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魔術師ギルドからの招待状と、破り捨てられた紙
午後。
書類を整理していたエマのもとへ、封筒が届く。
「これ……魔術師ギルドからの招待状……?」
“弟子エマ殿の魔法資質を拝見したく——”
と言う文面を読んだ瞬間、
後ろからすっと手が伸びてきた。
びりっ。
「ちょっと待って!?」
リュカが無言で招待状を破る。
「リュカ!!」
「……読む必要はない」
「あるよ!! 私宛だよ!?」
「エマは俺の弟子だ。
ギルドに渡すものは何もない」
「いや私は物じゃない!」
リュカはエマの手をそっと取る。
「おまえが評価されることは構わない。
だが、おまえを“奪おうとする可能性のある場所”には行かせない」
「奪おうと……」
「価値がある者は、狙われる」
その声があまりにも真剣で――
胸の奥がきゅっと締めつけられる。
ただの嫉妬ではなく、
“エマの価値を誰よりも認めている”声だった。
「……ありがとう。でも、破るのはやめよう?」
「検討する」
(しないな、この顔……)




