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クライアル・ストーリー  作者: ホーリー。
StoryⅠ 平和の崩壊
22/34

21・狂笑の感染

「はぁ……はぁ……」

どの位走ったかは分からない。分かるのは、片手にある暖かい手だけだ。

「レオ...?まだ...?」

亜矢が心配そうに呟く。村の明かりは近すぎて、逆に遠く感じるほどまで近くに来ている。

柵の一端に作られた門をくぐり抜け、中に入る。

「もう、レオ!遅かったじゃない!」

「レオのお母さん!ゾンビが……ゾンビが!」


村まで後50m程のところに、奴らが迫っている。

「なに……あれ?」





「女と子供は逃がせ!男は戦え!」

それから1分半ほどで奴らが着いて、戦闘になった。

しかし、レオのお父さんは──

「オラァ!まだか!……ゾンビ共!こっちだ!」

「ぐるルルルァ!」

『ゾンビ』。

死体に何らかの刺激が加わり、蘇った物だ。腐った謎のウイルスで、感染を引き起こすとされている。

「……って書いてあるよ」

「お父さん...」

レオと亜矢。

竜車に乗り避難する女子供達のグループ。

彼女らは心配そうだ。



────奴が来たのは、その時だった。



「……へぇ、僕の『感染』を逃れるのか、とっとと支配下になれば気も楽だしいいと思うよ?」



「「「!?」」」



竜車グループの前に、1人の青年が立っている。

……こいつが、主犯だ。レオはそう確信

した。

レオは前に出る。


「……お前は、誰だ」

「おっと、僕が名乗ってなかったね、ごめんね」

彼はそう言って、一呼吸置いたあと。






「僕は魔界侵略軍所属、洗礼名『感染』、ネクロ・ディーラ」

「……魔界?」




「……君の素晴らしい力を感じる」

「何だよ」

「さぁ、さぁさぁさぁさぁ、サァ!こいつら全員血祭りにあげて、君を僕の配下にしよう!そうするとするか!」


「……てめぇ!ふざけるのもいい加減にしろ!」

レオはキレた。

「…はぁ、こういう場合は主従関係を分からせるしかないのかぁ」


「さっきから何を...!」

レオは護身用の片手剣を引き抜いた。


「ヘル・サテライトぉ!」

「がはっ...てめぇ、魔法まで……」

「グルるるるるるるっ!」


「おっと……どうやら感染は完了したらしい」


「……は、は?何を...?」


「だからァ、さっきのちっこい村潰したんだよ」


「……てめぇええええぇッっ!」

レオは体術で飛び上がり、そのままディーラに切りかかる。

「……そんな剣じゃ……無理無理」


「ぐはぁっ!」

片手で薙ぎ払われた。

こんな奴に。その事で更にレオは憤慨し、当てもなく体当たりを仕掛ける。

────訳では無い。


「……ぐ、ぁ」

「はぁ...はぁ」

ポケットに入れておいた探検用ナイフを使い、ディーラの右胸にそれを刺したのだ。

「まさか...またかよぉ」

ディーラが倒れる。

「……亜矢、大丈夫か?」

「うん、大丈夫」


「……だーかーらぁ、そんなんで倒したと思われたら困るんですけど」

「!?」

背後の声に咄嗟の反応が出来ず、思い切り吹き飛ばされた。




「こいつ……蘇生!?」

「まぁ、それに当たるね」


「ねえ、レオ」

「何だよ」

「悪いけど……後ろ」

「?」



振り返ると────



「ようやく気づいたようだね、そう、君たち以外全員感染済みだ」

「あ...ぁ...」




絶体絶命。正に当てはまる状況だ。

このままではやばい。最悪だ。




────ふと、一つ思う事があった。

「亜矢」

「何?」

「魔法...使えるか?」

「まぁ……一応」

「じゃあ……ミスト、は?」

「……うん」

「使え」


「……ふぅ、『ミスト!』」




不可視の霧が、奴らの視界を妨害する。

今の内に!早く逃げなければ!

「亜矢」

「また何?」

「先にいけ。俺は……俺は、奴を殺す」

「...!?無理だよ!あんな不死身の!」

「……いや、行けるかもしれない」

「……分かったよ」



これで、思い切り暴れられる。

すぐ、ディーラの元に向かった。



「くそっ……霞んで見えないっ!」

「……家族と、その友達の恨みッッ!」

「く、はぁ」

再び心臓に刃物を突き立てた。

奴はその場に倒れる。



「良し、これであとは……!?」



しかし、時既に遅し。

死者の行進は眼前にあった。


「ちっ!」

落ちていた片手剣を拾い、薙ぎ払いながら死者を退ける。

「グルるるるるるぁ!」

「がァァァァ」

「ぁぁぁぁぁぁ!」



悲鳴が断末魔に変わっていく。

────直後、死者が倒れた。

まるで、ドミノのように、全員。

「!?」

「あーあ、やばいんじゃないの?」

「クソッ!」

奴はいつの間にか立ち上がり、血のついた服を軽くはらう。

「さて、さてさてさて」





「────血祭りの始まり、だね。アハハハハハハハハハハッ!」


奴は狂笑していた。

────この世は狂っているのか。






神は何故、微笑まないのか。



「──ハハハハハッ」

俺────流星レオは、狂笑していた。


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