file.3 ウィザード
「しかし一体何処まで行くつもりなんだ。」
そう心の中で呟きながら鷹章は車で犯人が乗っていた車の過去を追っている。車と言っても現在の車は全て電気自動車で運転も全自動であるのだが。
彼はもう四時間半近く車に乗っている。つまり彼が視ている犯人の車は23時間前の様子であるのだが、一向に車が止まる様子はない。
現在いる位置は東京から南へ移動した横浜市郊外である。とここで、
「…時間切れか……ひとまず対策室に帰るか。」
こう言って、彼は東京に戻っていった。
「つまり、室長の考えとしては犯人たちは横浜港から国外から逃げたということですね。」
「ああ、そういうことだからウィザードを伝えてこい。わかったことはこのディスクにまとめているから彼に渡しておいてくれ。」
「了解しました。彼は今隣の部屋で前の件の事後処理をしているのでこっちを優先するように行ってきます。」
「任せた。今日は力を使いすぎたのでもう帰る。」
「そうですか。お疲れ様でした。」
「ああ、ご苦労さん。」
そう言い残して鷹章は部屋を後にした。
当然だが今の会話は鷹章と恵美のものである。
そして彼女は速い足取りで隣の部屋へと向かった。
「…と言う訳のでこのディスクの中のデータで犯人の足取りを追って下さいね、田原さん。」
「了解しました。ところで、室長は何処へ。」
「分かっていて同じ質問をするのはやめて下さい。室長はもう帰られました。」
「ですよね。あの力は命を削るようなものですもんね。」
「だからあなたもあまり無理しないようにして下さいね。特にあなたの場合は脳に直接疲労がきてすぐに限界が来るのですから。」
「分かってますって。これでも自分の体については十分に理解していますから。」
「では、定時になりましたのでお先に失礼します。」
「ああ、お疲れ様。」
そう言って恵美は部屋を後にした。
ところで、皆さんウィザードと呼ばれている田原という男が一体誰なのか気になりませんか。しかし時間が来てしまったので彼の紹介はまた次回。