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ぷるりんと異世界旅行  作者: wawa
誓約の地~エスクランザ天王国
93/221

05 計略 05


 問題の現場から数時間後、私達はいつもの神社仏閣付き高級大旅館へ戻って来た。踏み慣れた白い石段。白い鳥居、八百万の神々。

 

 (戻って来た。そして南国アジア風、生きていて良かった)


 彼が助かった後の、ご家族の皆さんのお気持ちは察するに余りある。だが、南国アジア風には、これから改めて罪を償ってもらいたい。


 彼の身元引受人は色白年増アジア風。痴漢男との関係者だが、彼の方が人間的に真面そうだ。少し晴れた気持ち。いつもは痴漢男と嫌々歩いていたこの参道と、旅館へ続く商店街。


 同じ道。だが、今は違う。


 (そう。私は今、ぷるりん様と相席相乗り中なのだ!)


 脱ボッチ。


 (ぷるりんサイコー!しかも、隣には巨人女共をヒーヒー言わせている、巨人婚約者(仮)を同伴中)


 夜のお店の同伴では無い。私にそんな器量好しの職業スキルは備わっていない。むしろこの身長差は、保護者同伴が正しいだろう。隣は私の婚約者(仮)様。そして、後にはアピーちゃんと弟とメガネの講師もご同伴。


 なんて心強いのだ。


 あれほど嫌々だったこの道も、今や楽しく感じられる。テンションはだだ上がりだが、状況が状況だけにはしゃぐ訳にはいかない。


 港の現場、空気は最悪だったのだ。私はぷるりん様の威を借りて、怒りに任せ思わず足が出てしまったが、痴漢男を踏むことは出来なかったのでご愛嬌だ。


 あの後、久しぶりに顔を見た色白年増のお兄さんと痴漢男が巨人達と少しだけ話し、私は婚約者(仮)様のドローンに乗せて貰ってここにやって来た。


 現在ぷるりん装備中の私には、言語チート機能が備わっている。なのでところどころ彼等の会話は理解出来たのだが、どうやらこれから高級大旅館で宴会をするらしいのだ。


 かなり巨人達はお怒りだったので、あのまま直ぐにドローンの国へ帰るのかと思ったが、そうではなかった。おそらく私を無理矢理連れて来た、詫びを旅館でするのだろう。いわゆる手打ち宴会だ。今さら大袈裟な謝罪は要らないが、婚約者(仮)様が了承してしまったので仕方が無い。


 だがそれによって、私はある事を思い付いた。


 (見せびらかす。あのヒソヒソガールズに、私のステキな巨人を見せびらかす)


 私の中の、メスの心に火が着火。ビッチ心の搭載完了だ。誰が見たって巨人は格好いいはずなのだ。


 (ついでに、弟とメガネの講師もイケてるよ!これって逆ハー?私がヒロイン!?)


 攻略サイトを無しに、恋愛ゲームを進行させた事は無い。なぜか初回はいつも一人で前向きエンディング。無理やり前向きテンションの主人公を余所に、プレーヤーは疑問にネガティブ・ループに嵌まっていく。


 逆ハー状況を進行した今、リアル一人前向きエンディングになれば、実際に前は向けないし、上を見上げれば青空は灰色に見えるだろう。どんより曇天エンディングを回避するため、私は慎重に彼等の親密度を平等に上げる、細心注意を払うことに徹する。


 巨人達のごまをする。

 笑顔で高感度アップ。

 そして何かを貢ぐ。


 (この作戦で行こうと思います)


 しかし現状、貢ぐ物は何も無い。帯の隙間に飴の包み紙を装備しているだけだ。とりあえず弟とメガネの位置を捕捉。キョロキョロ見回すアピーちゃんの後ろに、居る居る。


 振り返り、巨人達と目が合うと、にこり。

 

 にこり。うふふ。


 おや?弟が何か言いたそうだ。メガネの講師の眉間には・・・皺が。やばい。絶対零度アブソリュート・ゼロが来る前に回避回避!


 やり過ぎは禁物だ。

 これは現実。

 恋愛ゲームではないのだ。


 やり過ぎビッチ主人公に、温かい目を向けてくれるキャラ分けキャラが居るとは限らない。リアル社会では、ハーレムが他己承認されていない場合、捉えられようによっては、男あさりのビッチを通り越して、自己妄想強による精神の病を疑われかねないのだ。


 (他に、知り合いは?・・・いなさそう、)


 残念ながら、私を笑いでフォローしてくれそうな朝練メンバーがいない。他のヴィジュ系メンバーは私達の乗ってきたドローンの管理に忙しく空に飛んでいるのだが、遠目から見ても見たことの無い人達のようだ。


 (・・・・眼鏡、怖い。)


 振り返れば、未だに眼鏡がこちらを鋭い目つきで睨んでいる。逆ハー攻略人数三人という少なさに、焦って周囲に媚びを売ろうと思ったのだが、逆に好機を逸するところだった。危ない危ない。

 

 (残念だ。いつも玄関出入り口でヒソヒソするヒソヒソガールズに、私のキャッキャうふふを見せつけたかったのに)


 いつもは嫌々長々参道も、三人の恋愛攻略のフラグを立てるには距離が短すぎるたのだ。玄関出入り口は諦めよう。


 しかしそれとは別に、港での彼等はマジで怖かった。威圧感半端なし。


 なんて言うのかな、悪役にすれば最高に怖かった。だが彼等は味方。私の婚約者(仮)。もはや詐欺という言葉は使いたくない。私の隣に立つ灰色の巨人。彼に婚約詐欺だとバレる事は、確実に回避しなければならない。


 結局、婚約詐欺に関しては何もかもぷるりんの所為なのだが、この道中ぷるりん様は私に身体を明け渡し、必要があれば出て来ると言っていた。そう、必要があれば、彼に全てを丸投げしようと思っている。


 (なので婚約者(仮)とのお散歩を満喫中)


 そんな浮かれていた私に、旅館に着いて更に嬉しい事が待っていた。なんとメアーさんに会えたのだ!やっぱり後ろ姿は彼だった。


 慣れない異国で知人と出会う。これはとても嬉しい事だ。何故ここに?どうやってここに?不思議な縁を感じながら、私はメアーさんに纏わり付いていた。



    






******




 




 生まれてから自然に王になったエスクランザ国の皇王は、争い事の経験が一切無い。先代や先々代、天教院エル・シン・オールの上層貴族達が苦労を重ねてガーランド国と交渉をしたことに今が在るのだが、玉座に座る前からガーランド国の庇護に浸る現皇王は、そこから抜け出そうと思った事は一度も無いのだ。


 なので天教院エル・シン・オールの神官達がエン・ジ・エルと呼んで祭り上げる第二皇子が、同盟国のガーランド国へ神官大使として招致されたと聞いても、何も思うところは無かった。



 今回、第二皇子アリアのガーランド国への人質召致に関して、驚いた者は古くからの教えを守る天教院エル・シン・オール神官派閥と、アリアを取り囲んでいた女達、そして一部の貴族達だけではなかった。


 多くの第一皇子リーンを推奨する派閥は、単純にそれを喜ぶ者と、エン・ジ・エルという最高称号を持つアリアとガーランド国との癒着を懸念する者に分かれたのだ。


 結局は後者の意見が勝り、アリアを国外へ出すことを反対する者達が多くを占めたが、ガーランド国竜騎士隊長の圧力と未だ上空を飛び続ける飛竜に屈した。隊長オゥストロの告げた期日、三日後にアリアは天上人を伴って出国する事に決定せざるを得なかったのだ。この議会の決定に対し、戦争の経験の無い国民や天弓騎士から、独断で空に矢を放つ者など居るはずも無い。


 不満と混乱を極める神官貴族達を余所に、インクラートが巫女を攫ってきた強行の内情を知る天教院エル・シン・オール上層部は、皆一様に口を閉ざしている。それにはもう一つ大きな理由があった。


 ガーランド国の強襲後に、今まで神憑る事の無い普通の少女が精霊を宿すと態度も話し方も一変した事に、神官達は天上人の存在を初めて認識する事が出来たのだが、その精霊憑きの天上人はエスクランザ国での永住を拒んだのである。


 [巫女ミスメアリ様の強い意思、それを害すれば善くない。次の訪問を待とう]


 [元より、巫女ミスメアリ様が望んでエスクランザ国に来たのでなければ、天王国に祝福は授けられない。そう古くからの経典には記されている]


 [これを引き留める事は、例え皇王でも出来はしない]


 [・・・・]


 

**


 

 [議会の決定はあり得ない!アリア様を国外に出すなんて言語道断だ!]


 [港では不敬にも皇太子様を踏みつけたそうだぞ!]


 [実際、議会はあの少女の扱いを悩んでいたからな。天上人の降臨は百年を跨いで一度有るか無いかの僥倖だというが、突然現れた得体の知れない者が聖天第一位などと、経典に書かれていたとしても受け容れがたい]


 [スラの話しでは、言葉も碌に話せないそうではないか]

 

 [まあ!そんな無知な者が天上の巫女ミスメアリだというの?・・・嘆かわしいわ]



 [お父様、お母様、あまり大きな声で、天上人の巫女様を非難しないで]



 [スラ、お前が優しすぎるから、どこの出自かも分からない、あの娘がアリア様を攫ってしまうのだ!]

 [そうよ!あなたも土の最高神官なのに、何故、天教院エル・シン・オールはあなたの意見を聞かないの?]


 [最高神官と言っても、それは土の精霊祭に関わる事のみなのよ。国政は別の貴族神官様や、天教院エル・シン・オールの上層貴族の方達が行うの。それに、私も巫女様の事を偽物だって疑って、すごく反省しているのよ]


 エオトの夫妻は娘の真摯な説得にも納得はしなかったが、アリアの出国を阻止しようと集まった貴族達は、スラの悲しげな表情に天上人への見方を変える者もいた。


 [土の巫女様は、寛容であらせられるな]



 [私、間違えていたの。アリア様が出発される日まで、私が巫女様へ抱いていた、間違えた感情を神に誓って改めるわ。巫女様に、少しでもこの思いが伝わるように願っている。そうすれば、アリア様も私の事を許して下さるわ]




***


ーーーエスクランザ国、天教院エル・シン・オール本殿、廊下。




 「メアーさん!メアーさん!」


 突然前に立ちはだかり、少女はファルドの最敬礼をメアーに取った。その不細工で憐れな体勢にメアーは吹き出す。


 「お前、それ。完全に馬鹿にしてるだろう。顎は出すぎだし、右手は指を伸ばさずに握って胸元に置く。こうだ」


 『おぉ、なんかかっこいい』


 メアーに手本を見せられて、少女は生真面目な表情でそれを繰り返す。踵を付けて正面を見据え、正しい姿勢で大袈裟に振った右手を胸に当てた。まあ良いと、見下ろしたメアーは半笑いにそれに頷く。


 『施設の皆は元気ですか?、はあ、異世界異国で知人に出会うって、なんだか落ち着く。しかもメアーさんの職業に、安心感高まる』

 「おい、踏んづけるぞ、前を横切るな、」


 更に足下に仔犬の様に纏わり付いてきた小さな黒髪の少女に、メアーは思わず笑顔になった。だが見上げた少女はメアーの顔をしげしげと眺めると、自分の顎に手をやり撫で上げる。


 『お髭、無いですね』

 

 「そうだな。さすがに髭は剃ったぞ。皇族に面会するのに失礼だからな?」


 笑う少女は「私は髭は、無い方が好きです」、『イイネ!』と繰り返す。


 「少し話せるようになったのか?偉い偉い」


 ポンポンと少女の頭を撫でると、見上げた少女は何かを思い出して悲しげな顔をした。


 「なんだ?」

 「エルビーは、怪我をしました。私はとても悲しいです」


 「・・・そうか。その、奴は、エルヴィーは一緒か?どこに居る?」


 首を横に振る少女にメアーは頷く。俯いた小さな頭に再び軽く手を置き柔らかい髪質を撫でる。大きな手のひらの温もりに、メイは照れ笑いに顔を上げた。



 「お初にお目にかかる。ファルドの医療指揮官とお見受けするが?」



 静かに落ちた低い声。慇懃に響いた声の先に目をやると、少女の少し後ろに背の高い男がやって来た。それにメアーはいつもの様に眉を顰めずに笑顔で応える。


 「如何にも、初めまして。ファルド帝国第十師団を預かる、テスリド・メアー・オーラです」

 「ガーランド竜王国、オゥストロ・グールド。メイ・カミナの婚約者だ」


 「!?」


 現れたオゥストロを見上げた少女は、次に神妙な顔をしてメアーを見つめる。片方の眉が上がった生意気な表情。それを見下ろしたメアーも、同じ様に疑問に眉が上がった。


 (婚約者・・・、冗談かと思っていたが、本当か。確か第九より、ミギノはフロウが手を付けていると押し通せと通達が来たが・・・。そんな茶番はこれにも必要なのか?)


 返しにメアーが躊躇していると、オゥストロは捕虜となった若い使者の言葉を思い出した。


 「先日、我が国へ訪れた使者殿から、ファルドでの噂を聞いている。私の婚約者と貴国の将軍が懇意だったと、根も葉もない噂話を」


 オゥストロの低い声、冷たい黒い瞳はメアーを涼しげに見つめた。それにメアーは何かを思い出し笑み返す。


 「そうですね。私は他人の色恋沙汰に、あまり興味が無いもので。噂は噂なのでしょう。だが、こちらの少女が彼の公爵殿と親しげにしていたところは、目にした事があります」


 『ここに居る女の子って言ったよね?・・・まさか、私の事?』

 〈・・・・〉


 嘘はついていない。第九師団の指示も遂行している。


 メアーはグルディ・オーサ基地内で、少女ミギノにしつこく言葉を教えていたフロウの事を言ったのだ。あまり深く立ち入らない方がいいとメアーはこの話を終わらせようとしたが、意外にもオゥストロはそれに不快を表した。


 「親しげに、将来を誓い合った仲だと?」


 「?、」


 メアーは想定外の内容に片方の眉を上げ、二人の間に立って見上げる少女を見下ろす。メイもメアーと同じ様に眉を上げ、彼とオゥストロの両方を交互に見上げていた。


 (え、誰と何が将来を誓い合ったって?誰?誰?)


 今の話の流れは、オゥストロが自分を非難している様に聞こえたのだが、内容に全く心当たりが無いメイは救いをメアーに求め顔を見つめる。一方オルディオールは、話しの全てをメイの中で傍観していた。


 (まさか後輩とこのガキを、ファルドでも婚約者設定にしたのか?・・・・無いなぁー・・・)


 メイの婚約者設定。オゥストロと婚約させた自分と後輩のフロウと思考回路が被った事に、オルディオールは思わずメイの身体から呟きをもらした。それをファルド帝国騎士団長の、共通点に加えたくはない。


 「無い・・・」


 少女の言葉に、背の高い男達の視線が頭頂部に突き刺さる。しかし直ぐに自分が表に出るのをやめて、主導権は少女メイに戻しておいた。


 (なんだか面倒くさいな。オゥストロの奴もフロウも、計略的と割り切るにはメイへの関わり方が微妙だしな、)


 オルディオールの考えでは、婚約者契約はしたがメイはもっとオゥストロの干渉から外れると思っていた。しかし、意外にもオゥストロは忠実まめな行動を少女に示してくる。港で肌を露わにした羞恥心が削げ落ちたメイへ、皇子とのやり取りが終わると直ぐに身に着けていた防風布を外して、オゥストロはメイの足に巻き付けたのだ。


 (こいつがインクラートに攫われてからも、結構イライラとしてたしな)


 オルディオールがメイと行動を共にしていない事に、相当の焦りを表していた。魔物である自分が生きている者に取り憑けば、自我が破壊される可能性もあると伝えていたのにも関わらず、オゥストロはオルディオールを自らの身体に取り入れて語らせようとしたのだ。


 (まさか?・・・まさかな、)


 少女本人の焦りと疑問は晴れないまま、オルディオールは内心で疑惑を完結し意識を頭上へ戻すと、二人は更に険悪化していた。


 「貴殿に同行し、北方セウスから我が国へ入国した若い使者、ローラント殿は、発生した〔不幸な事件〕により、現在拘束中だ」


 「・・・ガーランドでは、平和の使者を拘束するのが慣例か」


 意図的な言葉は、ファルドの兵を捕虜にしたと宣言したものだ。その挑発に、メアーは隠さず怒りを表した。だが一触即発とする険呑な間に明るい声がかかる。


 [これはお二人、そして巫女様ミスメアリ!]


 『あ、年増色白・・・』


 横合いからかかる北方セウス語に、その場の空気は一瞬で変えられた。笑顔で現れたのは、第一皇子のリーンだ。


 [紹介しようと思っていましたが、既に済まされたようで何よりです。こちらは古くからの知己、メアー殿。こちらは我が国の同胞である竜騎士オゥストロ殿です巫女様。さあ、思うところはありますが、ここは東大陸フランでは無いのです。共に宴で交流を深めましょう!]


 言われた騎士達は皇子へ挨拶を交わし、それぞれ会場へ向かって行く。先頭を促されリーンに付き添われながら、メイは先ほどの晴れない疑問に片方の眉を上げたままだった。


 (誓い合う?将来って?例のあれの話しじゃないよね、グランふふーんのやつ。・・・それよりも、何この上座、ひな壇の上で、宴会するの?)


 第一皇子は宴席の上階へメイを連れて行く。少し離れてメアーと数人の騎士、その逆にはオゥストロとセンディオラ、エスフォロスの後ろにはアピーがきよろきょろと辺りを見回しながら付いて来た。


 [さあ、この善き日を祝おう!]


 皇子の号令により、部屋には賑やかな弦楽器が奏でられる。高貴な者に導かれ用意された貴賓席に腰を下ろした敵国の者たちは、両国に配慮の無い気まずい対面席に内心でため息を吐く。リーンは故意に険悪な騎士の間に割り込み、そして更に同じ席へ誘うために、天上の巫女を宴の上座に招いた。


 (こういう無神経な奴が、王の資質に一番向いてると思うな・・・)


 状況の観察に、メイの中のオルディオールは沈黙を守っていた。国交の無かったエスクランザ国の様子見、そして巫女と落人オルの手掛かりを持つエン・ジ・エルであるアリアと話をしなければならない。だが肝心の皇子は他国の大使となるために、多くの別れを惜しむ神官に囲まれてそれどころではないようだ。


 オゥストロが提示したのは三日。


 それで全ての処理をするのだ。短すぎる三日では、私用に刻が取れないのも無理は無い。二日間はアリア出発の儀式、ガーランド国との同盟の再調印式、そして夜は貴族神官達との宴席が隙間無く予定されていた。


 (まあ、皇子はガーランド国で話せばいいが、それ以外を独自で調べるしかないか。出来れば、この国でしか知り得ない天上人ミスメアリの情報を単独で探りたいが)


 オルディオールは内心呟いたが、不穏な宴席の空間に笑顔であるのはメアーとオゥストロを伴ったリーン皇子ただ一人。それに挟まれたメイは、訝しんで男たちを見上げていた。 




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