき俺もワイズ教皇に確認した」
「うむ、ではヴァルは先ほど『巨大な暴力が個人の感情で振るわれるのは問題だ』とも言ったな」
「あぁ、言った」
「そしてヴァルはやりすぎたらしいな?」
「反論はあるが、確かにこの場に限ればそうとも言えるな」
「つまり、勇者の決定は揺らがないが、教皇の意見も取り入れるに値する、と」
「……続けてくれ」
「それについての結論は、ルイーズへと返した『いつ、どこで狩るか』に集約されると解釈して相違ないか?」
「まさかアルカナから『勇者の延命』を示唆されるとは思わなかったがな」
あぁ、本当に意外だ。
イルマの服を握って掲げながら思わず遠くの空を仰ぎ見る。
いくら優しい竜神様でも、ただの一個人への肩入れは聞いたことが無い。
いや、そういう意味で言えば俺はすでに多大に肩入れされているんだが。
「うむ、まぁ……別段そやつのことはどうでも良いんだがな。ともかく『勇者の決定が執行』されるまで管理する者が居れば良いわけだ」
「俺がこのまま裏まで引きずって行くから安心しろ」
「場を移すだけでは意味はあるまい?
我が言いたいのは『決定は覆らなくとも期限を延ばす余地がある』というところだ」
「言いたいことは分かった……が、国ですら匙を投げたからカルオットに居るこいつを誰が管理する?
仮にも世界から……いや、イワンからだったか? まぁ、勇者認定を受けた、暴力を生業とするバケモノなんだぞ?」
そう、俺たち勇者は等しくバケモノだ。
話し合いでは解決しない場合に持ち出される、暴力を正当化した調停機能。
良かったこともあるし、悪かったこともある。
勇者なんて勝手なやつばかりだが、それでも『他者を守る』ことだけは最後の一線として存在する。
その答えの一端がイルマ・ユーリだというなら、感情的にも倫理的にも、そして世論的にも許せない。
こんな底の浅いくだらないやつが勇者に数えられるなんて、人族の窮地も極まったとしか言いようがない。
「そうだ。勇者を従える以上、管理者は厳格に選ばねばならない」
「……うん? ちょっと待て」
「では管理者を選ぶ上で重要なのは何か……暴走をねじ伏せるだけの戦力を持ち、勇者の何たるかを知る者……」
「おい、まさか……?」
嫌な予感……思わず『まさか』なんて口走ったが、アルカナが言いたいことはすでに伝わっている。
それは俺だけでなく、カルオットの権力者である教皇や枢機卿、巫女をはじめとし、観客も含まれる。
「丁度我の目の前に良い人材が居るじゃないか」
「ふざけるな、こんなやつに構ってる余裕なんてない」
「これはまた異なことを言うものだ。この神殿とやらに連れて来たヴァルが、我に告げたことを忘れたか?」
「……言ったこと、だと?」
「『気に食わないから、とヒトを殺して回っても面白くはないぞ』と我を諭したのはヴァルだ。
だから我もヴァルに同じ言葉を送ってやろう。
その劣化勇者も戦力の一つに他ならないのなら、ここで命を狩るのは少々勿体なかろう?」
「…………俺にこいつを育てろ、と言いたいのか?」
「いや? 我が提示する選択肢は最初からただの『先延ばし』だ。いつでも狩れる命なら、|いつ狩っても良いだろう《・・・・・・・・・・・》、とな」
俺よりも随分と低い身長で、得意気に鼻からふんすと息を吐き、竜神は尊大に告げた。
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ヴァルは思わず一理ある、と思ってしまった。
アルカナの指摘で重要なのは、ヴァルの主張はまったく曲げられていないことだ。
イルマはどうか知らないが、ヴァルはただ剣を振り回しただけ。
魔法どころか剣技すらまともに使っていないのだから、今のイルマ程度なら制圧に大した問題はない。
最悪、イルマの方が強くなったとしても、提案したアルカナを頼れば共に何らかの対策を考えてくれることだろう。
そして妥当性を示した新たな選択肢に耳を傾けないのは、人類の守護者の立場からありえなかった。
「……自分で始めたくせに、いつまでもぐずぐずと泣いているな。イルマ・ユーリ」
「うっぅぅぅ……」
「旅に連れていくのは構わない。……が、これ以上手間をかけさせるようなら、すぐにでも俺の決断通りの結末与えよう」
「どういう意味……?」
「お前の望み通り殺し合いをするか、それとも俺の隣で生涯共に歩むか……今すぐ決めろ」
極限状態のイルマに、ヴァルにとっても危うい究極の二択を迫る。
こんな『足手まとい』を育てるなんてやってられるか、と思っていても、勇者に匹敵する戦力を切り捨てるほど人族の層は厚くない。
アルカナの指摘通り、ヴァルの中に断る言葉や術が存在しないのもまた事実だった。
勇者に祀り上げられた不幸は同輩として理解するが、成った以上は同列だ。
選ばないは許されないし、この場で覚悟を決められない程度なら、勇者の評価などかなぐり捨て、ヴァルはこの場で殺す。
それだけの思いを込めた問いは
「………………一緒に行く」
痛みを我慢していたためか、それとも駄々をこねていた手前、主張を折るのが恥ずかしかったのか。
顔を俯かせて頬を真っ赤にしてぼそりと呟かれた言葉は掠れはしていたが、しっかりと耳に届いた。
そうしてヴァルの苦労は新たに追加されることになったのだ。
お読みくださりありがとうございました。
強すぎると逆に描写が単調になってしまう気がありますw
ヴァルって人族の中でトップクラスの実力者ってところがあまり表現できていませんでしたが、今回は思う存分って感じですかね。
また、神様のおねがいや新作も投稿を始めています。
下にリンク先を置いておきますので、そちらもご覧ください。
作家のメンタル面の養分になるので、評価やブクマをいただければ幸いです。




