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“エマを守る塔”の完成予告
その夜、リュカは突然告げた。
「塔を……改装する」
「また!?」
「必要だ」
「何が!?」
「エマのための部屋が……まだ足りない」
「足りないの!? もう十分すぎるほど広いよ!」
リュカは淡々と続ける。
「花畑も整えた。
専用図書室も作った。
魔法訓練場も調整した。
だが……まだ足りない」
「なにが足りないの?」
「エマが、ずっと安心して“帰ってこられる”場所だ」
エマの胸がじんと熱くなる。
「もう……そんな場所、十分あるよ」
「いや。
おまえが“帰りたい”と思う場所を、もっと作りたい」
「そんなに……?」
リュカは静かに頷いた。
「エマが世界中のどこに行っても……
“ここに帰りたい”と思える塔にしたい」
声は柔らかいのに、
その想いは揺るがない。
その愛情が、甘くて息が詰まるほどで——
エマはただ、胸の奥がふるえてしまった。




