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仕事と私、どっちが大事なの?逆バージョン
翌朝。
エマが目を覚ますと、リュカは椅子に座ったまま、こちらをじっと見ていた。
「おはよう」
「お、おはようございます……って、ずっと起きてたんですか!?」
「おまえが寝付くまでは」
「そのあとも見てましたよね!?」
問い詰めると、彼は普通のことのように頷いた。
「当たり前だ。魔力の揺らぎも、呼吸も、全部確認しておきたい」
(え、健康管理ってレベルじゃないんだけど)
「それより、今日は街に行くと言ったな」
「あ、はい。魔材を買いに……」
「俺も行く」
「え、でも先生、研究が……」
「研究より、おまえが大事だ」
真正面から言われて、変な声が出そうになる。
ネット小説で見た台詞を、実際に自分に向けられる日が来るとは思わなかった。




