16・偽りの悪魔
「がっ!」
「……ぐ、まずい、このままだと…」
ケンとリュウ。
いくら質があっても圧倒的物量の前では、全く意味を成さず。
「ハァ...ハァ...もう、ダメかもな」
「!?ケンッ!」
「移動魔法なら用意できるっての」
ケンは、リュウを逃すつもりでいる。
それは、リュウが絶対に認めないとわかっていて。
────いや、違う。
ケンの心臓が、何か不穏なものを感じている。
「……じゃあな」
「────ケ」
ヒュン、と音がなり、魔法陣も消滅する。
「……さて、祭りだな」
「ハァ...圧倒的物量にどーやって勝つのさ。無理だ、無理」
ディーラが降伏を勧めたが、ケンは応じない。
「……来る」
「『怨槍』ロンギヌスッッ!」
上空から、少女とそれを載せた槍が、降りて、いや、降ってくる。
「は?」
ディーラは唖然。
「……死んでろ!じゃあなぁ!」
ケンが射程から逃れた直後、ディーラを巻き込んで、
────槍が、地面にクレーターをつくっていた。
ディーラはいない。死んだか。
「私の誤爆で死ぬとは...随分幸せな死に方なのね、ディーラ」
少女はそう口にし、こちらを向く。
「さて、こちらを見ている男性?私は、もうわかるわよね?」
「……あぁ、最悪だ」
「私は、魔界侵略軍所属、洗礼名『偽神』、ポア・アフレイド」
「偽りの……神……?」
「……あぁ、そうよ、擬似神とでも言っておくかしらね」
神を偽るとは、大したものだ。
「じゃ、神さん」
「何かしら」
「────うおりゃぁぉぁ!」
ケンの斧がアフレイドの首を狙う。
その瞬間────
「………………はぇ?」
「言ったのよ。私は偽神。───悪魔で、神でもあるのよ。それに、堕ちる前は戦姫『ヴァルキリー』だったのよ」
────ケンの斧は、槍の一振りで粉々になった。




