【序章】騎士団編ー②
「ユークラシスは凄いな」
「おや、いきなり貶してきたと思ったら今度はほめてくれるのですか?」
シアンは若干苦笑した。
「ごめんごめん、貶すなんてそんなつもりは⋯⋯」
「無かったとでもいうのですか?」
「少ししかなかった」
ユークラシスがガクッと項垂れ、「あったんですね」っとぼそりと呟いた。
「でも、凄いと思ったのも本当だよ」
「え」
シアンは頬を上げてにこりと笑った。
「だって、少し見ない間に騎士団長になっていたのだから」
「それは⋯⋯」
ユークラシスが少し言葉に詰まる。
シアンだったらそんな短時間で騎士団長になることなんてできない。だから素直に凄いと思った。
「じゃあ、ユークラシス。本題に入ってもらおう」
ユークラシスの目をじっと見つめて一息置いた後
「俺に推薦状を出したのはどうしてだ?」
自分の中で引っかかっていた疑問を口にした。
ーーーー
そう。推薦状を出したのはシアンの友人を名乗る人物だった。つまり、ユークラシスが友人だったということは必然的にユークラシスはシアンへ推薦状を伝書鳩で送りつけた犯人ということになる。
しかも、友人と名乗るだけで名前は書かずに。
名前書かないとはとんだ失礼な奴だ。と思っていたが、そんな奴がユークラシスだったのは。
そのことに少し落胆していた。
ユークラシスはきょとん、とした顔をした後「あぁ!」といって開いたままの左手に右手を握りしめ叩いた。
「貴方に直接推薦状を送らず、貴方の師匠に送ったことですよね⋯⋯本当に本当にすみません。直接送らないなんて無礼だとは思っていたのですが、直接送ったら断られると思ったです」
????
頭のなかに?が浮かぶ。
「師匠に、推薦状を、ユークラシスが、送った」
ユークラシスは首を縦に振る。
「はい、貴方の師匠に送りました」
「は」と思わず吐息を漏らす。ユークラシスはシアンに手紙を送っていないという。あの様子から嘘はついていないだろう。では、誰だ。誰が俺に推薦状を送ったというのだ。
いや、ここで考えても意味ないか。今は後回しだ。
今考えるべきことはユークラシスにどう話すかだ。
しかし、この部屋にはまだナレアルさんがいる。今はむやみに喋らないほうが賢明か。
先のシアンの発言は少なからずユークラシスに疑問を持たれた。だが、誤魔化しは効くはずだ。
「ユークラシス⋯⋯俺が働きたくないってことは知っていただろう?何故そんなことをしたんだ」
少し無理矢理話題を曲げた。
完全に不自然だが仕方がない。
「えぇ、実はですね。私が指揮している騎士団のメンバーの能力底上げをしてほしいのです」
ユークラシスはシアンに向かって歩いてきた。
「それと、監視をしてほしいのです」
抱きつきながら耳打ちをしてきた。
今の近づき方はどう考えても不自然だろう!ユークラシス!俺は慌ててユークラシスに抱きつき、背中を叩きながら
「分かったよ。メンバーの底上げだな。近くでいわなくても、ちゃんとやるよ」
「はい!ありがとうございます」
パァァと目を爛々と輝かせて感謝を告げてくるユークラシスは、実際は生えてないけれど犬の耳と尻尾があるように見えてきた。
無論、耳はピンと立っていて尻尾はブンブンと左右に振られている。
まるで構ってもらえて嬉しい犬みたいだな。
そして、その思考は一瞬で消える。
我に返って「やってしまった」という後悔が強く表れたからだ。
ユークラシスが不用心に行った行動を、シアンがナレアルさんにバレないようにと焦り、
誤魔化そうとしてメンバーの底上げを肯定してしまったことを思い出したのだ。
判断を誤った。
「やっぱり、断ればよかったかも」
本音が口から漏れた。




