本が…
ー 主人公が本を手にした。
そこまではまあ良い。
さてここからが問題だ。
何に対しての記述があったのか。
主人公に関しての記述。
この世界を生き抜く術。
最強魔法の使い方。
どれも無くは無いだろう。
取り敢えず書き出してみるか。
ダメなら修正してみよう。 ー
本を開いた俺は絶句した。
「こんばんは、異世界からの使者。」
本が、喋った…??
ー 待て待て待て待て、なんで!!なんで本が喋ったんだ!!
しっかりしろ俺、どうしてこうなった。
いや、手が勝手に文字を打ってた?
そんなわけあるかバカ。
とは言っても、別にこの話は異世界漂流の非現実的を詰め合わせた小説だ。
て事は本が喋る位なんともない?
…けどダメだな、なんだろう、頭の中に続きが浮かんでこない。ボツボツ。
さて次だ。 ー
俺は本を開いて、数ページめくってみた。
白紙?
そこには何も書かれていない羊皮紙があるだけだ。
その時俺は絶句した。
「こんばんは、異世界からの使者。」
ー ってあれ?
この本はどうしても喋りたいの?
ああ、もう仕方ない。
このまま喋らせ続けてみるか。 ー
「!?」
俺は思わず本を落としそうになり、慌てて持ち直した。
「本が、喋った?」
困惑。一言で表すならこの言葉しか思い浮かばない。
しかしまあ、これまででいくつも非現実的を見てきたんだし、
あまり深く考える事じゃないか。
「力のある本は話をするものです。」
「力のある本?」
「えぇ。長い間大事に保管されてきた本や、著名な方が書いた本。
後天的に力が宿った本などは話をします。」
この世界ではそういう物なのか。
「そういうものなのです。」
心を読まれた。
「…アンタはどれなんだ?」
ふとした疑問をぶつけてみる。
「わたしは、一つ目と二つ目を兼ね備えています。」
「力とは、何なんだ?」
「わかりやすく言えば、魔法、のようなものです。」
魔法。ファンタジー味が増してきたな。
しかしこの本は一つ目と二つ目を兼ね備え他と言ったな。
二つ目はまだ分かるんだけど、一つ目は?
こんな荒れ果てた教会に置き去りにされているのに、長い間大切にされていた?
「いえ、この教会の主が無くなったのはつい最近の事なのですよ。」
また、心を読まれた。
「主は新たな主を召喚しました。」
「それが、あなたなのです。」
ー さて、少しは話が進んだだろうか。
ない知恵を絞り出して話を書くって大変なんだな。
本は喋りたがるし、主人公の名前はやっぱり出てこないし。
難しい…。
でも少しだけ俺強感は出てきたのかもしれないな。
俺は椅子の上で伸びをした。 ー
喋りたがるんです