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初恋という名の、当たり前の感情
思春期になって、
エマを見る目が変わったのは自然なことだった。
誰より近くで笑う姿。
僕の魔法で驚く顔。
名前を呼ばれるだけで胸が熱くなる。
「リュカと一緒にいると、落ち着く」
エマがそう言ってくれた時、
僕は初めて自分が恋をしているのだと気づいた。
初めて手を繋いだ昼下がり。
エマの手は小さくて温かくて、
離したくないと心の底で思った。
初めて二人で村に行った“デート”の日。
買い食いしたお菓子が甘いのか、
隣にいるエマが甘いのか、
わからなくなるほど幸福だった。
そして――
初めて唇を重ねた夜。
言葉はいらなかった。
ただ互いを求める気持ちだけがあって、
それだけで十分だった。
初めて愛し合った瞬間でさえ、
僕にはただひとつの確信しかなかった。
――エマは、僕のすべてだ。
世界にあるどんな魔法より、
エマが笑うことの方が大事だった。




