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④おうちで食っちゃ寝スライム


朝起きてチビの体重を測る。

「7.0kgか~大きくなったな~」


最初は770gだった。もうすぐ10倍だ。

俺はスマホで体重管理アプリを開いた。


1日目 770g

2日目 790g

3日目 820g

4日目 840g

5日目 900g

6日目 980g

7日目 1.1kg

8日目 1.4kg

9日目 1.9kg

10日目 2.4kg

11日目 3.1kg

12日目 4.0kg

13日目 5.3kg

14日目 7.0kg ←


「一晩で1.7kg増って……」


ぽよん。


あのね、きみはすごくかわいいよ。

でもね、育ちすぎじゃない。


「さ、準備したら仕事行こう。」



この二週間、ダンジョンの予約は当然のように取れず、仕事に行ってチビに魔力を与える日々だった。


仕事を終えて帰宅する。

「ただいま~、チビ出ておいで」

ぽよんぽよん。チビがすり寄ってくる。

バレーボールサイズだったチビは今や柴犬サイズだ。


まずはご飯。手のひらに魔力を集めると、すうっとチビに吸われていく。

不思議なことに、食事の量は初日と変わっていない。なのに質量の増加は上昇傾向だ。

チビさん、俺の魔力を無駄なく食しておられる?


ぷるん。

無邪気なもんだ。


そのあと、魔力操作の練習をする。

まずは身体強化。目をつぶり、全身に魔力を広げるイメージ。身体を動かしたくなる衝動を抑え、じっくりと魔力を広げる。


次に魔力を一点に集める。全身から手に、さらに人差し指に……今だ!


「はっ!!」


パツン、と目の前のペットボトルが小さな音を立てた。


「わはは、魔力弾も安定してきたな。かっこいい。」


俺が魔力を練り練りしていると、チビも興味を持ったように近寄ってくる。

チビも何かできるようになったりするんだろうか。

魔力を蓄えてるみたいだし、すごい威力の魔力波を打つんじゃなかろうか。早く戦わせてみたいものだ。 



「22.6kgか……」


体重管理アプリに記録する。21日目、ついに20kgを超えた。

14日目 7.0kg

15日目 8.3kg

16日目 9.8kg

17日目 11.6kg

18日目 13.7kg

19日目 16.2kg

20日目 19.1kg

21日目 22.6kg ←


そろそろ増加も止まるだろうと楽観視している自分がいる。

もう一方で、このままどうなっちゃうのと怯える自分がいる。


最近、大きな変化があった。


これまでもチビは普通にアイテムボックスに入っていた。

でも、急に胸の奥が少しムカムカするようになり、仕事中しんどい思いをした。

ネット情報では、自分の所持限界を超えるアイテムを無理やり詰め込むと気分が悪くなるんだと。


これで仕事に連れて行くのはあきらめた。

昨日は家でお留守番してもらったが、特に不満はないらしい。


中型犬を超えて大型犬サイズになってきたチビを見て、運動させねばと強く思う。


そして毎晩、俺はノートパソコンの前でF5キーを連打する。


「取れね〜〜」


大阪ダンジョンの予約が本当に取れない。

常に赤文字、満員満員満員。

一般開放からまだ2ヶ月ちょい、人気は衰えるどころか増している。

一人枠ですら全然空かない。グループ枠なんて都市伝説だな。


チビさんに運動させないと。瘦せさせないと。

頭の中はこれでいっぱいだった。


そもそもテイムしたモンスターって、どう育つのが普通なんだろう?

ダンジョンで戦ってレベルを上げて、倒したモンスターの魔力を吸収して進化する。

それが王道な気がする。


チビはレベル1/10のようだし、10レベルになったら進化するのかな?

現状、魔力を与えているだけではレベルは上がっていない。体重が増えているだけだ。


普通が分からん。ネットにもテイムの情報は何もない。


「世界初、ってつらいな」


バレたら絶対に面倒だ。

研究しに来ました、話を聞かせてください、テレビです、新聞です、専門家です。

想像しただけで恐ろしい。


というかその前に、うちの会社はダンジョン禁止。厳重注意の始末書で済むかなあ。品管のルール違反って一番無しやなぁ。やっばいなあ。


ピコンッ


スマホが鳴った。いけもんからだ。


[先輩、今日も予約取れませんでした!無理です!]


すぐに返信する。


[こっちも全然無理。チビが育つ方が早い。いつか押しつぶされる。]


数秒で返事。


[また大きくなったんですか。笑]


[22.6kg!!早くダンジョン行ってダイエットさせな!!とは言え、スライムやし限度は30キロくらいなんちゃう?]


雑な願望を込めてそう返信した。



さらに翌朝

俺は床に座って、目の前のチビを見ていた。


ほんのり青くて、半透明で、ぷるぷるしていて、大きくて、かわいい。

見た目だけなら癒やしペットそのものだ。


「よいしょ……」


抱える。

重い。普通に重い。

前はひょいと持てたのに、今は腰からいかないと持ち上がらない。


「26.7kg......前日比3.9kg増......ふふふ」


明日には30kg超えるな。

部屋の中でもしっかり邪魔になり始めている。


予約は取れない。

でもチビは育つ。

魔力もどんどん食う。

このまま大きくなったら、まじで部屋に置いとけなくなるんじゃないか。


ダンジョンに行こう。ダイエットだ。


ノートパソコンを開く。

予約ページ。

更新。

満員。

更新。

満員。

更新。

キャンセル待ち多数。


「頼むって」


更新、更新、更新


ぼすん、ぼすん。

横ではチビがのんきに跳ねている。


「いやもう笑ってられん」


俺は画面とチビを交互に見た。

ダンジョンの予約は取れない。

チビはきっと、まだまだ大きくなる。


その事実に、じわじわと背中が冷えていくのだった。


[チビ]

善の魔力ですくすく育つスライム。

アイテムボックス内でも魔力を吸い上げていたのは善には内緒。

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