“好き”じゃ足りないと言う理由
夜。
暖炉の光が揺れる中で、リュカが急に問うてきた。
「エマ」
「なに?」
「おまえは、俺を……どう思っている」
唐突すぎて、エマはカップを落としそうになる。
「ど、どうって……その……」
「好きか」
「……好き、だよ。もちろん」
リュカは一瞬目を伏せ、静かに言った。
「だが、“好き”では薄い」
「えっ」
「俺のエマへの感情に比べれば、あまりにも薄い」
「比較はしないでよ!?」
「おまえは俺を“好き”と言う。
だが、俺はおまえを“人生ごと捧げてもいいほどに必要”だ」
「重いのきた……!」
「当然だろう」
リュカはエマの頬に手を添え、静かに続ける。
「エマの“好き”の上に、
俺の“必要”が重なっていけばいい」
「その言い方ずるい……」
胸が熱くなる。
リュカは微笑み、エマの額に指を当てた。
「だから、何度でも言え。
“好きだ”と」
「……っ、そ、そんな……」
「おまえが言うたびに……俺はもっとおまえを大事にできる」
「……はいはい……。好きだよ、リュカ」
「足りない」
「ひとつで満足して!?」
だが、嬉しそうな目をしていた。
その表情に、エマは気づいてしまう。
――この人は私に“言ってほしい”んだ。
そして自分も、その願いを叶えたいと思っている。
胸がじんわり温かく、満たされた。




