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ぷるりんと異世界旅行  作者: wawa
双頭の王~ファルド帝国
128/221

03 目的は?サイトシーイング!


 異世界に落とされて数ヵ月。


 私を助けてくれた、彼らへの感謝の気持ちはもちろんあるのだが、それはいつも、何処か他人事だった。


 ここが見慣れない異世界だからか、いつも傍観している自分がいるのだ。


 当事者では無い、観客。


 視野は広がり冷静な意見が増える、ある意味理想的なポジション。だが、傍観者は常に現実そこに交わることがなく、達成感が丸でない。


 考えてみると〔ここには私が居ない〕と思い込み、自分を護っている事に気が付いた。


 異世界を全て受け入れてしまえば、何かが壊れて元に戻らなくなるかもしれないとの思い込み、そして元の世界を忘れないための比較妄想をする。それは異世界と故郷を比べて、私にとっての現実を思い出す為の大切な作業なのだ。


 

 だが、最近それが減ってきた。



 何故かは、この異世界の思い出が、増えてきたからである。


 異世界は腰掛け、留まる場所では無い。彼等とはいずれ別れる人達なのだ。


 だから、彼らとは浅く軽く付き合うのだ。と、そう思っていた自分は、楽だったのだろう。



 (だが、今は違う)


 〈メイ!頑張って!〉



 落人オル、天上の巫女、黒ネズミ、ブスガキ。私を示したこの世界の称号なんて、一切役に立たない。異世界、現実?そんなものも関係がない。人々の期待を込めた熱い視線。それは今、カミナメイ、私個人に注がれているのだ。


 (逃げることなど、出来ない、だが、)


 ーーアツイ!


 ジューーーー。ジューーーー。


 汗だく、ドロドロ、長蛇の列。私は今、途切れることなくたこ焼き擬きを、繰り返し繰り返し回し、焼き続けているのだ。


 何故この寂れた下町で、半日たこ焼き擬きを焼き続けているのか?それはもちろん半日前に遡る事になる。


 


**




 教会を出発し、アラフィア姉さんとかっぱちゃんと下町を歩いていたのだが、目的地に向かう前に昼食を取ることになった。黒子のように居なくなる、マスク代表は今は居ない。私達は下町貧民商店町を彷徨いて、結局パンを立ち食いする事になった。


 「トラーは居るが、ここで待ってろよ」


 姉さんの言いつけを守って、かっぱちゃんと店の前で待っていたのだが、ふと、隣の店に積まれていた大量の鉄板が目に入り、それに懐かしい何かを思い出した。


 (黒いまるまるが沢山ある。少し大きいが、この鉄板には見覚えがある)


 十の丸が縦横に整列、おにぎりよりは小さい、たこ焼きよりは大きい。その微妙な鉄板屋、隣にはお好み焼き擬きを売っている店がある。


 たこ焼き、食べたい・・・。


 (ここは異世界。私は客人。旅の恥はカキステル)


 私は落人オル、私は天上の巫女。そして、黒い鼠。


 ダーク・ファンタジックな通り名。更に先ほど新しく、教会で見た目は女神に授かりし、最強の称号、それは、



 ーーーブスとバカ。



 (無敵だ。怖い物は何も無い)



 「こちらのこれを、少し、お願いします」


 店のオヤジは不審者を見る目で私を睨み、手で追い払おうとしたが、そこで女神の使いが現れた。そう、教会で出会った農家の王女むすめ、ラーナさんである。


 「どうするの?これ?」


 彼女の交渉により、私は画用紙サイズの鉄のプレートをゲットした。そのまま買い物途中のラーナさんを交渉役に、隣の店のお好み焼き擬きのネタをゲットする。


 共犯者の農家の王女むすめは生まれ持った既得権益ステータスを利用して、ダークサイドに属する私に貢ぎ物を奉納する。そのまま私は露店の中になだれ込み、本能のままに小麦粉擬きの液体を作り、癖の無い葉野菜を刻む。


 黒い鉄板はもちろん念入りにゴシゴシと洗い、その段階で困り果てていたかっぱちゃんがアラフィア姉さんを呼んできた。だが、ここまで辿り着いた、私を誰にも止められはしない。


 油を塗った黒い丸に水で溶いた小麦粉擬き投入。葉野菜を乗せ、その辺にあった魚貝類をイン。


 (しばし待つ)


 『今か、』


 先の尖った木の棒で、ちょんちょんくるくる、くるり。それを果てしなく繰り返す。その内、香ばしい匂いが辺りに漂い始めた。ちょんちょんくるくる、くるり、くるりを繰り返し、出来上がったたこ焼き擬きに、露店にあった既存のタレをペタペタする。


 『出来上がり』


 ホカホカのたこ焼き擬き。そのお味は?


 少しお怒り気味のアラフィア上長に先に献上。そして農家の王女むすめとかっぱちゃん。もちろん露店の主にも振る舞った。


 熱々のたこ焼き風お好み焼き擬きを実食する者達を、私は見つめるだけ。私は何故食べないのか?それは先程既に実食済みだからだ。味はまあ、焼いた粉物にタレを塗っただけなのだが、この異世界の酸味の少し強いタレが、私にはどうにも微妙だった。期待が大きかっただけに、味に厳しくなってしまった自分が残念である。その微妙なタレに馴染みある住民達は、どうなのか?


 (自信ない。でも、せっかく農家の王女むすめが手伝ってくれたし、鉄板分は食べて欲しい)


 食べ物を粗末にはしない。だが結構な量がある。しかも基本のたこ焼きの大きさより、少し大きいのだ。エルビーがここには居ない今、お持ち帰りは可能なのだろうか。


 「うん。美味いぞ」


 アラフィア姉さんの頷きに、それぞれ感想が漏れ出した。総合的には〔有り〕〔食べ物で遊ぶなよ〕と丸に対して怒られる。だがこれを優しい王女はフォローして、何故か下町住民に食べて貰う事になった。


 王女様の強い盛り上がりにより、アラフィア上長は彼女に押し負けて、私はたこ焼き擬き職人にジョブチェンジを果たした訳だが、この転職先は。


 (終わりが見えない・・・)


 ちょんちょん、くるくる、くるり。


 プスリ。プスリ。ペタペタ。


 「どうぞ」


 ジューーーー。ジューーーー。


 ちょんちょん、くるくる・・・。


 (かれこれ数時間、トイレットタイムも無く、私はぱんでたこ焼き擬きくるくるし続けている、)


 〈メイ!頑張って!〉


 かっぱちゃんの声援は心強いのだが、こちらは汗だく、ドロドロ、熱々でふらふらである。


 「あ、ありがとうございます!」


 だが、明らかに子供が多く並ぶこの列に、ここまでで終わりです、との悲しい区切りをつける事は出来ない。おそらくこの丸い食べ物が珍しいらしく、彼らの目はとてもキラキラ輝いていた。 


 (安心して、材料は、まだまだあるの)


 いつの間にか農家の王女むすめは、敏腕営業マンにジョブチェンジしており、彼女の采配で材料ネタは切れる事がない。それは私の隣に待機する貫禄ある女性により、わんこそばの蓋をさせない勢いで継ぎ足されていく。


 『ブラック企業、休憩プリーズ。せめて、トイレットタイムだけでもプリーズ・ミー・・・』


 ジューーーー。ジューーーー。


 『何故、何故こんな単純作業を、誰も代わってくれないの?見てみて、簡単、ちょんちょん、くるくる、くるり、見て、』

 

 ふらふらする。アツイのである。


 「水です。飲めますか?」


 貫禄のある女性、どこかで見たことがあると思ったら、この町に始めに訪れた時の、唐揚げの会のお店のウェイトレスさんだった。


 「ありがとうございます、」


 お水。これを飲んでしまうと、ますますトイレを意識する事になる。そういえば、たしか私は彼女のお店で、お冷やを取りに行くフリで白狐面の一味から逃げようと試みたが、失敗したのだった。


 (今となっては白狐面の医師は、そんなに悪い奴ではなかったような、だったような?、やっぱり最悪なヒヨ、ダメダメ!それはまだダメ!)


 危ない。トラウマを剥がし、傷口を悪化させるところだった。セーフセーフ。


 手厚いわんこそば態勢。丸い食べ物に注がれる住民の熱い視線。繁忙期のトイレットタイムが難しい現実に、私の冷や汗が流れ始めた時、それは突然に終わりを告げた。


 人々の列、取り囲む住民達が割れると、紳士風を先頭に奴らが現れたのだ。そう、ヤカラ・テーマパークのスタッフ達だ。奴らの目的は分かっている。おそらく無許可営業と因縁をつけて、ショバ代を巻き上げに来たのだろう。


 だが、生憎とこちらはボランティア。材料ネタは全て、農家の王女むすめの畑の善意と、下町住民の寄付により賄われている。巻き上げられる物は何もないのだが、そうはいかないのがヤカラ経営者の紳士風だろう。


 (不穏な空気。オラオラしはじめた)


 彼らの登場により、こちらも心強い警備主任アラフィア姉さんと、いつの間にか黒子のマスク代表が現れた。これを機に、私は清々しく心置きなく持っていたくるり棒を、貫禄あるウェイトレスさんに引き継ぐ事に成功した。頷き合い彼女にたこ焼き回しの権利を譲渡すると、私はようやく繁忙期から解放されたのだった。




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