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魔法の実技試験、“離れた場所での練習”ができない理由
その日の午後。
エマは広い訓練場で魔法の練習をしていた。
リュカは少し離れた場所で見ていたが——
「リュカ、もう少し離れてても——」
「無理だ」
「即答!?」
「遠くにいると、手が届かない」
「届かなくてもいい練習なんだよ!?」
「良くない」
彼はまるで自然なことのようにエマの隣へ歩いてくる。
「近くにいれば、すぐ守れる」
「いや、私そんなに危なっかしくないよ!?」
「危なっかしい」
「言い切るのやめて!」
だが次の瞬間、
エマの魔力が少し暴走して光がはじける。
「きゃっ……!」
「エマ!」
リュカはすぐに腕を伸ばし、抱き寄せる。
(……近くにいるの、意味あった……)
「……大丈夫だ」
耳元の低い声が、心臓に響く。
「こういう時のために……
俺はいつでも、隣にいる」
胸がじわりと熱くなるのを、もう隠せなかった。




