32・病娘の堕愛
「ぐっ……ここは……」
「遅いわよ。ここは、私の次元。次元転換でもなきゃ出られないわ」
「……完全にやばい」
「全く同感だ」
ケンとリュウが目を覚ますと、そこは闇の靄でできた小空間。
───恐らく、ラヴァーのマイルームの様なものだろう。
「──何時までボーッとしてんのよこのクズ虫!とっととレオの場所くらい教えなさいよ!!!!」
「……言わない方が良くね?」
「……絶対に言ってはいけない」
「そこ!ひそひそ話してもわかるわよ」
ラヴァーの手にハートが出現した。
あれはなんだろう、でも、何かとんでもないものだった気がする。
「これは『ワールド・ハート』。……私の願いを、全てあいで、愛で聞いてくれる!これさえあれば……お兄ちゃんをずっと私のモノにできる!私の彼氏にも!!!夫にも!!!───それと同時に、あなた達を拷問死させることも出来る」
「ひっ……」
「これは…まずい」
「……え?そんな使い方があった?」
すると、ラヴァーは独り言をつぶやき、それをゲートの縮小版の様なものに入れた。
「…さぁ、私の願いを叶えて」
「……!?」
「すっ……はぁ……?なんだ、これは…」
「あなた達の心を読んだの。ついでに、あなた達からはお兄ちゃんの記憶を奪った」
「……お兄ちゃん?」
「?どういう事だ?」
すると、空間に亀裂が生じ、靄が晴れれ元の世界に戻った。
「レオ……レオレオレオレオレオレオオオオォォォ!!!!!アハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!お兄ちゃんだれそう!私だけの!モノ!…………一生、離れられないようにして上げる!!!!…ハァ、ハァ、ハァ、 …喰べちゃいたいわあああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
「レオ?誰だよ」
「……どちらにしろ、こいつは倒さなくては」
「あ、あと、あんた達に興味無いから死んで」
「…下」
「…ぁ」
いつの間にあったのだろう、靄が足元を埋め尽くし、そこからは、
「『ゴート・ディエ』『ゴート・イレーズ』…『トロイの狂気』」
靄から数十の棘が飛び出し、ケンを、リュウを、蹂躙していく。
「があああぁぁぁぁ!!!!」
「ぐはあぁぁぁぁぁ!!!!」
靄は消えた。
後に残る血の池、二つ。
「────二つのクズ虫も、消えたのに」
───まだ、満たされない。
「レオ」
───もっと、見ていたい。
「お兄ちゃん」
───唇を、もっと奪いたい。
───純粋ではないかもしれないけど、
「愛してるわ、お兄ちゃん……流星レオ」




