file.2 鷹の目
「こりゃひでーな。」
ここは、不良のたまり場として有名な廃工場である。そして、今鷹章が目にしているのは黒こげになった工場の中でも奥の方にある比較的狭い部屋である。
その跡から分かることはかなり強力な爆弾が使われたことと、その爆発に誰かが巻き込まれたということである。但しご遺体はなく壁に付着した脂質が人の物であると言うだけである。
だから長官は俺に捜査を命令したのか、と鷹章は心の中でつぶやき、
「ここは自分で十分ですので、皆さんは他の場所を調査して下さい。」
と言って、先に来ていた鑑識たちに間接的に退室を促して部屋の中は彼一人になった。
なぜ他の人を部屋の外に出したからと言うと…
「ここにご遺体は寝ていたと。紐で縛られているから予めつれてこられてから爆発したんだな。えーと、爆弾の種類はロシア製のV−Ⅱ型といったところか…」
この力が機密であるからだ。通称鷹の目と呼ばれている(対策室でだけだが)この力は視覚において、物理的な距離をなくし一日だけだが過去を視ることができる。本人曰く、目で見るのではなくて心で見るらしいが、科学的には詳しくはわかっていない。
ともかくこの力によって彼は対策室の室長を務めているのである。
「爆発は今から14時間前だな。証拠がなくなる前に見てしまうか。」
そういって彼は部屋を後にした。