7/102
前世の記憶が邪魔をする
その夜、塔の客間で一人になったエマは、ベッドの上で頭を抱えていた。
「いやいやいや……これは夢じゃなくて、転生で……で、あれたぶんヤンデレだよね? 神様仕事早すぎない?」
ネット小説で読みすぎたせいで、旗が立つタイミングがよくわかる自分が憎い。
ちょっと寂しげに見つめられるたび胸がキュンとするのは、四十年こじらせた心が弱っているせいなのだろうか。
「でも、壊れるくらいに愛されたいって、言ったの私だしなあ……」
枕に顔を押しつける。
そのとき、ノックもなく扉が静かに開いた。
「エマ」
「ひゃい!?」
リュカが、当たり前のような顔で入ってきた。
ローブは脱いでいるが、シャツ一枚でも充分に絵になる。
そして、距離感はやっぱりおかしかった。




