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“帰ってきた理由”を、彼は訊きたがる

夜。

手をつないだまま、二人は暖炉の前に座っていた。


ふと、リュカが静かに口を開く。


「エマ」


「うん?」


「今日……塔に戻ってきたのは、なぜだ?」


「え……?」


「街には祭りもあった。

 屋台や踊りもあった。

 おまえだけなら、もっと楽しめたはずだ」


真剣な目。


「それでも……帰ってきた理由を、訊きたい」


エマは少し微笑む。


「そんなの、決まってるよ」


「何だ」


「だって……リュカがいるからだよ」


リュカの瞳が、揺れた。


「祭りより、街より、他の誰より……

 あなたのいる場所に帰りたいって思うから」


沈黙。


暖炉の火が、ぱちんと弾ける。


「……エマ」


低い声。


「おまえにそう言われる日が来るとは……思わなかった」


リュカはエマの手を自分の胸に当てた。


「ここが……やっと落ち着く」


エマはそっと笑った。


「私もだよ」


二人の手が、強く結ばれる。


その結び目は、魔法より確かな――

“帰る場所”そのものだった。



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