首無し死体ど祠通り 6
家を出る前になんとかしようと鋏で切ろうとしても見た目から考えられないような硬さで硬くて断念。
引っ張っても切ろうとしてもびくとしなかった緑色をした芽は頭の上に未だある。
学校を休みたいとも提案したが、あの朝の出来事で元気だと判断され行くように促された。
泰輝にぃいわく、「昨日のことで体調が悪いのであれば学校を休むという選択肢もありましたが、その様子だと必要ないでしょう。
私も夕方までにどうしても処理しなければいけない仕事がありますし、ひとりで過ごすよりましは気が紛れるでしょう」とのことだ。
まぁ、あの反応を見るに俺以外の人からは見えないらしい。
家から出た瞬間に近所の人にあっだけれどいつも通り挨拶しただけで終わってしまったからそういうことなのだろう。
家を出て通学路を歩く。
昨日通れなかった商店街を通るといつものように店の準備をしている人たちの様子を横目に登校する。
学校に着き、各自が体操服を持って行く中で俺は保健室にいた。
さすがに昨日あった事件のことで寝不足やら心労があって流石に元気に体育をできる気がしなかったのだ。
保健医の先生に許可を取りベッドのある方へ。
先生によると今から用事で席を外すとのことだったが寝るだけだし問題ない。
一人になったところで、ベッドに寝転がる。
保健室自体一階の校庭に近いところにあるからか生徒の賑やかな声が聞こえる。
昨日は一人で悶々と考えて寝たのでこの遠くに聞こえる騒がしさが心地いい。
疲れていたのであろう目を閉じるのスッと寝に入ってしまった。
ドアが開く音が聞こえる。
目を覚まして壁にかけてある時計をみると二時間目の途中といったところか。
もう少し時間があるし、二度寝できるかなと確認したところでベッドの周りにあるカーテンが開く。
そこにいたのは、保険医ではなくクラスメイトの千歳紫苑さんだった。
『千歳紫苑』は、中学最後の年の五月の半ばというなんとも微妙な時期きた東京からの転校生である。
療養のためというのが主な理由みたいだ。
身体自体弱く、都会の喧騒の中より昔住んでいた地方の叔母の家の方がゆっくりとできるだろうという家の判断らしい。
Uターンと似たようなものかと転校初日の自己紹介を聞いた時に思ったっけ。
身体が弱いというのは、本当らししくクラスで断トツのお休み率を誇っている。
授業中もよく抜け出して保健室にいたり、体育は全て見学。
日陰で座りながら、授業を受けていた。
また、重たい荷物を運ぶなどの日直や係仕事は一切なし。
必要な配慮であるが、思春期真っ只中の中学生からそれだけ特別扱いを受けていると不平不満が出てきそうなものであるがそれも殆どなかったのは彼女の人柄が大きく関係しているんだろう。
大きな瞳に白い肌、平均的な身長に紫色の髪を花の形をした飾り紐で後ろに束ねている。
上品な範囲を身に纏い華奢で儚気、憂いを帯びたようにまつ毛の影を作るような仕草はまさに加護欲がそそられる。
加えて、性格も優しく穏やか。いつの間にかみんなに好かれるようになっていた。
そんなクラスのマドンナ的な存在が「あっ。起きてたんですね」とにこやかに話しかけてくる。
「千歳さん??なんでここに??」
「私は保健委員なので様子を見に来たんです」
「先生に言われて??」
「ふふ。いいえ、違います。自分から先生に進言したんです」と照れるように頬に手を当てている。
えっと、これは俺の心配をしてくれてわざわざ来てくれたのかな。
だとしたらめちゃめちゃ嬉しいんだけど。これはフラグというやつだろうか。
昨日からあんな不運に遭遇したんだ。ならその報いが少しあってもいいのではと思春期じみた思考に囚われる。
「保健委員だからと言うのは建前で暑いところから逃げてきたんです」
…うん、別に期待なんてしてませんでしたよ。
「でも、お仕事もきちんとしますよ。結城さんの代わりにカルテに書き込むんで質問に答えてくださいねー」
「了解です」心なしか力のない返事をしてしまった。
「熱はありますか」
「さっき測ったら36.5度で熱はなかったよ」
「喉や鼻など異常はないですか」
「特にないよ」
「では、頭の方も大丈夫ですか」
「うん。平気」
「それはよかったです。その【植物の芽】が生えていることで痛みなどあったら大変ですもんね」
………………………っっ。
「あら??目を見開いてどうしたんです??とても間抜けな表情をしていますよ」とくすくすとペンを持った手を口に当てて笑っている。
とても可愛らしい仕草。ーー可愛らしい、可愛らしいけれど、それどころじゃない。
今、千歳さんは明らかに俺の頭に生えている芽のことをさして言っていた。見えて……いるのか。これが。
この異常現象が。俺以外誰も見えてなかったのに。
「見えてますよ。ちゃんと」と心の声を読み取ったように続ける。
「安心してください。私以外の人には見えてないと思いますよ。
というかそんな愉快なマーキングをつけられた人は初めて見ました」
「マーキング……??」
「花の形に似た化け物に出会ったでしょう。それにつけられたんですよ」
「っっなっ!?!?」
どうして化け物にあったことを知ってるんだと声をあげそうになる前にまた千歳さんは言葉を続ける。
「そりゃ、私が追っていた獲物です。情報を集めるのは当然でしょう。」と誇らしげだ。
ペンを持っている手を胸に持っていきまるで今から大切な秘密を発表をしますと宣言しますと豪語する子供のような無邪気な笑顔で続けてこう告げる。
「だって私、天使ですから」
………………………………………
………………………………
………………。
時間にするとおよそ数秒なのだろうが体感時間として長いように感じる沈黙。
依然として、千歳さんはドヤ顔で胸を張っている。
千歳さんと一緒のクラスに過ごしてきて仲がいいとは言えないただのクラスメイトという関係だが、こんなお茶目なキャラじゃなかっただろ。
なに??天使って??確かに容姿は天使みたいで可愛らしいけれども。
どう言葉を返したらいいんだ。
「私、天使なんです」
二度目の天使発言。ごめんなさい。聞こえてます。聞こえていました。
なんなら、聞こえなければよかったのにと思っていました。
どう対応すればいいのかわからなかったんです。
自称天使と出会ったのは初めてで戸惑っているんです。
クラスメイトが電波かも知れないという事実を目の当たりにしても、化け物のなんらかの情報を握っていることには変わらないだろう。
相手が何者かわからない以上とりあえず、とりあえず!無難にーー相手をあまり刺激しないような会話を心がけよう。
「……天使ってあのえっと。死者の魂を運ぶ使者のことで合ってるかな」
「はい、あってます」
あってしまった……
「天使です。詳しく言うと、株式会社 エンジェルロード お迎え部配送課所属の天使です」
「株式会社!!???天使って会社で雇われてたの!?!?」
あまりにも衝撃的すぎて会話始めてすぐ心掛けたことが消し飛び叫ぶように返してしまった。
「そうですよ。昔は天使の使命として魂をお迎えに行っていたそうですが、今や人間界の人口爆発。
天使の過労死を防ぐためにも会社と言う枠組みが必要とされ設立されたのですよ」
「思ったよりシビアな理由!!」
「まぁ、結局同じような会社が何社もできると他社と対抗するため魂を運ぶ数や質を争ってますけどね。上の人は甘い蜜を吸い、下は働き蟻のように働いているのが現状です」
「天界にブラック企業!?!?知りたくなかった実情だよ!」
「そうなんですよね。天使って女性やこどもが白いゆったりとした服を着て死の間際にお迎えにくるイメージを持たれますが、実際はスーツです。動きやすさ効率重視で働いています。」
「スーツでお迎えって情緒のかけらもねぇ!!」
「あっ、安心して下さい。ブラック企業が多い中私の働く会社はホワイトですよ。
一人ひとりモットーを持って生き生きと働いています。
例えば、そうですね、私の場合は何事にも素早く行動するです」
「……天使もモットーは意外と普通なんだな……」
「あらっ。なめてもらっちゃ困ります。
五分前行動はもちろん、私はお迎えに上がるのも早いのです。具体的に言うと寿命が尽きる前にお迎えにあがります」
「とんだ最低やろうじゃないか!!」
まだ、寿命が残ってるなら余生を謳歌させてやれよ!!
なんて迷惑野郎だ。というか叫びすぎて疲れてきた。
休んで少し回復したのが台無しだ。
会話が切れたタイミングで二時間目が終わる合図がなる。
「チャイムがなりましたし、冗談はここまでにしましょう。色々気になる事があるでしょうからそうですね……結城さん放課後は空いてますか??」
どうやら、天使の件は冗談らしかった。
「……まぁ、予定もないし空いてるけど……」
「では、続きは後でしましょう。授業が終わり次第、誰にも見つからず一人で屋上に来て下さい。そこでゆっくりお話しましょう。その頭の芽の解決方法を教えて差し上げますので。」
拙い文ですが、最後までお付き合いいただきありがとうございます!!
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