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ぷるりんと異世界旅行  作者: wawa
双頭の王~ファルド帝国
136/221

08 魂乞 08


 想像よりも早く、近くで騒動の声が響きアールワールは遠くを見た。


 「表は五人で足りましたか?」


 「優秀な騎士殿が三人も付いている。なんとかするだろう」


 問い掛けに気怠く答えたアールワールの周辺は、慌ただしく部下の者達が走り去る。巫女と呼ばれる一行を追った破落戸達に、薄汚れた白衣の医師が声を張った。


 「おい!ブスガキ、傷つけたら、お前達の麻酔は無しにするからなー!」


 華やかな顔の男は、破落戸達に医者として物騒な脅しをかける。それに呆れたアールワールは、薬臭いイストへ溜め息を吐いた。 


 「手を出すな、護れとは、ずいぶんお優しいですね」


 立ち去る少女達を見送った町医者は、疲れた顔の貴族の青年を怪訝な顔で振り返る。そして首を傾げると破落戸の首領を嫌な笑顔で見つめた。


 「まあな。さっきも言ったけど、特にブスガキ傷つけたら、チンピラ共の今後の治療は全員麻酔は無しだって、通達しとけよ。あ、もちろんお前を筆頭にな」


 「・・・・」


 寂れたトライドの街中から、騒音と叫び声が上がり始める。禍のオルディオールがノイス家に居ることを知っていた者達は、破落戸の巣窟から出た一行を襲い始めた。誰とも分からず噂の巫女の一行に、黒蛇オウローダの縁者か本人が居ると騒ぎ出し、それを追いかけ憂さを晴らす。加熱した人々からは殺意の怒号が飛び交っていた。


 「落人オルってのはなー、一回、死んじまったようなもんなんだよ」


 「は?」


 イストからの脈絡の無い言葉を怪訝と見返すと、逆に侮蔑の表情で返される。


 「想像してみろよ。お前。未開の南方大陸のど真ん中に、突然一人で置き去りにされて、見たこともねー恐怖伝説の獣人のオスにケツ狙われて、メスにタマ食い千切られたら、悲劇だろ?」


 「・・・・・・・・ええ、まあ。」


 「それとおんなじ様なもんなんだよ。落人オルって奴は」


 腑に落ちない顔のアールワールだが、我が身に想像出来た悲劇に疲労が増す。出来の悪い生徒を見る目で頷くイストは、落人オルと呼ばれる少女が去った後を再び眺めた。


 「昔、スズ爺さんがさ、患者が帰った診療所で、嘔吐えづいてたんだよ」


 少女の去った遠くを眺めたまま、イストはぽつりと話し始めた。


 「俺、子供ん頃な。爺さん菓子でも患者から貰って、盗み食いでもしたかと思って脅かしたんだ。後ろから。したらよ、隠れてこっそり泣いてたんだ」


 「・・・・」


 「男の涙はみっともねーって、笑って誤魔化しやがったが、空からここに落とされる前、大好きな女と家族になれて、ガキができたばっかりだったってさ」


 晴れ渡る空には雲が一つ浮かんでいる。古びた街並みから目を逸らし、イストは流れる雲を見た。


 「その家族には、もう忘れられただろうなーって、笑ってよ。逆に覚えていられた方が辛いと言って泣いてたよ」


 「・・・・」


 「よく考えなくてもよ、よっぽどの社会不適合者の犯罪者とか、世に飽き飽きの世捨て人でも無い限り、フツーに生きてて理由もなく知らない土地に連れられりゃー、やってられねーよな、」


 大事な人を置き去りに、理由もなく理不尽に離される。


 「それ聞いた後に思ったけど。爺さん、こころが引き裂かれるような嗚咽だったよ」


 声を殺して揺れた老人の肩、動かない足、知らない土地で医者として働き、分からない言葉を必至に覚えた落人オル


 「あのブスガキも大人しそーな性格してるからな。もう既に一回、心がズタズタになってるだろーから、身体はバラバラにしてやるなよ」


 無言で話を聞いていたアールワールは、肩を叩いて立ち去る医者を見ていたが、汚れた白衣は忘れていたと直ぐに振り返る。


 「ファルドにやられてボロボロの、俺達だからこそ、守ってやったらスゲー良くないか?」


 片目を瞑る可愛い仕草で捨て台詞を吐いた。女であれば悪くない。しかし、中身が屈折したイストは、結果によっては本当に麻酔無しで治療を行うと知っている破落戸の首領は、速やかに手下を呼び寄せ巫女の少女の護りを強化させる指示を出した。





***


ーーートライド王国、南東裏街道。



 「シロートは、限度が分かんねえから怖えー、」


 道を走り先導する見た目は軽そうな青年は、次々に湧き出る住民を避け、飛び交う投石を上衣で払い落とす。際限なく飛び交う物と野次に、剣を持たない人々を素手で払い、襲いかかる街の住民を蹴り倒し遠ざけるが、限度があった。


 「二手に分かれよう、」


 アラフィアの言葉にエスフォロスが頷き、メイの真横に位置するエルヴィーへ声を掛ける。


 「おい!アピーとお前、エルヴィー、俺と次の通りを左に入るぞ」

 「やだよ。僕はミギノと行く」

 「従わなければ、ここで地の錠を使うぞ」


 アラフィアの低い声に、エルヴィーは不服にもそれに従う。ここで地べたを這い蹲れば面倒な事になる事は間違いない。


 「行け!」


 群衆の隙間を潜り抜け、アピーを連れたエスフォロスとエルヴィーは、狭い路地裏を走り抜ける。二手に分かれた禍の目標に、人々の追い掛ける足が戸惑いに遅くなり、アラフィア達は更に速度を上げた。だが、道行く先に怨嗟を纏う人々が、次から次に現れる。


 「禍の元!」

 「何もかも、お前の所為だ!」

 「呪われし者!オルディオール!!」


 

 ーーーヒュッ!


 「っ!」


 無数の石の一つが、黒髪の少女のこめかみへとぶつかった。更に続く投石からトラーが少女の身を被う。剣の鞘で弾けない大きな石は跳ね返り、それは庇う神官騎士の背を強打した。


 「大丈夫か?」


 身を庇われたまま走る少女は、自分まで伝わった振動に守護者の騎士を仰ぎ見る。淡々と頷くトラーは表情を一切変えずに、少女の腰を抱えると全力で走り出した。


 差が広がり怨嗟と怒号が遠くなる。先を走る案内の破落戸は、更に先を指さすと「そこから先は王領地だ!奴らは多分来ねー!」と立ち止まり、追っ手を引き付けると言って引き返した。


 段々と喧騒が遠離る。暫く走り続けると、見たことのある教会の屋根が古びた塀から見え始めた。


 〈なんとか着いたか、〉


 漏れ出た安堵に息を吐く。満身創痍、アラフィア、トラー、メイ、スアハ、それぞれが破れ乱れた外套を払ったり整え終わった頃、礼拝に訪れた信者が不審に見つめる中に一人の少女が現れた。


 「王女様、」


 漏れ出たメイを頭を振って遠ざけたオルディオールは、笑顔で出迎えたラーナにトライド国王の所在を問う。しかし王女は微笑むだけで答えずに教会の中を促した。


 「どうぞ、こちらです」


 背はあまり高くない。今日は農作業に従事していないようで、王女の全身は汚れてはいなく王女らしくドレスを纏っていた。石畳の教会。内部は快晴の外とは違い薄暗い。石造りの祭壇に向かい歩く王女に黒髪の少女達は続く。真新しい天教院エル・シン・オールの紋章が組み込まれた石畳、その真上の天井硝子から光が射して小さな少女はそれを全身に浴びた。


 三段ほど上にある祭壇で止まるラーナ王女は振り返り、光を浴びる少女を見つめる。そして恵まれない人々に施しを与える王女は、改めて少女の中身の者に挨拶をした。


 「ようこそお越し下さいました。オルディオール様」


 王女の他には誰もいない。天教院エル・シン・オールの神官も侍女も警護の影も見当たらない事に、アラフィアを始め不審に周囲を見ていたがオルディオールは慎重にラーナ王女を見上げた。


 「ラーナ王女様、我々はトライド国王をお訪ねしたのだが」


 「ガーランド竜騎士様、それには及びません。父王はここより離れた畑に朝から夕暮れまでいるでしょう。あなた達をお呼びしたのは私なのです」 


 訝しむアラフィアに、オルディオールは王女の真意を測りかね微笑む表情を探っていると、ラーナはトライド王族を語り出した。


 「父王を始め、私の周囲は国に興味が無いの。上の姉達は恥知らずにも賑やかなファルド帝国に嫁ぎたがったり、ドレスが古いからって王城から出て来ない方もいるわ。お母様は既に亡くなっているから、それぞれ他の家の者に育てられたのが影響したのね。私はノイス家の者に育てられたの。だからオルディオール様の事はよく知ってるわ」


 段差のある祭壇、その上から見下ろした王女は喜色を浮かべた。


 「まさか、英雄オルディオール様に、形を変えて出会えるとは思わなかった。これを僥倖と呼べるのか、悩ましいところではありますね。神に感謝いたします」


 「・・・・」


 「隠さなくても大丈夫。私は全て知ってるの。天上エ・ローハ巫女様ミスメアリのその少女の身体を使っていることもね」 


 華美な衣装ではない。王女としては質素な作りのドレスは、貴族の普段着のようだ。化粧もしていない王女の素顔は凛としてオルディオールと呼んだ黒髪の少女を眺めていたが、ふと優しい笑顔になった。


 「私はこの国の代表なのよ。彼等の思いを遂げるために、毎日ここに来て祈っていたの」


 「申し訳ないがラーナ王女、我々を呼んだ理由をお聞かせ頂けないか?」


 未だ逃げ続けているエスフォロス達との合流を考えたアラフィアは、まだ怨嗟を叫ぶ群衆を躱して、仲間と落ち合う場所に向かう道のりを考える。王女の気まぐれに長々と付き合う訳にもいかないのだ。教会シンシャーの戸口では、スアハを侵入者の警戒のために見張らせている。振り返り見た少年は、未だ遠くを見つめて動かないままだ。


 「では、本題に入りましょう。この国の厄災、黒蛇オウローダと呼ばれて、あなたと親しかった者の事は気になりませんか?」

 

 「!?」


 顔色の変わった少女を頷き見つめたラーナは、陽の光が射し込む天井硝子窓を仰ぎ見た。


 「特に親しくしていた嘗ての騎士団長と、彼の部下は厄災で失われた。更にファルド帝国で遺体を弄ばれた事はご存じでしょう。もう一人、気になる方はいませんか?」


 「・・・・」


 慎重に王女を見つめる大きな黒目は、彼女の表情を探ろうと訝しむ。ラーナは王族としての矜持か、下々の者に表情は変わらない笑顔で他国の騎士と黒髪の異国の少女を見下ろした。


 「ミルリー・プラーム。黒蛇オウローダオルディオールの情婦と蔑まされた貴族の方」


 「!」


 真横の少女の細い首、その咽が苦しげに嚥下するのをアラフィアは見た。だが言葉は発さずに、祭壇の王女を見つめ続けている。


 「彼女の末路をお伝えします。英雄殿」


 末路、その一言で予想はついたが、オルディオールにはその詳細を聞かなければならない理由がある。愛した少女の末路を、身に刻むために。


 「大魔法によるグルディ・オーサ領の悲劇、その後のこの国の行く末は、今の現状で分かるでしょう。ミルリー・プラームも、その類に漏れませんでした」


 トライド王国の男達を失った女性達、その多くはファルド帝国貴族や商人の娼婦として買われていった。


 「様々な者に弄ばれて、子も産まず、生せない身体となり病で亡くなったそうです」


 「・・・・」


 「彼女のお墓はこの教会シンシャーの裏手にありましたが、私がここで祈るようになった頃、国民の為に移動しました」


 国民の為に墓を移動した。その言葉にアラフィアとトラーは内心首を傾げたが、王女は微笑みオルディオールと名乗る少女を慈愛の瞳で見つめたままだ。


 「是非、彼女のお墓参りをして頂けませんか?」


 「・・・もちろんだ」


 王女の口から語られた、悪い予想通りの末路を聞いたオルディオールは、想像以上に心が震えた事を隠し通す。


 「ならば案内をお願いする」、

 〈スアハはそこで待っててくれ!〉


 少年に声を掛けたアラフィアに魚族の耳鰭はピッと上がったが、ラーナ王女がそれは大丈夫だと遮った。


 「移動はしないのです」


 怪訝に王女を振り返ったアラフィアは、優しげな微笑みが歪み嘲るのを見た。土が洗い落とされた奇麗な指は床を指す。それは黒髪の少女の真下、光が落ちる天教院エル・シン・オールの葉の紋章を模った祭壇の下で止まる。



 「そこです」



 陽は射すが、まだ冷気漂う静まり返った教会シンシャー。その中に冷たいラーナの声は落ちた。


 「・・・・」


 祭壇下の紋章、円く縁取られたそれに気付いたアラフィアとトラーは、中央に残る少女を残して飛び下がった。指された先を見下ろした少女は、自分の踏んだ床を見下ろす。


 「言ったでしょう?私は国民の代表として、毎日ここで祈りを捧げているの。そこで気が付きました。皆が必ず通り踏む、その下に黒蛇オウローダの情婦を埋めれば、彼等の気が晴れるのではないかって、」


 祭壇の下、神樹ハハキに祈りを捧げる為に必ず人々はそこに立ち止まる。厄災に関わった哀れな女の亡骸を、人々は必ず足で踏むことが出来る。それが国民の為だと、そう、ラーナ王女は言った。


 [なんてことを、]


 神聖な教会シンシャーでの、死者への冒涜にトラーが驚愕と恐れを漏らす。アラフィアは、話に聞くオルディオールの嘗ての思い人と、その上に立ち尽くす少女を見たまま動けないでいた。


 「・・・・」


 幽鬼の様に立ち竦み、呆然と床を見下ろすオルディオールと名乗った少女を、ラーナは達成感と共に見下ろした。


 「これが神のご意思。まさか、落人オルとなって戻ったあなたに、ミルリー・プラームのお墓を見てもらえるとは、思ってもいなかった。私の国民に対する思いが、天へ伝わったのね」


 勝利者の宣言を祭壇に唱え、印を組んで祈りを捧げた王女は、再び力無く立ち竦む少女を振り返る。そしてラーナはオルディオールが自分に敗者の泣き言を叫びながら、情婦の亡骸を移動してくれと懇願するのを待っていた。


 「・・・・」


 「精霊殿、」


 アラフィアの呼びかけにも反応しない、小さな少女は少し揺らぎ、そして祭壇上の王女を前に膝をつく。折れた膝に屈服を感じたアラフィアとトラーは息を飲み、ラーナ王女は勝利の確信に微笑んだ。


 しかし光射す円の中央を探した少女は、手でその部分を撫でさする。そして微笑みその部分に口吻た。


 〈・・・〉


 這い蹲り床に落とした口吻に、アラフィアは見入りトラーは射し込む光に神々しさを感じる。冷気に満ちた石造りの教会シンシャーの中に、暖かい光が流れた気がした。


 背筋を伸ばして立ち上がる黒髪の少女は、それを呆然と眺めるだけの王女を見上げる。



 「感謝する」



 言って微笑んだ黒髪の少女に、ラーナは唇を噛み締めた。頷きアラフィアを促したオルディオールは、小さな身を翻して教会シンシャーの扉へ向かう。復讐すべき相手を引き留めることも声を掛ける事も出来なかったラーナは、口吻られた光射す床を見て、それから逃げるように裏口に向かい足早に去って行った。



 〈スアハ、奴らは来たか?〉


 アラフィアの問いに振り返った碧い目は、首を横に否定する。


 「少し、周囲の確認をしてきます」


 告げて去ったトラーを見送り、教会シンシャーの入り口で待つ事になったアラフィアは、先程の出来事に少女に話し掛けられないでいた。その中、それを全て黙して見ていたメイは、内心で先ほどの心の鼓動を考えている。


 (ぷるりん、青い玉になると、心は傷付かないのだろうか。さっきのラーナさんの話に、胸がぎゅってなったのは、聞いてた私の心だったのかな・・・、それともぷるりんが悲しかったのかな・・・?)


 〈何、あいつ!〉


 ウウウウっと、スアハの声に振り向いた二人は、教会の影に子供が数人居るのを発見した。もじもじとこちらを睨む少年少女は、薄汚れた衣服を身に纏う。


 子供であれ、オルディオールへの怨嗟を教え込まれた者達を警戒したアラフィアはメイの前に進み出たが、それを本人が躱して少女は横から飛び出した。


 「あれ、『たこ焼きの時の子供』食べ物、ありがとうの子供ですね」


 「あ?ああ、下町の行列に居た子供か?」


 アラフィアもそれに気付いて、何もしてこない子供達に警戒を解く。近寄るメイに逃げずにおどおどと見ていただけの子供達は、躓くように自ら前に出て来た。押し出された一人の少年は、顔を赤くしたり青くしたりもじもじとしていたが、意を決してメイに声を張る。


 「み、みすめありに、クラウもらった皆はね、近所の人はヤメロって言ってたんだ、」


 『?』


 「俺の母ちゃんも止めてたよ、でもね、」

 「みんな、こわいんだもん」

 「やめてって、言ったらおこるんだもん」


 涙目になった少年達に、群衆から追われて石を投げつけられた事だと知る。既にオルディオールではなく、子供達を見つめたメイは彼等の頭をぽんぽんと労いに軽く叩いた。


 『わかるわかる。さっきの追いかけっこは、野球のアウェー戦とは比べものにならない恐怖を感じたよ。怒りの群衆の集いは外国のニュースでしか見たことなかったけど、怖かったよね』


 巫女と呼ばれる少女の異国語に子供達は困惑していたが、少女の背後から見つめる碧い瞳に、恐怖を感じて後退る。


 『そうだ!』


 まだ咲き始めの花壇を見て、立ち上がったメイはスアハと子供達を振り返った。


 『ピカン、ピカン』、

 「これが、カミノゴイシ、ピカン?」


 ラーナ王女の真似をしたのだが、少し離れたアラフィアには気付かれず、照れ笑いにメイは花壇にしゃがみ込む。


 『我が国で、これを無断で行えば、罪と問われる事になるだろう。だが、ここは異世界、私は非情なる軍師ピカン。・・・お花さん、ごめんなさい』


 〈・・・・メイ?〉

 「・・・何してるの?」


 花を手折ったメイは、片方の眉を上げてにやりと笑い振り返った。





 「行くぞ!」


 トラーが戻り、エスフォロス達との合流地点までの道のりを確認し終わったアラフィアは、教会シンシャーの入り口で子供達と遊んでいたメイを呼びに来た。


 〈ヴォ、なんだ?〉


 驚いたアラフィアの背後から覗き込んだトラーも、教会シンシャーの内部を見て目を見張る。


 [これは・・・、]


 祭壇の下、光射す天教院エル・シン・オールの紋章は、今は花で被われる。その紋章に続く入り口への真ん中の一筋は、花の道が続いていた。



 『我が国では、神社の真ん中は、神様の通る道なのです』



 子供達と花を並べて笑ったメイは、花で飾られたオルディオールの思い人に両手を合わせて目を閉じた。それを見た、少年少女達とスアハも同じ事をする。


 「これは神様の道。踏む、駄目です。皆に教えてあげてください」、

 『拡散希望、呪いのお手紙の様に皆に拡散希望』、

 「巫女シスト命令、天上エーローハ巫女シストの願いです」


 メイは偉そうに子供達に頷くと、少年少女達はそれにしっかりと頷き返した。



 (・・・・)



 オルディオールは少女の中、花に囲まれた光射す紋章を見つめる。笑う子供達に見送られ、メイ達は教会シンシャーを後にした。




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