表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/102

“未来の話”をしたがらない理由

夜。

暖炉の小さな火が揺れる部屋で、エマはふと未来の話をした。


「ねえ……いつか、もっと遠い街に行ってみたいね。

 世界って広いんだろうなあ」


リュカの指が止まる。

ページをめくっていた手が、ぴたりと。


「……エマ」


「なに?」


「未来の話をすると……心臓が落ち着かない」


「え……どうして?」


「そこに、俺がいない可能性を考えてしまう」


胸をつかまれたような言葉だった。


「そんな可能性、ないよ」


「わからない。

 おまえがどこかへ行くかもしれない。

 俺が、おまえに相応しくなくなるかもしれない」


(相応しくないなんて……)


エマは思わず手を伸ばし、

リュカの頬にそっと触れた。


「ねえ。

 私はそんなに簡単に未来を変えないよ。

 リュカがいる未来しか、想像できない」


リュカは息をひとつのみ込む。


そして小さく、

ほんの少し震えながら言った。


「……なら、俺の未来は……全部おまえだ」


火の色が静かに揺れ、

二人の影が寄り添い、そのまま融けていくようだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ