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魔法陣の書き取り中、距離感ゼロの指導が入る
午後の学習。
エマは魔法陣の線を丁寧に書いていた。
すると、後ろからリュカの腕がすっと回り――
手を包み込むように添えられた。
「ひゃっ……!」
「線がぶれている」
「いや、そんなに近くで指導しなくても……!」
「必要だ」
彼の胸が背中に触れる。
息が耳にかかる。
集中できるわけがない。
「リュ、リュカ……ちょっと……距離……!」
「このくらい近くなければ、おまえの癖がわからない」
「癖って……!」
「筆圧が弱いとき、魔力の流れも弱くなる。
俺の指が補助する」
「補助の仕方が密着なんだよ!」
それでも、線は綺麗に引けていた。
リュカの補助が正確だから。
「よくできた。……可愛い筆跡だ」
「言わなくていい!!」
褒められたのに恥ずかしすぎる。




