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ぷるりんと異世界旅行  作者: wawa
双頭の王~ファルド帝国
134/221

06 吐露 06


 トライド王国の貧困さとは、かけ離れた高級な造りの家屋。繊細な織物の長椅子に、磨き上げられ黒光りする木の卓。広い客室の中央に配置されたその高級な応接卓を取り囲み、黒髪の少女と女顔の医者が中心に話が進む中、廃棄ルデアと呼ばれた男は、茫洋とした表情でそれを眺めていた。


 男の薄い青の瞳は、手を伸ばせば捉えられる黒髪を見つめている。そして、オルディオールと名乗り話す少女の言葉の中に、男の求める言葉を待ち続けていたが、一向にその気配は無い。


 「・・・・」


 自我が乏しく、頼りなく自分に縋り声を掛ける少女を、男は待ち続けていた。


 


**




 (オルビア・オール?どこかで聞いたことのある名前。と、思ったら、ほっぺパンの色黒女の事か?)


 耳を大きく傾ける。自分に暴漢を嗾けた、嫌な女を忘れるはずの無いメイは、ますます慎重にそれに聞き入る。


 (危険回避。そのためには、色黒パン女の所在情報は聞いておいても損は無い。奴との遭遇は過去に二度。我が祖国の疑心暗鬼統計セオリーによれば、三度目が訪れる可能性もなくはない。二度ある事は三度ある。この疑心注意喚起に関しては、既に黒豹が国外越境ストーカーという実績を私に披露しているのだから)


 一方、少女に取り憑いたままのオルディオールは、正面に座るイストの言葉に、考えなくは無かった想定に沈黙していた。


 「オルヴィア・オーラ、クレイオル・オーラ、嘗ての英雄様を彷彿させるが、エールダー公爵家は、彼等との血の繋がりを一切否定している。もちろん、英雄オルディオール殿の関与も現当主は否定していたが、おい。どうなんだ?黒蛇オウローダ


 エールダー公爵現当主、オルディオールに真に血の繋がりのある、おそらくは弟の子孫、もしくは弟かもしれない。それを思案していると、不意に意外な人物が会話に参加した。


 「オルヴィアさんと、クレイオルさんか、そういえば〔オル〕って名前の付くものは、皆で羨ましがってたんだよね」


 何の話だと、表情の読めないエルヴィーに室内の目線は怪訝と集まる。日頃は必要以外、黒髪の少女にしか積極的に話し掛けないエルヴィーは、更に脈絡の無い話をし始めた。


 「エミーは〔オル〕って付くものは、よく気に掛けているねって、玉狩ルデアりの中では有名だったんだ。だから羨ましかった。あ、でも僕は今は羨ましくないよ」


 にこりと少女を見下ろしたエルヴィーに、見返す黒のつり目は不審を表している。

 

 「・・・話の腰を折らないでくれないか?」


 当初から敵として認識しているオルディオールは、見上げた先に素気なく言うと再びイストに向き合うが、それをエルヴィーは更に遮った。


 「大聖堂院カ・ラビ・オールに関する詳しくは話せないけど、それ以外の大丈夫な事は話せるよ。ミギノを最初に見つけたのは僕なんだけど。君たちこそ、勝手にミギノを危険に巻き込まないでくれる?」


 意外な言葉に瞠目したのは、オルディオールだけでは無かった。アラフィアもエスフォロスも、寡黙な印象の玉狩ルデアりに目を見開く。


 「犯罪者は黙ってろ」


 更に突き放す黒髪の少女に、イストも玉狩ルデアりの情報は貴重だとその間に入ろうとするが、それより先にエルヴィーは顔に怒りを表して、少女に居座る者を睨み付けた。


 「じゃあ、僕が犯罪者として地の錠を嵌めなきゃならないなら、君こそ嵌めるべきだよね?オルディオール。君はトライドでは犯罪者よりも悪人だよね?あ、もちろん嵌めるのはルル本体だから」


 「?」


 初めてのエルヴィーからの名指しに、少女の姿で振り返ったオルディオールは自分を見下ろす冷たい薄い青の瞳と対峙した。


 「オルディオール・ランダ・エールダー公爵。数多くあるルルの中で、まさか君がミギノに纏わり付くなんて・・・最悪だよ。僕は君を知ってる。これ以上、大切な者を君に奪われたくないんだ。だから、この子から離れてくれないかな?」


 明確な敵意を表した。今までの様に茫洋とつかみ所が無い訳ではなく、瞳は嫌悪を表しオルディオールを見据える。それを見上げた少女は同じ嫌悪の表情で見返した。


 「自分の、名前は分かると言っていたな。俺の知り合いと言うのなら、名乗ってみろ」


 「筋合いは無いよね。だけど僕はトライド王国国民だ。彼等と君に対する気持ちも同じだよ。黒蛇オウローダ


 「・・・・」


 気のない話し方でも、優しげな話し方でも無い。エルヴィーは見下ろすオルディオールに低い声で侮蔑と嫌悪を吐き捨てる。それを見守る者達の中、同じトライドの者は戦争の犠牲者とされる男を改めて見つめた。


 「ならば貴方は、数字持デルドバルちと、廃棄ルデアの違いを理解し説明出来るか?」


 慎重なイストの言葉に、それなら大丈夫と言ったエルヴィーは、大聖堂院カ・ラビ・オールの禁域に触れない答えに頷く。


 「僕たちは魔素アルケウスがとても少ないんだ。それを魔戦士デルドバルは補充して貰えるけど、玉狩ルデアりの僕たちは貰えない。だから生きてる事を理解するために、お腹は凄く空くし眠いし、それに、あの、まあ、女性と一緒に居たくなるんだって。魔戦士デルドバルは、魔素アルケウスを貰えるからそれが酷くないみたい」

 

 オルディオールは睨めるが、中身の少女は睨めない。そして彼女に聞かせたくない内容を濁したエルヴィーは、尋ねたイストだけを見た。


 「人としての三大欲求か、それを魔素アルケウスで補って制御している。だが、何を基準に廃棄ルデアに分かれるかは言えないか?」


 エルヴィーは少し考えると、多分大丈夫と頷いた。


 「戦うと、身体が「完全に、痛みがあるか、無いかだろ?それはもう分かっているぞ」


 横やりと生意気に睨み上げる黒目を見下ろしたが、愛しい少女の顔に免じてエルヴィーはそれを黙殺する。


 「魔戦士デルドバルは優秀で最後まで戦えるけど、廃棄ルデアは弱いから、痛みに耐えられなくて使えないんだって、エミーは言ってるみたい」


 言葉を変えたが同じ内容だ。それにオルディオールは鼻で嘲りを笑ったが、イストは今までの軽口を封じてエルヴィーに頷いた。オルディオールの憶測ではない。エルヴィーは当事者としてそれを認めたのだ。イストは大聖堂院カ・ラビ・オールの情報収集に新たな質問を考えていると、目の前の二人は更にいがみ合い始めた。


 「本当は、ミギノが夜な夜な離さないで、君を大切にしてたから穏便に別れさせたかったんだけど、」

 「お前、海に放り投げたよな?」

 「だって、しつこいんだもん」

 「お前がな!」


 幼稚染みてきた内容に、アラフィアが無駄な争いを止めようとしたが、エルヴィーはオルディオールだけでなくガーランド竜騎士のアラフィアにも目を眇めて語気を強めた。



 「ミギノが望んで君を捨てない。ミギノが行きたくてファルド帝国に行こうとしてるから、まだ黙ってたんだけど。大聖堂院カ・ラビ・オールのある、あの国に行くのは良くない」



 「・・・・」


 「聞いてるよねミギノ。大聖堂院カ・ラビ・オールがミギノを捕まえたら、絶対、痛いことされるよ」


 (!!)


 「オルディオールの過去の妄執に、付き合わなくてもいいんだよ。落人オル、天上人の巫女、そんなこと君にはどうでもいいでしょう?大陸の端っこまで行けば、平和に二人で暮らせるよ」


 (・・・・)


 ーーー絶対、痛いことされるよ。 


 この一言は重い。痛みという言葉にメイは敏感に反応したが、自分を心配し思いやるエルヴィーへ、歯がゆくも直ぐに言葉を返す事が出来ない。


 (ぷるりんは今、エルビーに対して大人気ない対立心を剥き出しにしている。冷静なぷるりんではない。ここで私がしゃしゃり出ては、裸踊りに拍車を掛けてしまう。ごめんね、エルビー。私は非情な軍師なの。国境無きボランティア、その素晴らしき代表のエルビーに応えずに、私は自分の保身に走るのです。)


 慎重に慎重を重ねて身を潜めるメイだが、オルディオールを排除しない少女に焦れたエルヴィーは、メイの反応を求めて語り始めた。


 「ミギノは言葉は拙いし、厠の使い方だって最近まで分からなかったんだよ?毎晩泣きながらルルを握って寝てた子がファルドなんかに入ったら、すぐに攫われちゃうよ?あそこはこの大陸で一番人の多い街なんだよ?破落戸達も騎士団は放置だよ?」


 「・・・・・・・・」


 その、破落戸達の巣窟での忠告だが、言われたアールワールは紳士としてそれを聞き流した。


 (ん?今の私の初期説明?親切が通り過ぎて、悪口へと乗り換えされてしまった気がするが、あれ?)


 聞き逃さずに耳鰭を大きく動かし碧い目を輝かせたのは、今まで退屈だったスアハ。そしてメイよりもお姉さん意識の強いアピーである。アピーは顔をきりりと引き締め、自分より下の子を見つめる瞳でメイを見た。


 「ステルやメアーの所為で言葉づかいが悪くなってたけど、オルディオールの所為もあるよね。女の子が使わない言葉は駄目だよ。あの獣人の子供たちだって、奇麗な言葉を話すでしょう?オルディオールに話をさせるのは駄目だよ」


 指をさされたスアハとアピーの顔が、更にきりりと引き締まる。たまに発するメイの良くない言葉を気にしていたアピーは、同意にこくりと頷いた。


 「余計なお世話だ」

 「君には言ってないんだよ。オルディオール、ミギノが優しいから、君を追い出さないからって、あまり調子に乗らないことだね。いつでもミギノは、君を追い出せるんだから」


 「・・・・」

 (・・・・)


 「僕も二度、この国で勝手に身体が動いた事がある。だけどね、大丈夫だよ。それだけだったからね。僕たちはルルが苦手だから触れないけど、君は大丈夫でしょう?ぺって追い出して、遠くに捨てて、僕と行こう?ファルド帝国じゃない国に。ね、ミギノ」


 (ぺって、エルビー。ぷるりんは、ガムではないんだよ。・・・いや、あの、その、だって、捨てるっていったってさ、)


 「おい、二度、勝手に動いたというのはなんだ?」


 雄弁に語り始めた玉狩ルデアりを、情報収集に見守っていたイストだが、気になる言葉に割り込んだ。それをエルヴィーはちらりと見たが、無視して未だ表れないメイに焦れる。つり目気味の黒目は、エルヴィーを敵として不満げに睨み付けたままだ。


 「それともオルディオールを、出せない理由があるの?脅されてるの?大丈夫だよ。身体の主は君なんだよ。強い意思で追い出して」


 (いや、えーと。なんて説明すればいいのかな?エルビーの優しさが、ぷるりんの横柄さと噛み合わずに誤解を生んでいる)


 〔帰る〕という最大の目的の為に、オルディオールとメイは共に先に進んでいる。


 しかし青い玉と自分メイの目的を、指摘された拙い言葉で上手く説明出来るかどうかは分からない。更に問題を発生させないために、簡潔に一言で誤解を解く事が必要だ。身体を使用させている上手い理由を考えていたメイだが、オルディオールの怒りの裸踊りを警戒しつつ、一つの言葉が閃いた。


 (全てをくるっと丸める魔法の言葉があった。これ以上のぷるりん氏とエルビー氏の、終わりの見えない言い争いは、周囲のテンションを下げるだけなのである。興味津々で目がらんらんなのは、医師オカマだけである)


 壁際と窓際にも目を輝かせて注目している子供たちは居るが、メイの視界には入らない。そして、いつになく不穏な青い玉を警戒しているメイはとても慎重だった。


**


 (効果は先ほど実証済み。だがタイミングを見計らう。この一手に全てが掛かっている)


 ヴァーチャルリアリティの観客ではなく、キャストとしての飛び入り参加。不自然ではなく、自然に溶け込み存在感を示すプロフェッショナルなエキストラの技術。 

 

 (不自然が見抜かれれば即退場。少し話しただけで、ぷるりんに虫の様にパンされて、咳払いと共に相殺される私。しかし、この無益な喧嘩の仲裁の為に、敢えて危険なミッションに挑もう。だが裸踊りの回避のためには、空気の如く透明かつ重要なポジションを、死守しなければならない)


 タッチ・アンド・ゴー。


 (カラスが通行人の頭を蹴って飛び去るが如く、速やかにその場を脱出するのだ)

  

**


 オルディオールの邪魔をせず言葉は最短で、そしてその一言でエルヴィーの誤解を解こうとしているメイは、慎重に機会を窺う。


 「お前の感想は終わったか?大聖堂院カ・ラビ・オールの関係者ではあるが、真相を話せないなら邪魔なだけだな?廃棄物ルデア。この会議に参加したいのならば、何処の誰だかまず名乗れ」


 「オルディオール、君の過去にミギノを巻き込まないでよ。それに僕の名前は関係ない。エルヴィーと呼ばれて、僕は今を生きてるんだ。オルディオールと名乗る君は過去の妄執だ。君こそ現在いまに必要無い」


 「・・・・」


 繰り返される平行線の言い合い。オルディオール自身、珍しく感情的になりこの場を治めることが出来ないまま、互いに睨み合っていた。 

 

 「ミギノ、出ておいで。怖くないよ。何も分からない君は、オルディオールに欺されてるんだ。別にこんな奴、追い出したって、僕がいるよ」


 〈スアハも!スアハも!〉  


 少し離れた外野から、少年の合いの手が聞こえる。周囲の困惑をひしひしと気配で察し、オルディオールの沈黙にメイは意を決した。


 ーー(今だ!) 



 「私は、グランふふーんさ、してまブッ!!」



 タイミングを見計らい、ここぞとばかりにメイは出た。だが自らの非力な手は素早く顔を掴む。


 (タコくち、ほっぺが痛い、自分が自分に、アイアンくろー・・・)


 だが両頬を力強く挟み掴んでいる為に、不様な顔に鼻笑いすら出来ない。哀れな寄せ顔で目が合ったエルヴィーは、愕然と少女を見下ろしていた。

 


 「オルディオール、まさか、本当にミギノと誓約グランデルーサしたの?僕、君が何を言っているのかわからなかったし、少し具合が悪くてところどころ聞こえなかったんだけど、南方でのあれは、本当の話だったの?」



 「・・・お前には関係ない。」


 その言葉に呼応した周囲は、少女では無くオルディオールを見た。トライドのイストとアールワールは驚愕に目を見開き、アラフィアとエスフォロスは困惑に顔を見合わせる。壁際に存在を消して少女を見守っていたトラーは、誓約グランデルーサ内容を考えて少し首を傾げた。


 〈え?、誓約グランデルーサは、人と人では危険だというが、精霊殿だから大丈夫なんだろ?、それになんか、婚姻とか、大切な約束を強調するもんだって、天教院エル・シン・オールの神官がやり方を説明してたぞ〉

 〈いやでも、この場合は婚姻関係ないだろ?しかも精霊って言ったって、自然精霊じゃないだろう?中身はオルディオールという人の場合は人と人になるんじゃないのか?、俺も危険性ってのはよくわからないが、隊長とだって・・・〉


 [・・・・誓約グランデルーサは、神聖なものです。お互いの同意無くては出来ません。それに、巫女殿は未婚なのです。今のは何かの勘違いでは?]

 〈未婚?、やっぱ婚姻が関係するのか?ややこしくなってきたな。じゃあ隊長のは?、それに、欺された場合どうなるんだ?〉

 〈精霊殿は、メイを欺してないだろう?〉

 [本来、欺すことでの誓約グランデルーサはあり得ません。双方の合意です]


 〈〈??〉〉


 「ブスガキと誓約グランデルーサって、え?意味あんの?なんか、恐くない?ヤバくない黒蛇オウローダ

 「さすが禍とされる者は、物事の分別がつかないのですね。騎士でもない、その少女と誓約グランデルーサをしようとは」


 「・・・・・・・、」


 周囲から動揺と侮蔑が零れる中、エルヴィーは顔が寄せられるほど自分で強く掴んだ少女が、自らを解放して涙目になっているのを悲しみに見下ろした。


 「オルディオール、信じられないよ。右も左も分からないミギノを、誓約グランデルーサで縛ったなんて、」 


 「・・・・」


 「この国で、皆に陰口を言われて、気の毒だなって思うこともあったけど、君は本当に、最低だ、」



**



 (・・・・おや?まさか、これは、私が種火を再投入か?)


 友人との初めての野外焼き肉。炭に種火を移さずに、ひたすら種火を継ぎ足しての大惨事を思い出す。バーベキューからの望まないキャンプファイヤー発生に、穏やかな公園、周囲のファミリーは騒然となり、メイと数人の友人は無知を非難され揶揄られた。そんな中、果敢にも炎に投入した肉は全てアスファルトに滲むガソリンの様な黒色で、明らかに有害物質とされる虹色が浮かんでおり食べることは出来なかった。肉に満たされるはずの空腹を、駄菓子を食べて乗り越えた苦い夏の思い出が甦る。



**



 「クソガキ・・・、面倒事を増やしやがって。さー、どれがいいかなぁー?」


 (ドレニシヨウカナ?何の?)


 帯に手を掛けしゅるりと上服の紐を解く。はらりと開かれた襟元に、驚愕し動揺したのは中身の本人だ。


 (ぷるりん、ぷるりん、ちょっと待って、)


 「オゥストロには悪いがな。奴も軍人だ。罪への仕置きは速さが有効だとの理解はあるだろう」


 ぱさりと羽織る肩掛けは下に落ち、革帯を放ると腰の留め紐を解き出す。


 (やばいやばい!ぷるりんヤメロ!冗談はヤメロ!エルビー!エルビー!助けて!どうやって、どうやって青い玉をぺって出すの?ねえっ!!)


 視界に入るエルヴィーは、突然衣服を脱ぎ出した白い二の腕が露わになった少女に硬直していた。更に意に反した両手は、短い半下衣の留め具を外す。


 〈メイ、どうしたの?水浴びるの?スアハはどうしようかな、スアハはメイと一緒に入るのは、もう少し我慢しようかな、〉


 的外れなスアハの質問に状況を理解出来たアピーは青ざめて、シッポを下げてそわそわと不安な顔で辺りを彷徨き見守っている。アラフィアとエスフォロスは意味不明な少女の脱衣に眉を顰めていたが、完全に壁に背を向けたトラーを見てようやく状況を把握した。


 「医者も居ることだし、問題ねーな。消去法でいくか。廃棄物ルデアは無し、イーのガキも無し、あとは、」



 メイは、オルディオールとの誓約グランデルーサをエルヴィーには話すなと、以前に言われていた事をすっかり忘れていたのだ。オルディオールは警告に、事あるごとに異性に身を捧げると口にしていた。


 『ストップ・ストリッパー!!!ーーパン!!!

 (た、助けて!姉さん!弟!誰か!医者!おい!あれ?今、私、パンされた?外、出れた?)


 イストは医者の目で、興味深げに観察している。その後ろには少女の裸に全く興味の無いアールワールが、幼さの残る身体を商品として利用出来るか無表情に見極めているだけだった。



 裸踊り、ヤ、メ、テーーーーー!!!



 オルディオールへの慎重な警戒は全て無駄になり、この後、脅迫どおりに少女は恥部を曝されそうになったのだが、アラフィアを初めとする周囲に遮られ、黒蛇オウローダオルディオールの卑劣行為は、更なる悪評を重ねる事になった。




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