13・幻想の恋人
「...ん?」
これはレオ。
「───そうだ、俺は」
ゴブリン村で、吹き飛ばされたのだ。皆は、何処へ───そこで初めて、レオは異常を察知した。
目の前に、アイツがいる。それは、それは────
「────ああ、私の真の恋人」
「...まじかよ」
────現実世界でのセーラー服を着て、ナイフを片手、黒髪ロングの蒼眼女子高生。
「...ラヴァー・モア」
「ああ、嬉しいわ。私の、なまえぇ...」
性的興奮状態なのか、酷く艶かしい雰囲気を出してこちらを見ている。?何故、座っているのか。何故、俺は立てないのか。────単純だ。
縄で、拘束されていたのだ。
「ハァ、ハァ、ハァハァ.....この為に」
────ワタシは。生きていた。
「...!?」
突然、ラヴァーの思考が脳になだれ込んでくる。その全てが、オレ────流星レオへの愛、欲望、羨望、好意だ。
(くそっ.......逃げられない)
「さぁ、お楽しみの、.....愛の証」
彼女はそういって、セーラー服を脱ぎ始めた。
やばい。やばいぞこれ。このままだと、完全に襲われる。しかし、何も出来ないのも現実なのだ、うん。
「ハァ、ハァ.....私の、愛ぃ、受け止めてええぇぇぇぇぇ!」
彼女の抱擁が来る。熱い熱い抱擁。
その色気ある体で隠しきれない、愛愛愛、そして愛。
「私をぉ、愛してえぇぇ!」
そう言いながら、舌を口に入れてくる。
──どれほどたっただろうか。
彼女は不意に俺から離れた。僅かに残る、バニラの香り。それは俺の好きな香り。───ユリーの、香「.....なんで?」
ラヴァーが問いかける。
「なんで?誰?ユリーって」
なぜ言ってもいないのに分かってしまうのか。単純。
相手にも、心は読めている。
「...ねぇ、その女、そんなに好き?」
ラヴァーの問いかけは続く。
「レオは私の、ワタシはレオの、真の恋人」
ラヴァーの真面目な顔に、覚悟を決めた。
「...すまない。俺は、お前を、好きになれない」
「...」
流れ込む感情は、絶望、憎悪、醜悪、憤怒。そして。
「なら、振り向かせる」
「...」
「...私の、恋人───いえ、私の、物になって、く...ださい」
ラヴァーの真面目な告白。
どんな男性でもOKしてしまうほどの、艶やかさを秘めた告白。
しかし、俺にはいるのだ。想い人。傍にいてあげたい。世話をしたい。守ってあげたい。笑いあいたい。愛を育てたい、
そんな人が。
「...やはり、答えは変えられない」
そう、言い放った。
その彼女は、絶望に溢れた顔つきをしている。
その顔は、どことなくユリーが泣いた時に似ていて、情が湧きそうになった。
それでも、答えは───そう、変わらない。
「...なんで!?なんでえええぇぇぇぇぇ!?なんで私の!物にぃぃぃぃぃ!!!」
その瞬間、縄が消え、俺はラヴァーに押し倒されていた。
「ちょ!話せばわかるって!落ち着け!」
「...もう、耐えられない」
彼女は、もう澄んだ目をしていない。
大切な人を失いそうで自信が崩れかけている。
「.........もう、いい」
そう言うと、その下着を取った。
美しい曲線に、いっそう拍車がかかって綺麗に見える。
「...ぁ」
このままではまずすぎる。
────あれを使うしかないのか。
いや、いい。
──仲間が、そこにいる。
「せんぱーい、...は?」
早々に飛び込んだ亜矢が、その光景に、唖然。
「レオーっ!……え?」
続いてユリー。
「レオっ!……あ」
笑う反応をした所を見ると、ケン。
肝心のリュウが来ないが──いい。
このままダッシュで逃げる。
「...逃がさない、レオは、私のモノ」
────────そんな声が、聞こえた気がした。