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ぷるりんと異世界旅行  作者: wawa
魂の眠る森~グルディ・オーサ
1/221

01 落下中

 


 朝起きて、シャワーと簡単な身支度と軽食をおよそ三十分で完了。ロンティーにパーカー、半パンツにブーツ。タイツのデニールは百二十。夢と幻想が詰まったネズミの王国の王様のように、地肌は完全に黒く守られている。


 そんな私は落下中。


 いつも通りにアパートを出て、普通に歩道を歩いていた。歩きスマホなんてしていない。マンホールの蓋がたまたま開いていて…、そんな記憶は無かったが、普通に道を歩いていて、落下することはそれしか思い浮かばない。


 落下中、ふと、ある考えが過ぎる。


 高層マンションからの転落事故、または自殺。彼等は地面に到着する間、意識があるのか無いのか。


 そして次に思い浮かぶのは、到着完了時に意識はあるのか無いのかだ。


 奇跡の生還は望むところなのだが、どうしても身に受けるダメージなど、負の想定しか出来ない。創作映画や漫画の残酷描写で鍛えられた私の想像力が、ここにきて想像以上に描写変換している所為もある。


 よくない妄想よくない。


 夢、これは夢かもしれないじゃない?


 たまに見る落下夢、でもそれは大抵、着地前に目が覚めていた。そしてバスや電車での乗り物移動中や授業中、暖かい気温に落ちるように夢の世界に誘われるが、それも『ここで寝るなよ』という無意識の身体の覚醒にガクリと全身が動き、周囲を驚かせつつ目覚め、照れ隠しに窓を眺めてその場をやり過ごす。


 などの夢妄想で心のストレスを取り除こうと試みたのだが、しかし残念ながら、これは夢では無い気がするのだ。


 ナゼッテ?


 それは寒いから。


 夢落ち希望。夢落ち願望、大。


 (長い…………、) 


 距離が長ければ長いほど、そんなことばかりが走馬灯。屋外遊技場にある落下遊技、俺は鳥に成るぜ! と小型飛行機から空へ飛び降りて、パラシュート着陸をキメる勇者達。

 勇者の中に、たまに現れる気絶者を助ける動画は、助かった場合のみ配信される。


 等々。考えてはみたが、長く感じる時間、耳や指先の末端に抜ける冷たい気圧を背中に感じ、上空は黒一面の中に、ちらほらと星のようなものが見えた。


 どうやらここは、マンホール内ではなく外のようだ。


 何故か私は気絶出来ずに落下中のまま、不思議と死への恐怖がまだ今は無い。


 実はやっぱり夢でした、そうだよね?


 こんなこと、有り得るわけは無いのだが、夢であることを願いつつ、どこかで現実的に迫る落下地点が頭から離れない。


 そして青黒い空を見上げたままの私は、地面への到着時、痛みが無いことだけを願い、それだけをぼんやり考えていた。




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