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街で“避けられるようになってきた”理由
翌日。
エマは久しぶりに街に出たが――
露店のおじさんたちが、なぜかそわそわしている。
「ああ……塔の……いや、なんでもない」
「え、ちょっと待って、なんで避けられてるの?」
買い物をしようと近づくと、なぜか店主が後ずさる。
「エマ。戻るぞ」
「いや、なんで!?」
リュカは小さくため息をつく。
「おまえに手を伸ばそうとした商人がいたため、
少々……“警告”をしておいた」
「警告って……どんな!?」
「生きている」
「それ最低限だよ!?」
「二度と近づかないと誓った」
(誓わせたんだ……)
エマは頭を抱えながらも、ふと気づく。
どの店主も、エマには怯えるというより、
“心配”と“恐縮”が混ざった奇妙な態度だった。
(……リュカ、何言ったんだろ)
こわいはずなのに、
胸の奥はほんの少し、誇らしかった。




