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距離感バグってません?
「せ、先生?…あい…!」
言いかけたところで、腰に回された腕がきゅっと力を込める。
気づけば、胸板に顔が押しつけられていた。
「長かった……」
短い言葉には、ひどく重い何かが乗っている。
心臓の鼓動が、彼の胸越しに伝わってきて、
エマの鼓動と変なハーモニーを奏で始める。
「えっと、先生?」
「リュカ」
「え?」
「名前で呼べ。おまえの口から、他人行儀な呼び方を聞きたくない」
耳元で低く囁かれ、背筋がびくりと震えた。
(あ、これ、もう既にヤンデレの匂いするやつだ)
自由だった両手は、いつの間にか彼のローブを掴んでいた。
離れようとしたら、さらに抱き寄せられる。
「逃げるな」
「逃げてないです!?」




