物語り
金がない‼︎
自体は急場を模していた。
アイエルとシュウ子が先に出て行ったのを追いかける為、慌てて会計を済ませたのだが、店を出た俺の手の中には小銭が転がるばかりで、何も買えそうにない状態だった。
かなりの額で換金してもらったはずなんだがな…
地上で廃棄されていた乗り物や機械などから使えそうな部品、レアメタルと呼ばれる類のものを回収して、この国に入る時換金してもらったのだ。
実際貴重なのか、かなりの額がもらえたはずなんだがな…、
彼奴らの食欲舐めてたな…どんだけ食べるんだよ
内心で毒を吐かずにはいられない。
そもそも、あの二人は食事を食べる必要は無いはずなのだ。
アイエルに関しては今までの付き合い、つっても1カ月ちょっとだが確認済みだし、シュウ子のほうも、その身の内から食事の必要は無いと考えるのが妥当だろう。
服、どうやって買おうかな…
内心で頭を抱えながら、これ以上離れて見失わないよう、とぼとぼと二人の後をついていくのであった。
お金に関しては、意外なことにあっけなく解決した。
服屋に着き、アイエルの着せ替え人形になっていたシュウ子が、服が決まると、札束を取り出したのだ。
話を聞くと、例の女が持たせてくれたらしい。
いやほんと、助かりましたわ。
程なくして着替えを済ませたシュウ子が出て来た。
全身黒を基調とし、所々に色が混ざっていた。さらにその上から黒のロングコートを羽織っている。
髪の色も相まって、夜ならほとんど見えないだろう。
それよりも…
「なぁ、ちょっと子供が着るには地味すぎないか?
子供なんだからもっと派手な色の服でもいいと思うんだが…」
シュウ子が着る服は、大人びた…というよりか、あまりにも地味だったのだ。まるで風景に溶け込むことを目的としたような格好に少し苦笑が溢れる
せっかく可愛いのに台無しだ
と続けたが子供と言われたのが気にくわないらしく
「これでも私は、今この世界に生きるどんな生物よりも長く生きているのだぞ!対等に見れこそすれ、子供扱いされるいわれは無い!」
なんて言って、頬を膨らませてるんだから、ますます子供にしか見えない。
まぁ、シュウ子がいいならいいけどさっ、
本人がいいならそれでいいのだ。
そもそも、目的はシュウ子がシュウ子であるという事の隠匿なのだから、地味なことに文句は無いのだ。
さて、これで行動する下準備も良さそうだし、情報収集とでも行きますかね…
「さて、じゃあ行こうか。アイエル〜早く来い、先行くぞ〜」
ああん、待ってください〜と追いすがるような声を尻目にスタスタと先を行く、最近、あいつの扱いがやっと慣れてきた気がするな。
それにしても、アイエルは服はいいのだろうかと思ったが、そもそも誰にも見えないのだし、関係無いか。
と自己完結させた。
アイエルがやっと店から出て来た。後ろ髪を引かれるような様子を見るに、よっぽど服選びが楽しいらしい。
普段ならいいのだが、今は優先しなきゃいけない用事があるのだから勘弁してほしいな…
なんて思ってから、そういえば今までの付き合いに普段なんてなかった
な…なんてことを思い直す。ずっと一緒にいるから狂うが、まだ知り合って1カ月なのだ。そう思うと、この状況もなかなか笑えてくる。
まぁ、どうあれあいつとはこれからも長い付き合いになりそうだし、そのうち普段なんてやってくるだろなんて呑気に考える。
実際この考えはほとんどあっていたと、幾分後に思うわけだが、今はまだ考えに収まるまでだった。
「情報収集か、、なぜだかワクワクするな」
謎のワクワク感に包まれているシュウ子を横目に小道に抜ける。望むならばこの道が、平和で安全で快適な道であるようにと祈りながら。
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盗人をとっ捕まえました。
いきなり何を言うのかと思うかもしれないが安心してくれ。俺も少し混乱している。
裏道に入ってから、この国の状況、他国とのつながり、交通手段などの情報を手に入れるため、二手に分かれて情報収集を始めたのだ。
アイエルは人に見えない為、シュウ子とペアで行動している。
となると必然的に俺が一人で行動することになるわけだが、まさか出合った最初の人が盗みを働こうとするとは。
俺、そんなに弱そうに見えるかな…
確かに、歳は20に届かないし、中肉中背、よりも少し小柄な程度だが…。
盗人ってのはもう少し弱そうな奴を狙うもんだと思ってたんだがなぁ
俺の認識が間違っていたのか、それともこいつがおかしいのか。
「なぁお前、なんで盗みなんて働こうとしたんだ?」
何度目かもわからない質問を繰り返す。
相変わらず返事はなく、こちらを見ようともしない
「見た所、そこらの人より服が小綺麗だな。どっかのお偉いさんの息子ってところか?」
手口の幼稚さに、服装などから想像した結果だったがどうやら図星のようだ。初めて表情を動かした。
驚いたような顔をし、しかしまた悔しそうな顔をして下を向いてしまった。
「なぁ、そろそろ話してくんねぇかな?これで割と忙しくてなぁ」
困ったなぁと頭を掻いていると、ちょうどシュウ子らが合流してきた。
「おお、そうちゃん。こんな所におったか。ん?そいつは誰だ?」
そうちゃんが誰のことなのか一瞬わからなかったが、状況から察するに俺のことだろうが、なんでそうちゃんなんだろうか。まぁ、別に構わないが。
「おお、こいつが俺に盗みを働こうとしたんでな。とっ捕まえて尋問(笑)してた。普通の盗人なら捨て置くんだが、なんとなく訳ありっぽくてなぁ。面白い話でも聞けるんじゃないかと思ってな」
なるほどな、と納得の様子のシュウ子。
アイエルは特にリアクションがなかったので視線を盗人に戻すと、男は、目を見開いてシュウ子を見ていた、と言うよりもその斜め上を。
「………て、天使…?」
男がつぶやいた瞬間、俺たち三人に、緊張感というなの電流が走った。
見えてるのか…?でもなんで…?
アイエルが可視出来るようしたのかと思い目線で確認するが首を振る。
アイエルが可視出来るようにしたわけではない、となるとこいつ自身の目が特殊な性質を持っている…?
俺らの纏う雰囲気が変わったのを察したのか、
男は開いた口を塞ぎ、こちらの出方を窺っているようだ。
兎にも角にも、きちんと確認をしなければいけない。
「なぁちゃんと答えろ。お前、この羽根が生えてる女が見えるのか?」
男はゆっくりとこちらを向き、目を見た後、ことさらゆっくりと頷いた。
これで確定だ。こいつにはアイエルが見えている。
予定外なことが起きたがまぁ問題はないだろう。
「お前に色々聞きたいことがある。話してくれるよな?」
できるだけ落ち着いた声で問う。
「………あぁ」
何を悟ったか、男は弱々しく、しかし確かに肯定した
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
場所は裏路地にひっそりと佇む廃墟。
盗人の男が隠れ家にしてるらしいこの家に、俺たちは集まっていた。
盗人に連れてこられた場所なので警戒はしたが、アイエルが人の反応はないと断言したので大丈夫だろう。
「さて、色々話してもらおうか、盗人さんや?」
どうせ抵抗しても問題ないしそんな気力もなさそうなので解放し、少し縮こまって椅子に座っている男に話しかける。
「あぁ、それは構わないんだが、その…盗人って呼ぶのをやめてくれ。俺の名前は ナウル・アルバーン。
身の上は…、だいだい君の予想どうりだよ…」
顎でそうらいを示す。
「なら。ナウルと呼ぼう。俺はソウライ。好きに呼んでくれ。」
忘れていた自己紹介も兼ねて簡単な挨拶を済ます。
ナウルの名前を聞いた時、シュウ子が少し驚いた表情をしていたように思えるがまぁいいだろう。
「この国について色々聞きたいことがあるんだが…、先に君の身の上話を聞かせてもらおうか。
お偉いさんのボンボンが、なんで盗みなんて働こうとしたんだ?」
「ち、違うんだ!俺は何かを盗もうとしたわけじゃないんだ!」
今更信用できないような話だったが、嘘をついているように見えなかった。
「質問を変えよう。君が盗みを働こうとしたのではないとして、こんな所で何をしている?なぜ僕を襲った?」
今までより、少し低い声で問い詰める
「よく…わからないんだ…。今日、突然何かをやらなきゃいけないって思って…それで家を飛び出して…でも、どうすればいいのかも、何をすればいいのかもわからなくて…、そんな時、裏路地に入っていった あんたを見たんだ。よくわからないけど、あんたと話をしなきゃいけないような気がして…、あぁもう、自分でも何言ってるかわかんなくなってきた…」
それはこっちのセリフだよ…
彼の言葉を信じるなら、彼は最初から最後まで何かよくわからない力によって突き動かされていたという事になる。
そんな突拍子もない話を信じるのは馬鹿馬鹿しいと思うのだが、相変わらず嘘をついているようには思えない。
「何かをやらなきゃっていうがお前…、少しでもいいからなんかわからないのか?方向性とか」
「わからない…いや…なんというか…止めなきゃいけない気がするんだ…でもそれだけ…」
止めなきゃいけない…ねぇ
………何をだよ
少し話が進んだかと思ったが全く進まなかった
どうしたもんかなと思考していると、おもむろにシュウ子が口を開いた。
「少しいいか。お前、名を”アルバーン”といったな。
もしかして、あのアルバーン財閥のか?」
アルバーン財閥?聞きなれない財閥の名前が出てきた
と、こちらの空気を察したように、アイエルが補足を入れる
「先ほどからの聞き込みで、必ず出てきた財閥の名前です。資源や交通関係など幅広い分野に手を回しており、この国の実質の運営権はアルバーン財閥にあると言われているほど、とのことです」
はぇ、そんな財閥があるんだなぁと感心していると
シュウ子がさらに付け加え
「昔は普通に事業に取り組む財閥だったようなのだがな。最近、なぜか突然資源の独占や交通網の封鎖などを行うようになり、市民は困っているらしい。」
「嬢ちゃん、小さいのによく知ってるね。確かに、僕はアルバーン財閥の、いわゆる跡取り息子ってやつだよ。」
嬢ちゃん呼ばわりされた事に、シュウ子は怒りの声を上げようとしたが、口を塞いでやめさせる。
今余計なことを言われてもかなわない。
しかしまぁ、きな臭くなった。
突然暴走を始めた財閥に、何かを止めなければという意思に突き動かされた財閥の息子。
偶然とは思えないんだよなぁ
と、突然アイエルが前に出た。ナウルは身体を強張らせたが、黙ってアイエルを見ている。
「少々、確認したいことがあるので、失礼します」
返事はいらないようで、有無も言わさずナウルのおでこに手を当てる。
少しの間目を閉じ、そうしていたアイエルがゆっくりと目を開き手を離した。
「確認が取れました。なるほど、これで納得です」
アイエルが何かわかったらしい。
一体今ので何がわかるのだろう…記憶でも探ったのかな?と、想像にふけている間に、アイエルが続ける。
「彼は英雄の名前持ちです。おそらく、我々に反応して早く目覚めてしまった、未覚醒の英雄、といったとろでしょう」
その言葉を聞いて、シュウ子は納得したように頷き、
俺とナウルは、内心で思わずにはいられなかった。
”は?”と…。




