ある魂の自覚 **
出演
28歳男性 ガーランド入局管理局 局長
33歳男性 ガーランド入国管理局 審査管理官
26歳男性 ガーランド入国管理局入国者認定室長
31歳男性 ガーランド入国管理局 二課係長
28歳男性 ガーランド入国管理局 二課職員
以下、事務職員数名。
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ザワザワ。ザワザワ。
〈やっぱ魔石に転写してもらって良かったな〉
〈見ろよこの腕筋、足筋、腰筋、ケツ筋。ハンパネー〉
〈なのにシッポ付き〉
〈このシッポも強そうだよな、〉
ザワザワ。ガヤガヤ。
〈この鷹豹の胸筋もいいよな。なんであんなに細いんだろ。あのデカイ羽、これで支えてんだぞ?ここに鳥族の謎が全て詰まってる。好い!〉
〈この前、エスフォロスの・・・あ、えーと、飛竜とお話ししてたぞ〉
〈マジで?貴重ー!!!〉
〈見てえ!転写神官呼んで!〉
〈もう無理だし、遅いし〉
ガヤガヤ。
〈やっぱ大獅子。〉
〈いやいや、鷹豹でしょう!〉
〈おい、うちの竜たちも、置いてけぼりにすんなよ〉
〈飛竜は飛竜〉
〈あれは別種目〉
ザワザワ。ザワザワ。
スタスタスタスタ。
〈あ!隊長!〉
ザワザワ。ザワザワ。
〈隊長の分もありますよ!大獅子、鷹豹、どっちがいいですか?〉
〈・・・・〉
指し、指し。
ビシッ!〈了解です!両方、後で届けますね!〉
〈あ、そうだ、隊長、〉
ヒソッ。ボソ。サッ。ちらり。
〈これ、非売品なんですけど、〉
〈・・・・・・・・〉
のぞきっ。
〈グッはっ・・・!!!〉
〈それ、黒長鼠の腹出し転写、〉
〈尋問官殿!驚かさないで下さい!〉
〈なんだこれ、どこでこれを、〉
〈いや、あの子、いや、隊長の婚約者殿、わりと陽の当たるところで寝転がってたじゃないですか。見回りん時に、見張り台で寝てたんで、つい、〉
〈・・・・〉
〈飼おう、間違えた。買おう。俺にもくれ。いいですよね?隊長、見るだけなら〉
〈・・・・〉
ガヤガヤ、ザワザワ。
〈・・・・隊長の分も、用意しても?〉
〈・・・・ハァ、〉こくり。
〈デスよね!〉
〈当たり前じゃないか!コレは隊長のものなんだ、むしろ大獅子と鷹豹なんて、どうでも良いから。先にコレだろう?ですよね!班長!〉
〈ああ、もちろんだ〉
〈ですよね!隊長!〉
〈・・・・フゥ、〉
スタスタスタスタスタスタ。
ザワザワ、ザワザワ、ザワザワ。
ガーランド入国管理局では、突然訪れた南方共和国の有名人により、彼等の写真魔石の売買が流行っている。希望者は公報課により販売され、滅多に訪れる事のない彼等はとても人気があるのだが、中でも銀髪の少女が一番人気だという。
一部非売品の天上の巫女サマ写真は、マニアによって裏取り引きでのみ販売されるそうだ。
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23歳男性 南方共和国真存在地集落
大獅子村 副村長(他国視察中)
18歳男性 南方共和国真存在空集落 鷹豹村
青年部会エリアリーダー
(他国研修中)
29歳(自称)男性 液化球体化合物 青色
トライド下町在住 黒猫 雌
トライド下町在住 猫、数匹
トライド住民多数
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ーーーある猫たちの視点。
ひゅーーーー、ボトッ。ビシャ!
キャーーーー!
ワーワー、ワーワー。
(・・・・)
仲間の黒猫が久しぶりに帰って来た。
彼女は宝物を頭に乗せて、誇らしげに街を歩き回る。
それを猫たちは羨望の眼差しで見ていた。
だがしかし、その日、猫たちの穏やかな生活を脅かす存在も、街に入って来たのだった。
ひゅーーーー、ボトッグシャ!
キャーーーー!
「オルディオールだわ!」
「オルディオールの呪いよ!!」
ザワザワ、ザワザワ。
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ぽかぽか、ぽかぽか、スヤスヤ、スヤスヤ。
〈また寝てるの-?〉
ちらり。
〈・・・・〉
〈俺この界隈三週目。取りあえず、ここの空は俺のもの!〉
ビシッ!
〈ってか、敵、いないけどねー、〉
〈うるせえ。話しかけんじゃねえ。クソ鳥〉
〈食べかすあげたら、喜んで大騒ぎしてたよ。無人達。ヴェクトもなんか無人にあげたら?〉
〈ほら、〉
ビクッ!
〈さっきから、小さい猫たち見てるよ。あれ、あげたら?〉
バッ!!
サーーーーーッ!!!!
〈逃げた。あーあー、〉
〈・・・・〉
スヤスヤ、グーグー。
〈ふっ、メイに〔お願い〕されてたもんねぇー、守ってるんだ?〉
プッ。
「人、食べる、ヤメテェー、お願いします。ヤメテェー、ぺこり。」、〈だもんねえ。ヴェクト驚いてたもんねー。可愛かったのかな?あの子、小っこいからねー、〉
〈・・・・〉
グーグー。スヤスヤ。ぽかぽか。
〈ちっ、マジで寝たのか?つまんねー。ま、いっか。また無人に食べかすこぼしてあげよ!〉
バサッ!バサッバサッバサッバサッ・・・。
ぽかぽか、スヤスヤ。
(・・・・)
陽当たりが最高の屋根の上。
猫たちのたまり場であるそこに、恐怖の存在が舞い降りて占拠した。
身の毛のよだつ彼等が去るまで、猫たちは皆、隠れて様子を窺い続ける。
そして空には、見たこともない恐ろしい大きな鳥が、ぐるぐると空を飛び続け、獣の血を振りまいては地上に落下させるのだ。
猫たちは、ただ隠れてそれを見ていた。
ひゅーーーー、ボトッ、グシャ。
ギャーーーーー!
ギャーーーーー!
「オルディオールの所為だ!」
「呪われる!」
「助けて、神様!」
〈ふふ、喜んでる、喜んでる。特別にこれも〉
ひゅーーーー、グシャ。ベシャッ!
ビクビク・・・。
「生きてるぞ!」
「イヤァ!」
「怖いよぉ!」
「駄目だ、もう、限界だ、」
「オルディオールめ・・・」
ワーワー、ワーワー。
〈うふふ。それ、美味しいよ〉
この後、屋根上の恐怖の存在は無事いなくなった。それと同時に仲間の黒猫も旅立ったのだが、猫たちの縄張りである住み心地の良い街は、人々の大騒ぎによりしばらく落ち着く事がなかった。




