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“帰ってくる”ことが、最大の信頼

塔へ戻る帰り道。

エマはふと呟いた。


「ねえ、リュカ」


「なんだ」


「私ね……

 “ここに帰ってくる場所がある”って、すごく安心するんだ」


リュカは歩みを止め、エマを見る。


「前の世界では、帰っても誰もいなかった。

 部屋は暗くて、声もなくて……

 ただ寝て、起きて、働くだけでさ」


胸が痛くなる記憶だった。


でも――


「ここは違う。

 帰ったら、誰かが『おかえり』って言ってくれる。

 それって……すごく幸せなことなんだよ」


リュカの瞳が、大きく揺れた。


「……エマ」


「うん」


「おまえが戻ってきてくれるだけで……

 俺は、世界の全部を手に入れた気分になる」


「そんな大げさな……」


「大げさではない」


リュカはエマの手を取る。


「帰ってきてくれる理由に……

 俺を含めてほしい」


エマはゆっくり、笑った。


「含まれてるよ。

 最初から、ずっと」


リュカは静かに息を飲み、目を伏せた。


「……エマ」


「なに?」


「おまえは俺の……“家”だ」


その言葉に、胸がぎゅっと熱くなる。


エマはそっと手を握り返した。


「……私もだよ」


二人の影は夕暮れに溶け、

塔へとまっすぐ伸びる道を歩いていった。



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