31・魔界の進出戦~中~
「……!」
「くそっ、こいつ攻撃が全然効かないんだけど」
「……恐らくこの鎧のせいだろう。これを壊せれば…」
「それは、できぬな」
「なら、力づくってもんだよ!」
スロッグと対峙し、正直言って緊張で死にそうだ。
前だって、アフレイドとの戦闘で命を落とした。あれも、キュバーとの契約が無ければそのまま意識は消え、二度と立ち上がれなかっただろう。
────それでも、ケンがここまでやるのには、理由がある。
「──ユリーに、かっこつけたいんだよ!」
凄まじい衝撃と共に、ケンが飛び出す。
彼の新しい相棒の大剣は、しっかりその手に握られていた。
「……無為だ。私は冥界神『アヌビス』の魂を閉じ込め作られたもの。貴様が犯す罪が重ければ重いほど、私もそれ相応に強くなるのだ」
鉄と鉄とがぶつかり合い、ケンが弾き飛ばされた。
「ぐはあぁぁ!!!!」
そのまま地面を吹っ飛ばされ、寮の壁にぶち当たる。
壁が崩れなかったのが、奇跡中の幸いだろう。
「……ラヴァー。来ては行けないと言ったはず……ネクロはどうした」
「ハァァァァァ!?なんで私があんな屑の面倒見なきゃいけないんですかー!?ならあんたが見に行きなさいよ!?私は匂いを頼りに想い人探ししてるの!!……うっざい」
「……なら、貴様がこやつらの相手をしろ」
「……あぁ、いいよ。わかったよ、殺ればいいんでしょ!?」
大鎧が視界から消え、目の前の女子高生と相対する。
「……ハァ、ハァ、ハァ……レオは?あなた達、お兄ちゃんに付いてるクズ虫だよね?お兄ちゃんの場所くらい分かるよね?」
「……お兄ちゃん?あいつ一人っ子だった気がする」
「さあ、レオに妹は居たのか……?」
「……そう。教える気がないなら武力行使、そう!すべてはレオ、お兄ちゃんのためなのよ!アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」
ラヴァーは魔法陣を展開し、呪文を詠唱。ブツブツ何かを唱えた後、
「……。魅入られて、死ねええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
彼女の足元から黒い靄が発生した。そこから魔の手が噴出され、そのままケンとリュウはそれに飲み込まれた。
「さあ、魅せて上げる──『病娘・楽園』、ヤンデレ・ハーレム!」
────ん?
「……なんか俺の名前呼ばれた気がしたんだけど」
「知らないわよ。それより女の子を見捨てるの?」
「はいはい今行くって」