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塔から“勝手に出られない”理由が増えた
昼。
エマが外に出ようとすると――
「……あれ?」
玄関の魔法陣が、微妙に変わっている。
「なんか……追加されてない?」
後ろからリュカが言う。
「外出時、俺と手をつながなければ開かないようにした」
「え!? 手つなぎ必須なの!?」
「当然だ。おまえだけが出るのは危険だ」
「いや、危険危険って言うけどさ……」
「実際危険だ」
「私ってそんなにすぐさらわれそう!?」
「美しい」
「急に褒めるのやめて!?」
褒められるほど説得力が増すので困る。
エマは深くため息をつく。
「……手つなぐしかないってことね?」
「そうだ」
「本当にそれでいいの? 私、重い女だよ?」
「俺の方が重い」
即答。
エマは肩の力が抜けて、思わず笑ってしまった。
「はいはい、行こっか。リュカ」
「……ああ」
指先が絡まった瞬間、魔法陣が静かに開いた。




