18・女帝降臨
「────全く、いきなり爆発したから心臓が飛び出ると思ったわ」
「……」
「あ、ディーラはまた死んだのね」
────殆ど無い意識の中、アフレイドに傷一つつけられなかったと、涙を流した。なんなんだこいつは、絶対に、殺す。絶対に、ころ...す、ぜった...い...に、こ……ろ...。
『あら、そんなところで死ぬの?』
──意識のみの世界で、女の声が響く。
『ふふ、負けず嫌いの貴方なら、この私の手をとるはずだわ』
──何をだ。
『決まってるじゃない。「契約」よ』
──契約?
『私は、大天使の1人、「キュバー」』
──キュバー、か。
『さて、前置きも程々に契約に入るわ。』
──ああ。
『私と契約し、無くなった肉体を取り戻す。正確には、作り直す。そして、私と意識を共有し、必要な時には手を貸す』
──だいぶリスクの無い契約だな。
『ただし、一つ条件』
──なんだ。
『──私と、そ、その...付き合いなさい』
──は?
「おい、姿も見てないのになんだよいきなり」
「──それなら、見せてあげるわ」
「...ぁ」
復活した五感で、彼女の姿を捉えた。
───すらっとしたスレンダーな体型。
純白の羽。
光に当たっていないような、白い肌。
レモン色の長い髪。
こちらを見つめる、ライム色の双眼。
───大天使の姿が、そこにあった。
……少しだけ、頬を紅潮させて。
「...ぐぁっ!」
「せんぱーぐへっ!」
「二人とも……きゃっ!」
試練。正にそれが正しい。
『ぐらあぁぁぁぁぁぁぁ!』
南国の獅子、『アラシーサ』。
───何故神獣がここに居るのか。
───何故襲ってくるのか。
「ふ、愚民が汝の遣いにずたずたにされているな」
「おい、っ、だ、だれだ!」
────その女は、魔王の座る椅子のような椅子に座って、降りてきた。
「?何故キサマから名乗らぬ、愚かな者がさらに堕ちるぞ」
「俺は、流星レオ」
「ふ、覚悟があるなら申してやろう」
「とっとと言え!」
「私は、魔界侵略軍所属、洗礼名『退く欲』、エンクイン・ケルペラー」
「……」
「ふむ、中々勇気のあるものだ。汝の陣営に組み込んでやろう」
「───それはお断りだな」
「ほう、さらに興味が沸いた。キサマを身体中調べ尽くしたい所だ」
「そんなこと言われたって、気持ちは変わらねぇ」
「では、興に乗った、教えよう」
「なんだ?」
「────まさか汝の『魔香・絶世の美女』が聞かないとは」
「それをかければ、誰もが汝側につくと思っていたのでな」