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“失うかもしれない”恐怖と、“もう失わない”決意
次の日。
魔力量の測定がうまくいかず、
エマは魔法陣の中心で少しふらついた。
「あ……」
その瞬間——
「エマ!!」
リュカが駆け寄り、強く抱き寄せる。
「大丈夫……だよ……」
「大丈夫ではない」
「ちょっとめまいがしただけで——」
「……もう二度と、あんな倒れ方をしないでくれ」
いつもの冷静な声ではなかった。
震えていた。
「リュカ……?」
「エマがこんなふうに……消えそうに見えるのが、
一番……一番怖いんだ」
胸の奥がきゅっと締めつけられた。
彼は続ける。
「前の世界で、おまえがひとりで耐えていた現実を……
俺は知らない。
でも、その痛みが再びエマにこないよう……
俺は、どんな魔法でも使う」
「……そんな重い覚悟までしなくていいのに」
「必要だ。
俺は、エマを失いたくない」
その言葉は、嘘がひとつもなかった。
エマはそっとリュカを抱き返す。
「失わないよ。
私が、ここにいる。ちゃんと」
リュカの呼吸がゆっくりと落ち着いていくのがわかった。




