Makuranage Online~春の陣~ その弐
久し振りの投稿です。そしてかなり暴走しています。
「ようこそ、Makuranage Onlineへ」
またしても無機質な男性の声が、自分の立つ何もない真っ暗な空間の中で響き、耳に入ってくる。だがどんなに暗い口調だろうと木霊しようと、「枕投げ」という言葉が緊張する雰囲気を全て台無しにする。
しかも名前のイントネーションが、いきなり外国語寄りに変わるとは何故?外国人がプレイする為の計らい?それともこのゲームは、1センチを1000ミリと呼ぶみたいに誇張したいのだろうか?
総論、怖くない。その一言に尽きる。
「では、貴方のデータをゲスト登録致します。これから表示されるデータを入力し、間違いがなければK.O.のボタンを逆に読んで押して下さい」
ガタッ。
俺は思わず暗い空間の中でずっこけそうになった。K.O.の逆ってO.K.だろ。何でそんな回りくどい説明をするんだこのオペレーターは。しかもご丁寧に目の前に白文字で英語と日本語交互に説明してるし。いきなり負けを認めろと?
そして入力データが説明の文字の後にいきなり出てくる。
登録場所:◯◯温泉 白き布の惨劇館
PN:〔|(←カーソル) 〕
下の難易度をタッチして下さい:
Easy・Normal・Hard・Ultra Hard・Heavens Gate
遊ぶモードをタッチして下さい:
アーケード・通信・身内同士
〔K.O.〕
(注意)
・そのまま〔K.O.〕を押すとゲームオーバーになります。ですが300円分の商品券をを贈呈します。
・難易度によって御褒美は360度ちがいます。
(↓下には文字を打つタッチパネルがあります)
「……」
突っ込みたいにも程がある。名前を入れる部分しかないのはどうも気になるが、それはゲームの仕様だからという理由で目を瞑っておこう。温泉の後に付けられたおかしな名前も(白い布は枕だろう)。ネタバレはするもんじゃない。
だが本当にゲームオーバーになる仕様にするな。間違えて押した人が可哀想だろ。それに300円分の商品券で釣るな。それとも何?賄賂?
難易度の「Heavens Gate」だって何だよ。本気で殺す気なのか。「身内同士モード」も……。
もう360度違うという公式のボケは割愛しよう。キリがない。精神が疲れるだけだ。
全く謎の多いゲームだこれは。終わったらスマホのSNSでネット中に拡散してやる。一時のネタにはなるだろう。
取り敢えず名前の登録だ。リアルの名前はゲスト登録でもオンラインだと不味いから、適当に「ノブナガ」とでも打っておくか。格好いい名前だから。難易度はそうだな……安定のNormalを選択するか。強すぎず弱すぎず。モードはアーケードで。一体誰と通信しているのか気になるが、止めておこう。枕投げに情熱を注ぐゲーム廃人が居そうな気がするから。
「これでよしっ♪と……」
俺は念の為にもう一度確認すると、先程の意味不明な手順に従って、目の前に浮かんだ〔K.O.〕ボタンを押す。
「O.K.!!」
と叫びながら。まるで合言葉のように。これもいきなりゲームオーバーにならない為なのだから。例えこの空間に虚しく木霊したとしても……何か恥ずかしいし、悲しい。
「では、データの確認をします」
俺の複雑なメンタルをよそに、オペレーターは設定した音声を出す。そうして目の前に打ち込んだデータが表示される。これはよくあるパターンだ。だがまたも軽く驚愕した。
登録場所:◯◯温泉 白き布の惨劇館
登録種別:ゲスト
ID:thu28r0u
PN:〔ノブナガ〕
難易度:Normal〔安定のwww〕
遊ぶモード:アーケード〔フンッ〕
〔登録(^_^ゞ〕
IDをよく見ると「中二野郎」と読める気がするのだが、敬遠しよう。何かの偶然だ多分。でもどうしてコメントが付くんだ?最後に至っては鼻で笑われてるし。完全に馬鹿にしているようにしか思えない。
このゲームは最初からプレイヤーを挑発して、疲れさせるのが好きらしい。気の短い人ならすぐにログアウトして、クレーム付けるぞコレ。制作者に是非とも会ってみたいものだと思う。
「問題ないな。登録!!」
そして俺は登録ボタンを押す。すると押した効果音が、まるで確認を取るように何度も反響した。暗闇の中で再び虚しく。やはりこのゲームは変わった仕様が多いらしい。常識に囚われない方が良いようだ。
「では、ログインと共にゲームを開始します。ルールは問答無用です。戦いは身体で覚えましょう」
冷徹なオペレーターの声が聴こえたと同時に、自分の身体が突然現れた白い壁に囲まれる。恐らく枕。絶対に枕だ。次には激しい発光に包まれて視界が見えなくなる。これはオンラインゲームによくあるログイン方法だ。
ルールは問答無用。戦いは身体で覚えろ。何という雑な説明なのか。初心者に容赦無さすぎる。本当の戦場にでも送るつもりか?
それともクソゲー?これじゃどの難易度も難しいだろと心の底で思いながら、俺はステージへ送られた。
何が待っているのか知らずに。枕投げの恐怖を味わうことになった……。
「相手に思いっきり投げ付けて来て下さい。御武運を」
ん?何か最後に凄い応援されたぞ。
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