19・神獣と病
「魔香・絶世の美女」。
相手を催眠にかける能力。傀儡になるほどの支配力を持つ。
──たとえそれが、傀儡にされた物に出来ないとしても。
「ただし、汝のこの能力、1つ欠点があるのだ」
「?」
「女には効かぬ」
「...で、俺が効かなきゃ誰も効かないぞ」
「ふむ...出直すか、アラシーサ、奴らと遊んでおくのだ」
「ガウウウウゥゥゥッッ!」
エンクインの言葉を合図に、再びアラシーサが飛び掛ってくる。
その爪を避け、腹に斬撃を叩き込む。
「ガウウウウッッ!」
なお神獣は倒れず、その牙で喉笛を引きちぎらんとこちらへ向かってくる。
「行くぞ、お前ら!」
「あいあいさー!」
「う...うん!頑張る!」
再び決闘が始まった。
その頃、デフォルは。
「うあああああ!」
「きゃぁぁぁぁ!」
誰の悲鳴かわからない声が聞こえてはなり止む。
大感染がデフォルを襲っていた。
────まるで、冥界絵図だった。
「う……あ……」
愛が、愛が足りない。
ラヴァーは、お風呂でシャワーを浴びている。
一般男性なら速攻でメアド交換しそうなその可憐な顔に、豊満な胸。
美しい曲線を描く身体。
すらっとしたその足。
その彼女が、誰とも付き合ったこともなく、誰にも襲われないのは、その想いだ。
ある1人の男子。
それも────
「────愛してる、流星レオ……いや」
「──お兄ちゃん」
彼女は最後に、
「──流星、ミラ」
とだけ呟いた。
「……あ、ぁ」
忙しく、滅多に趣味をしていないラヴァー。それも、ここ最近、1週間程だが。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん……ぁ」
────そこから先は、湯気に呑まれて、何も見えなかった。
「...……レオ先輩の部屋にいるあの女、誰?」
向かいの寮に住む、『ハラノ・シズク』。
こちらも、レオを想っている人の1人。
「あんな女如き、このマシンガンで...行ける」
────こちらも、最後に、
「...後で会いましょう、レオ先輩。クズは、────私が、始末します」




