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ぷるりんと異世界旅行  作者: wawa
属国~トライド王国
34/221

05 カミッテル?

 


 夢の中で追われた時。


 思うように足が動かせないことって、

 ありませんか?


 私はよくあります。


 でも、夢の中では、

 悪者は追いついては来ないのです。



 (これは現実)



 大男に押さえ込まれた私。そして私の目の前には、私を笑って見下ろす感じの悪い色黒女。後ろ手に縛られた私は、まるで罪人のようにその女の前で頭をたれる。


「*******。***オル**? ******子供*******?」


 女は常に私を見て笑う。

 やっぱり嫌いだ。


 そして何故か、嫌いな奴に限って、目に付く以前に遭遇率も高い気がする。


 いや、やはり目に付くからこそ、他の関心が低い人たちよりも、自分自身のサーチ能力の焦点が当たってしまうのかもしれない。嫌な奴対応課のスキルアップは諸刃の剣だったのだ。


 (でも、こんな遠い異国まで来て、偶然の再会が嫌な人って、なんか悲しい…)


 そして冗談では無い、今の窮地。


 (嫌いとかの問題ではなくて、これはちょっと大袈裟すぎる。私、この人にここまでされる、何かした?)


 …………。


 ああ、あれか。


 ぷるりんが、廊下に飛び出した時に、たしかこの人突き飛ばしていたような…。


 私のせいでは無いが、今はそれどころでは無い。


 残念ながら、この場において、流暢にクレーム対応が出来るほどの異国語会話スキルは持っていないのだから。


 クレームといえぱ、我が国でも蔓延している理不尽なクレーム、なんでもかんでも訴えてやる! に関して思うところはあるのだが、これも時代の流れなのだろう。昔は売り手も買い手も、商品とお金の交換が平等だった時代もあったのかな?


 今はとにかく、何でもペコペコすることが当たり前になっていて、ちょっとストレスに感じる。


 横柄な店員は論外だが、横柄がヒドイ客も得より損をしている気がする。店側は確実にその客をブラック指定するであろうし。


 良いお客様に出会えた時は、それは確かに神様のように良い人だ……と、勝手に思ってた私。


 いつも普通にベーグルを買いに来てくれるお客様とか。


 笑顔がステキなお兄さんとか。


 店長ではなく、私オススメのイチオシを買ってくれたお姉さんとか。


 美味しかったよって言ってくれた子供とか。


 単純に、店側が故意に粗相をしなければ、何も言わず利用してくれるお客様は、皆様普通に神様でした…。


 何故こんな話をつらつらと?


 それは現実逃避したいから。


 驚いたよ。


 ドラマとかで、よくある。

 悪漢や犯人に追われた女性が、


 そこで、何故、転ぶのだ!


 そこでは転ばないだろう。わざとらプスス。

 と、心無いツッコミをドラマにしていた私。


 (はい実際ありました。大男に追われ恐怖で足が絡んで転がりました)



 カルマが、ここにきて跳ね返ってきたのだ。


 カルマ、畏るべし。



 (コスプレ参加者の人数が、心なしか減っている)


 そして先ほどから色黒女が何かを言っているが、分かる訳は無い。それよりも、中途半端に飛び込み参加した私にクレームをつけたいのは分かったから、貴女ではなくてこの会場のスタッフを呼んでほしい。


 いくら文化の違いが有るとはいえ、この拘束は、やり過ぎだと思うのだ。


 逆に文句を言いたいのは私だ。

 それは確かに、突き飛ばした事は悪かったと思う。

 しかし不審者扱いで突然の拘束もやり過ぎだよね。

 私はフロントを尋ねたかっただけなのだ。


 (あれ?)


 立食ケーキビュッフェのテーブル。その下に青いボールが落ちている。


 あれは、そう。


 この色黒女を突き飛ばし、私に濡れ衣を着せた張本人。 


 (ぷるりん発見。…でもあいつの呼び方、なんだっけオルデオール? オルビスオール? オルタナティブ……)



 忘れた。



 この国の名前は皆、長すぎるのだ。


 しかしうかつに間違えた名前を呼ぶと、とんでもない目にあわされる可能性がある。


 あいつは問題大有りのスライムだった。

 性格も優しい感じでは無かった。


 しかし、ここで会ったからには入れ替わって、色黒女にクレーム対応をして貰おう。


 (ぷるりん。…いや、オル…オルタナティブが思い浮かぶと、それ以外が霞んでいく。オル、オル……)


「オルビスウォール……」


 試しに小声で呼んでみた。

 反応が無い。


「オルビアウォール……」


 ウォール?


 これこそまさに、何かの呪文。壁? 火とか土とかで使用されるあの壁?


 青いボールは、ぶるぶる震え、跳ね出した。


 (ぴょんぴょん跳ねてるよ。違ったな。あれは怒ってるんだ。ヤバイ)


 ゼレイス・フロウ・ルイン・ヴァルヴォアールを思い出す。この国で名前を間違える事は、何が起きるか分からない。飛び回るぷるりんに気づいた周囲がざわめきだした。色黒女は私を見て震えている。


 (なんかメンドーだなぁ、おい。跳ねてないで、早く来い。元はお前が元凶だ)


 しかし、奴の呼び方が分からない。ここは万国共通の、あの魔法の言語に頼るしかない。使い慣れていない私には少し抵抗があるのだが、ここは異国。


 旅の恥はかいて捨てるものだ。



「ぷるりん! カモン!」



 カモンに付属の「ヘイ!」と、いう小粋な掛け声は、羞恥心が邪魔をして使えなかった。


 おや……?


  辺りの様子がおかしい。

 シーンと静まり返っている。



 ーーパン!



 『いっ…た、』



 え、何今の。




 私、色黒女にほっぺをパンされたの?



 

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